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人助けしたよ~って話

5.6年前の話になります
当時私は、練馬区のアパートで一人暮らしをしていました
鬱病で夜眠れなかった私は、いつも夜な夜な最寄りのコンビニ(歩いて3分)に行ってました
食べ物などを買うためです

ある夜、いつものようにコンビニに行くと
80代前半くらいの小柄で可愛らしいおじいさんが、レジの男性店員さんに何か話しかけてます

「こんな時間に、おじいさんが居るなんて珍しいなぁ」と思いながらも、
商品を選び終え、レジへ行きました

男性店員さんは、おじいさんの話を迷惑そうに聞いてます
私がレジに来たので、おじいさんを無視して
私の会計に取りかかりました
おじいさんは店員さんに無碍に扱われ、悲しそうな顔をしています
困っています

レジを終えた私は、思いきっておじいさんに話しかけてみました
「おじいちゃんどうしたのー?!」
親しみを持ってもらうために、あえてタメ語で話しました

すると、おじいさん「今から区役所に行きたいんだ」と言います
時計を見ると、深夜2時です
やってるわけありません

おじいさんの話では、夕方に友人と会った後、
階段からこけて頭を打って意識がなかった
気付いたら夜中で、区役所に行く用事があったことを思い出し、道を聞こうとこのコンビニにたどり着いた
ということでした

認知症なのか、頭を打って記憶が飛んだのか…
どちらだろう

夜中まで帰ってこないおじいさんをご家族は心配しているだろうな、と私は思い
「警察署に行ってみよう」とおじいさんに言いました
「警察」と言う言葉を聞いたおじいさんが
「警察…?なんで行くの…?」と怯えだしました
私は「警察署だったら何でも知ってるから、区役所の場所聞いてみよう!」
と騙しました

コンビニを後にし、腕を組んで、警察署までおじいさんと一緒に住宅街を歩きます
私の話し声が大きかったので、おじいさんは「しーっ、皆寝てるから」と人差し指を立てて唇にあてました
常識のある良い人です
夜中だという認識もあるようです

「あそこに人が立ってる」とおじいさんが指差しました
人など居ません
「あれは、木だよ~」と私

「あの白くてボヤ~っとしてるのは何?」
「あれは塀だよ~」

やはり認知症なのか…?

私は「何か持ち物ある?」と聞いてみました
おじいさんがポケットから、銀行のATMでお金を振り込んだ際の明細書を出しました
そこには、おじいさんの名前が記載されています
「それ私が預かっておくね」と言って、大事にポケットにしまいました

警察署まではそれなりに距離がありました
おじいさんが歩き疲れてないか心配になった私は、タクシーを拾いました
おじいさんは「タクシーなんて贅沢なもの乗れない…」と乗ることに躊躇しています
なんと謙虚なんでしょうか

タクシーの運転手さんも「警察署なら、あともうちょっと歩けば着くから、歩いた方がいいですよ」と言います
こちらもまたいい人です

タクシーで向かうことをやめて、また歩き出しました
タクシーの運転手さんの言う通り、警察署まですぐ着きました

警察署に入ると、おじいさんがついてきません
自動ドアの前に立ち尽くしてます
私が「大丈夫だから、おいでおいで」と呼び寄せると、おじいさんは入ってきました
可愛い…
私は既におじいさんに愛着を持っていました

おじいさんを離れた椅子に座らせて、
受付のお姉さんに話します
「どこどこのコンビニでおじいさんを保護して、たぶん認知症かもしれなくて、持ち物はこれで、名前が書いてあります」
さっき預かった銀行の明細書を提示します
おじいさんと話し終えた男性警官が、そこにやってきました
明細書を見て、「言ってる名前と相違ないなぁ」とつぶやきました

「でも怪我してるんです!腕のここが!」と私は言っておじいさんの腕をまくりました
腕にかすり傷があります
「でもそこだけでしょ?」と男性警官
私はちょっとムッとしました
もっと心配してくれてもいいのに…

受付で、名前と住所と電話番号を書かされました
「心配なのでその後どうなったのかの連絡はもらえませんか?」と受付のお姉さんに試しに聞いてみました
やはり「個人情報なので教えられない」とのことでした

私は後ろ髪を引かれる気持ちで、おじいさんを残し、警察署を後にしました
最後に見かけたおじいさんの姿は、
ガックリ肩を落とし、ひどく疲れたような様子で椅子にもたれ掛かってました

その後のことはわかりません
無事にご家族の元に戻れていて、出来れば今も元気に生きていて欲しいです

警察署からの帰り道
コンビニに寄って、おじいさんを無碍にした男性店員さんに報告しました
「おじいさん警察署に連れて行きましたよ~保護してもらいましたよ~」
店員さんは「あ、ありがとうございます…」と照れたように笑いました
この店員さんも、機転を利かせて警察に電話するとかすれば良かったのに…

私は自分の行動が偉いとは言いません
「やりすぎちゃったかな…?」「でしゃばりすぎたかな…?」「お節介だったかな…?」と自省しました

そして本当に損得勘定なく人助けする人は、
たぶんいちいち自分がやったことを、覚えておらず、人にも話さないと思います

でも、少しだけでも人の役に立てていたら…
これほど嬉しいことはありません

子供叱るな来た道
老人笑うな行く道
皆が優しい心を持って、助け合える世の中であることを願います

※ついでに言うと、私は「枯れ専」です








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