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組織開発(4):いい会社

2年ほど前に「組織開発」をテーマに3回ほど経営学における歴史や社内活性化手法に関する話を書きましたが、今回は就活生や転職者、そして実際に働く社員から見た「いい会社」について書いてみたいと思います。

今年も新卒学生の就活がそろそろ終盤に入っていますが、親世代からすると子供には以下の雑誌に毎年、載っているような「比較的名前の通った優良企業」「安定的で成長性もある企業」が「いい会社」のランキング上位に入ってくるかと思います。


口コミサイト Openwork(旧Vorkers)

一方、いまどきの就活生や転職希望者はネットの就職サイトだけでなく、
口コミもフル活用しています。

そんな中で10年以上前から転職者の口コミサイトVorkersは、始めの頃は転職後や退職後に、転職前の説明や印象とは違う会社の実態を暴露する・愚痴を言い合うサイトのようなイメージだったのですが、徐々にその会社に多少の不満はあるものの日々、気持ち良く働いている社員、転職して良かったと思っている社員の評価やコメントも入ってくるようになり、
いまや年間1300万件の口コミと企業評価が売りの転職・就職サイトOpenworkへと成長しています。

たぶんに企業の人事部側もこのサイトの存在を気にするようになり、たまたまその企業と合わなかった離職者たちのネガティブコメントだけでなく、入社・転職して満足している社員たちにも「自由に書いていいよ」と
適正な評価となるように暗に入力を促している企業が増えていることは否めないと思いますが。。。

下記、書籍ではそのサイトの口コミから見えてきた「総合評価」が高い企業だけでなく、「チームワーク」が良い会社、「20代で成長」できる会社、「30代年収アップ幅」が大きい会社、「営業職」「技術職」「事務職」
選んだ会社、「女性が働きやすい」会社など、様々な切り口で「いい会社」のランキングを載せています。

Openworkの会社サイトにはその年に総合評価の高かった「働きがいのある企業」を発表しているので、こちらを見てみるのも良いでしょう。

Openwork AWARDS  働きがいのある企業ランキング 2023
https://www.vorkers.com/award/


私自身はこの書籍の前に、2019年に出版された『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』が組織開発という点で参考になりました。

当時の口コミは840万人だったようですが、それでも価格.comのように
この領域では圧倒的な口コミ・データを所有していました。

そのデータの山から見えてきたのはいままで外部からは可視化できなかった「職場の空気」
著者の分析では「職場の空気」が企業の結果を決める。株価の差にも影響している事実です。
そして「職場の空気」は「経営開放性」「情報開放性」「自己開示性」=OPENESSの3要素から構成されると書かれています。
組織開発の携わる方は一度、こちらの本を読んでみると良いでしょう。


「いい会社」はどこにある?

さいごに、このタイトル(副題)をつけるアイデアの素となった書籍
『「いい会社」はどこにある?』を紹介します。

ページ数850とかなり部厚い本なので、読むのに少し気合がいりますが、読み始めると著者の長年の丁寧な取材から得られた働く側からみた企業の実態、そして、それぞれの評価項目における企業評価・ポジショニングが非常に興味深く、早く次の章を読みたいとページをめくる手が進んでいきます。

書籍の帯にあるように「ネット検索では見つかない」就活生にとっても貴重な情報、働く側にとって「いい会社」とは何か? を考えさせてくれる良書だと思います。

著者が9つの視点「やりがい」「キャリア」「負荷」「勤務環境」「人間関係」「報酬水準」「カーブ分布」「査定評価」「雇用」から「いい会社」を見つけるための座標軸として提示したのは以下の12の条件

「いい会社」を見つけるための12の条件──。
【条件1】年齢に関係なく仕事を任されるか
【条件2】自律的に仕事内容を選択できるか
【条件3】専門能力が身につくか
【条件4】内外で多様なキャリアパスを描けるか
【条件5】労働負荷が自分にとって適度であるか
【条件6】勤務地を選べて家庭生活と両立できるか
【条件7】組織カルチャーが自分にフィットしているか
【条件8】手取り賃金が望む生活水準を満たしているか
【条件9】給与の上がり方がライフプランに合っているか
【条件10】評価のされ方が自分に合っているか
【条件11】評価基準の納得性が高いか
【条件12】雇用安定性にギャップがなく納得性が高いか

「いい会社」はどこにある? 書籍紹介サイトより

すべてを完璧に満たすような企業は存在せず、条件によってはトレードオフや相反関係にあることも丁寧に分析され、わかりやすく図示・マッピングされています。

「いい会社」はどこにある? 書籍紹介サイトより


これらの座標軸は企業経営、組織開発や人事の視点から見ても、非常に参考になります。

自社が何を大切にして、社員に何を求め、何を共有したいのか? 
その根本的な考えや方針と実際の処遇や人事制度、人材育成や組織カルチャーは合っているのか? 
エンプロイメンタビリティ(雇用する能力)やエンゲージメント
からみた
自社の改善・改革のポイントは何なのか? 

ぜひ、組織開発や人事マネジメントに携わる皆さんも本書のような働く側からの視点や評価を参考にして「いい会社」を目指していってください。








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