ESG経営(1):概論
ダボス会議
今年(2024年)のダボス会議が無事、終幕したというニュースが出ていました。今回は紛争の続く世界情勢を反映して「信頼の再構築」が全体テーマとのことですが、過去のダボス会議では環境問題やジェンダー問題を取り上げ、世界のリーダーたちによって議論されてきました。
そこで今回からは世界の潮流になっているESG経営について、私の考えも交えてまとめてみたいと思います。
ステークホルダー資本主義
毎年1月にダボスで開催される世界経済フォーラム(World Economic Forum:通称ダボス会議)は1971年に非営利財団としてクラウス・シュワブ教授の提唱により創設されました。
シュワブ教授は創設当初から企業は株主だけでなく、社会的責任を含むすべての利害関係者に配慮すべきと世界のリーダーに訴えかけてきました。
2020年の世界経済フォーラム第50回年次総会では、「ステークホルダー資本主義」に再び焦点を当て、中でも最優先すべき課題として、パリ協定と持続可能な開発目標 (SDGs)に向け各国政府と国際機関を支援することを改めて表明しています。
シュワブ教授とダボス会議は現在のESG経営の考え方について、古くから世界をリードしてきたと言って良いでしょう。
ESG経営とは
ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略称です。
ステークホルダー資本主義が世界の経営者に影響を与える一方で、
ESG経営は国連が提唱したSDGs(「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」との違いがわかりづらいという話をよく聞きます。
下記、朝日新聞社のサイトに解説されているように、
ESGは経営者や投資家が企業経営・投資をするときの根幹となる考え方である一方、SDGsはすべての政府や企業、地域、個人も含む目標であり、アクションプランとなっています。
株主第一主義と思われていた米国においても、米国主要企業が名を連ねる財界団体ビジネス・ラウンドテーブルが、2019年に『企業は「株主価値最大化」ではなく「ステークホルダー重視経営」に舵を切るべきだ』と企業トップ181人の署名が入った声明を発表して大きな話題となりました。
ハーバード大学で教鞭をとるレベッカ・ヘンダーソン教授はMBAの学生や企業幹部に対して、米国における株主価値最大化への固執、野放図にされた自由市場は環境や人類の事態をさらに悪化させている。
世界中の企業に対して、資本主義が依存する自然・社会・制度の健全性を支える義務があることを自覚すべきだと問いています。
まさにESG経営の理念そのものです。
ESG投資とは
ESG経営が企業に向けられたものである一方、世界の投資家の中では
ESG投資がすでに動き出しています。
そして、現在、ESG投資は「ネガティブ・スクリーン」から「ポジティブ・スクリーン」へ、さらに経済的なリターンと社会的リターンの両立を目指す「インパクト投資」へと拡がりを見せています。
最後に、少し久しぶりとなりましたが、このテーマでNoteを書いてみようと思い立ったもう一つの背景は、年末に株式会社COTENの資金調達について、COTENのメンバとVCの渡辺氏の話を聞いて、考えさせられるところが多かったからです。
詳細はぜひ、COTENのYoutube動画やPodcastを聴いて頂きたいのですが、最も印象に残ったのはESG経営や投資において、社会的リターンについてインパクト測定した指標・数字は必要ではあるが、
単なる代替え指標に過ぎない数字さえ達成すれば、企業評価が高まり世界が良くなる、実質的な社会的なリターン・社会課題の解決に繋がっているかどうかは注視する必要がある。
逆に数字(指標)を上げることで、それが一種の安心感 呪術となってしまうことに危険性や限界を感じるという件(くだり)です。
次回はあまり触れられることのない呪術の世界、妄信され過ぎているかもしれないESG経営の負の側面について、書いてみたいと思います。