【ちょっと昔の世界一周】 #12 《人の優しさ》
窓から差し込んでくる陽の光。
近くから聞こえる鳥のさえずり。
サワンナケートの朝はとても気持ちの良いものだった。
フロントでは夕飯前と同じように宿の人たちが談笑中。
私の顔を見ると、どうだった?といった感じで声をかけてきた。
「Very Good !!」
そう答えると、それはよかった。というような表情をしてくれた。
不安はもちろんある。
だがそれ以上の楽しさ・喜びがあると考えながら部屋へ戻る。
『もう寝よう』
そう思いシャワーを浴びる。
旅の初日は水シャワーに慣れていなかったが、今となっては心地よい。
今日感じたマイナスの感情も一緒に洗い流してくれているようだ。
さっぱりとした気持ちで横になりすぐに眠ったようだ。
時刻は8時過ぎ。
昨日の疲れもそれほどないので、朝食ついでに街歩きでもしようと荷物をまとめ部屋を出た。
フロント前を通ると昨日のフランス人が宿の主人と話をしている。
どうやら次の街へ行くために壁に貼ってあるバスの時刻表を確認しているようだ。
調べておいて損はないと思い、私も時刻表を見に行った。
次の目的地は【パークセー】
ラオス南部の街だ。
自分で探すよりも聞いた方が早いと思い、主人に声をかけた。
すると
「タイムスケジュール(時刻表)はあるけどよく変わるから、バスターミナルで聞いた方がいい」
というような答えが返ってきた。
確かにここはラオス。
日本ではない。
その言葉を信じ場所を聞くと、少し歩くがまっすぐ行けば見えるということだった。
腹が減っては戦はできぬ。
まずは朝食だ。
タカダさんほどではないが私の勘が、大通りの方面に行けばなんとかなるといっている。
昨夜のように大通りを目がけて歩を進める。
バンコク・ビエンチャンでもそうだったが、食事ができる場所にはなんとなくだがそれらしい単語が書いてある看板がある。
大通りに出ると道路の向こう側にそれらしい看板が見える。
バンコクでは信号機をよく見ていたがラオスではあまり見ていない。
もちろん車の流れも違うのだが、そもそも信号機の役割はアジアではあまり重要ではないようだ。
大通りとはいえ、さほど車の流れが多くない道路を渡りお目当ての店に辿り着く。
相変わらずメニューはわからないのだが、周囲を見渡すとどうやらここは麺が食べれるようだ。
なんとなくの雰囲気で注文をし、運ばれてくるまで店の中から外の景色を眺める。
その店は道路沿いに調理器具が揃っているので、景色とともに調理風景も見れる。
兄弟なのだろうか。
2人の青年(少年?)が切り盛りしている。
手際のいい動きで1人は麺を茹で、もう1人は具材・器の準備をしている。
さほど時間もかからずに出てきた麺にはチャーシューのような肉とネギがのっている。
スープは透明でいわば塩ラーメンの雰囲気。
『いただきます』
癖で手を合わせ食べ始める。
『美味い!』
予想通りの塩味に違いないが、しっかりとした味付けでとても食べやすい。
よくよく考えれば、パッタイは食べていたがスープと麺の組み合わせは久しぶり。
あっという間に食べ終わり会計に向かう。
外国人相手で興味があったのか
「Good ??」
と店員の1人が聞いてきた。
「Yes !!!」
そう答えると、よかった!という雰囲気で笑顔になる。
考えてみれば、外国人が自分たちの店で食事をしたら感想を聞いて見たくなるのは当然だろう。
昨夜もそうだが、出身地は違えど食事といった生きていくうえで欠かせない行動をしているだけだが、文化の違いはある。
それでもお互いのいいと思えるものが一致した時の嬉しさはある。
彼らと私も一杯のラーメン(料理名が合っているかわからないが)を通して共感し合った気がした。
そのことに嬉しくなったこともあり、写真という形で記憶しておきたくなった。
代金を渡しながら
「Photo OK ??」
と聞くと、俺たち?と自分の顔を指差す。
そうだよ!と頷くと驚きながらもOKしてくれた。
撮った画像を見せてみる。
小さい画面だが覗き込み
『おいっ!何照れてんだよ!』
といった感じで喜んでいる。
お互いになんだが楽しい雰囲気を感じながら私はバスターミナルを目指し、店を後にした。
*****
宿の主人に教えてもらった道まで行き、真っ直ぐに歩き出す。
昨日はターミナルから問題の車に乗ってきたので距離はわからないのだが、乗っていた時間から考えると30分もあれば着くだろうと考えていた。
このバスターミナルへの道中は旅が始まって1番ドタバタしたものだった…
ひたすら歩く。
30分以上は歩いただろうか。
何もない...
