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人事・人材マネジメント(1):総論

今回から、人事のお話です。
私自身、理系出身ながら人事部に在籍していた時期もあり、自分なりに深く勉強をして、人事のプロフェッショナルたちと理想と現実のハザマに悩みながら全社的な改革施策を打ってきました。
そして、経営者・事業責任者としても「人」のマネジメント、育成、モチベーション、チームワークといった話はマネジメント上の重要な要素、中心となるテーマです。

まず始めに、人事部に新たに配属になった方や、広く人事・人材マネジメントを学びたい方にお薦めの書籍を紹介します。

人事管理入門(基本・基礎編)

「人事」と一口に言っても、人事評価や処遇など人事制度から労務管理や福利厚生の話、採用、人材育成、人材配置とキャリアデザイン、最近では社員満足度向上やモチベーションの話まで幅広い業務領域となっています。
事業部門から人事部に配属されると、経理部同様にそれぞれ業務領域に特化したチームが忙しく働いていることに驚かれると思います。

会社人事の全体像を素早く把握するために、以下の本を私は参考にしたのですが、いまは絶版のようです。

現在、発売されている中では以下の新書版が比較的バランスよく、会社人事の業務領域をカバーしているので、お薦めです。

人事部には部長としての在籍経験もあるのですが、部下に基本知識レベルで負けないよう、ビジネスキャリア検定の「人事・人材開発2級」をテキストで勉強し、無事、合格しました。
参考までにその試験範囲を載せましたが、「人事」が所掌する主な領域として、これだけの要素があることをまずはご理解ください。

人事・人材開発2級 令和2年4月 試験範囲
Ⅰ.人事企画
 1.人と組織の理解
 2.職群・資格制度 
 3.人事評価 
 4.職務分析・職務評価
Ⅱ.雇用管理
1.人員計画の種類・内容 
2.募集・採用 (1)採用の基本と課題
3.配置・異動と昇進 (1)配置と昇進
4.出向・転籍 
5.表彰・懲戒 
6.退職・解雇 
7.雇用調整
8.人事相談・トラブル対応
Ⅲ.賃金管理
1.賃金・総額人件費管理
2.賃金制度の設計と運用 
3.退職給付制度の設計と運営 
4.海外駐在員の賃金管理 
Ⅳ.人材開発 
1.人材開発の意義
2.人材開発の推進 
3.O J T(職場内教育)
4.O f f - J T(職場外教育)
5.自己啓発支援
Ⅴ.人事・人材開発をめぐる社会的動向
1.人事管理の動向
2.人材開発の動向

さて、これだけの専門領域があり、それぞれのテーマについて企業の人事プロフェッショナルや外部の人事コンサルタント、人事や労務専門の先生方によって長年掘り下げられているにも関わらず、「日本型人事の限界」とか「雇用制度改革が必要」とか、メディアに書かれることが多いのは何故なんでしょう?

人材マネジメント(現在の潮流)

人事管理の基本を押さえた後に、次のステップとしてお薦めしたいのは以下の書籍です。
「人事管理」から「人材マネジメント」と言葉が変わっただけでなく、いま日本企業で行われている様々な取り組みの方向性が最新の経営理論とともに包括的に理解できる良書だと思います。

これまでの人事管理は、戦後、日本企業の多くが採用し、強みとも言われてきた「日本型の雇用制度」に基づいた賃金制度や人材配置に系譜があると言っても過言ではありません。

「日本型の雇用制度」とは、BCGの初代日本支社長でもあったJ・C・アベグレンによる『日本の経営』に50年ほど前に書かれ、当時「日本型経営の三種の神器」と言われた「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」が代表的な特徴となります。

すでに多くの日本企業で終身雇用や年功序列といった前提が崩れている、それでは企業経営が持たなくなってきているのは皆さんご存知だと思いますが、「図解 人材マネジメント入門」では人事の基本領域を押さえつつ、それぞれの領域について、これからの方向性を提示しています。

目次だけみると、前出の「人事管理」の項目ともほぼ合致していますので、比較して読めば、その違いや現在の潮流について、より理解が進むでしょう。

「図解 人材マネジメント入門」 
目次
Chapter 1. 人材マネジメント
Chapter 2. 人事評価
Chapter 3. 賃金・退職金(外的報酬)
Chapter 4. 働きがい(内的報酬)
Chapter 5. 等級
Chapter 6. 採用
Chapter 7. 異動・代謝
Chapter 8. 人材開発
Chapter 9. 組織開発
Chapter 10. 働く人

また、それぞれのテーマについて、日本企業各社の取り組みを(ベンチャーvc大手企業、長期雇用vs即戦力流動)の4つのカテゴリー分けして、わかりやすく解説しています。

最近、メディアを騒がせている「メンバーシップ型は古い、これからはジョブ型雇用」だとか、「成果主義は終わった、これからも働きがいだ」といった見出しの言葉だけに惑わされないよう、その理論的背景やメリット・デメリットを経営実務家として、しっかり把握するようにしましょう。

次回以降、この中からいくつかのテーマについて、これまでの経験から私なりの考えとお薦めの書籍を紹介していきたと思います。


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