思い返してみれば、昨日車の荷台から見えていた景色は最初から建物がそこそこあった。
しかし今見えている景色は建物が少ない。
どう考えても街外れといった雰囲気である。
『これは違う...』
流石にそう思った時に一軒の建物が見えた。
看板から察するに宿のようだ。
道を聞くこともだが、日陰がずっとなかったので涼みたいこともあり私はその建物の中へと入って行った。
外から来ると少し暗い雰囲気だが宿のフロントが見えた。
「サバイディー」
声をかけるとフロントにいたおじさんが笑顔で挨拶を返してくれる。
しかし、私の格好を見て不思議そうな表情を浮かべる。
それはそうだ。
宿に入って来た旅行者。
だが、荷物を持っているわけではない。
疑問を感じているおじさんにバスターミナルまでの道を聞いてみる。
すると、フロントに置いてあった簡単な地図を渡してくれて目的地に印をつけてくれた。
どうやら道を間違えたらしく、全くと言っていいほど違う場所に来てしまっていた。
話を聞くと、ここからさらに歩くらしい。
脇道を行けば多少は近いのだが、また迷う可能性もあるので大きな道を教えてくれた。
『また歩くのか....』
軽い気持ちできたのだが、なかなかの一仕事になってしまった。
そういっても、自分が道を間違えたのが悪いのである。
トゥクトゥクに乗っていくことも考えたが、ここまできたら歩いて行こう!
と、変な意地を張って、もう一度歩き出した。
しばらく歩くとガソリンスタンドにたどり着いた。
屋根の下でくつろいでいる店員と知人らしき人たちの横には冷蔵庫。
よく見るとそこには値段が書かれている。
さすがに喉も乾いてきたので飲み物を買おうと決め、声をかける。
「日本人?どこに行くんだ?」
なんとなくのリスニング能力だが、多分そんな感じのことを聞かれる。
バスターミナルと伝えると、全員で道に出て指差しながら教えてくれる。
昨夜の食堂でもそうだったが、ラオスの人たちは私のような旅人に対してもとても親切に接してくれる。
以前感じたようにラオスという国は私に合っているのかもしれない。
道に迷うというトラブルが起きたことで余計にそう感じさせてくれる出来事に出会えた気がする。
「気をつけてなぁ〜!!」
見送ってくれる人たちの言葉がそんな風に聞こえ、私はまた歩き始めた。
*****
ガゾリンスタンドからバスターミナルはすぐに着いた。
ターミナルとはいえ、柵で囲まれた広い敷地に停留所にあるような看板が何本か立っている。
その横にベンチが一つずつ置いてある。
それぞれの看板には行き先がラオ語と英語で書いてあるだけ。
確かにビエンチャンからのバスで着いた場所に間違いない。
いざ来てみたものの、さてどうしよう。
パークセー行きの看板を見つけたところで、行き先しか書いてなさそうなので時間が分からない。
『もしかして来た意味無かった…』
そんなことを思っていると、敷地の中央に【 i 】と書かれた小屋がある。
近づいてみると予想通りインフォメーションだったようで、中に人がいる。
挨拶し明日のパークセー行きのバスの時間を聞いてみる。
どうやら本数が変わったらしく、宿の時刻表よりも早い時間に出るバスが見つかった。
4〜5時間で着くとはいえ、バスの旅は予定外のトラブルで遅れることがあるとタカダさんから聞いていた。
宿探しを考えると少しでも早い時間について損はないと思い、そのバスに乗ろうと決めた。
チケットは買えるか聞くと、当日でいいらしい。
時間はかかったが、いい情報を手にすることができた。
そう思ったらお腹が空いてきた。
気がつけばもうお昼。
30分の予定できたが、2時間以上かけてようやく目的を果たせた。
ターミナルの前の通りの向こうに食堂らしき看板が見える。
ひとまず休憩&腹ごしらえをしようと中に入ってみた。
腰を下ろし写真付きのメニューから1品選び一息つく。
『なかなかいい経験ができたな…』
気楽に考えていた街歩きで自分にとって想像以上に素晴らしい体験ができた。
人間の優しさ
この優しさをこれからの旅でも感じれたらいいな。
そんなことを考えながら、出てきた昼食を食べ始めた。
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