光る君へ 第34回|中宮様開花
いざ感想を書こうとすると、どの部分をピックアップするか悩みます。
迫力ある興福寺の僧の交渉(脅し)にも毅然と対応する道長様、
ますます勢いづき皆を楽しませるまひろの物語、
御嵩詣へのいきさつと伊周の不穏な動き、、、。
でもなんといっても、中宮彰子様の変化ですよね。
第34回「目覚め」のタイトルの通り、奥ゆかしい中宮様の御心が、少しずつ開花され、それがしっかりと表現されております。
中宮様はまひろと話すべく、いつも傍にいる女御に
「そなたはよい、下がれ」と
その女御もまひろも驚くような意思表示をされました。
「そなたの物語だが、面白さが分からぬ」
「帝はそなたの物語のどこに惹かれておいでなのであろう」
疑問を持つとは、関心があることの表れです。その解を自ら掴みにいこうと、まひろに直に聞く。それまで中宮様の目に映っていても見えてこなかった世界が広がっているのがよく分かります。自らの意思で言動しても、なにも恐れることはないのです。それまで奥ゆかしいとされてきた中宮様が、少しずつ、強く、柔らかい存在状態になり、やっとエネルギーを纏ったお姿になりました。(案外、率直な物言いで、若さゆえの残酷さも感じます。笑)
中宮様は思慮深いからこそ、本心を打ち明けられる人がいなかっただけで、本来のお姿はこのように素直で端的に話せるお方なのですね。のちに「賢后」と言われるほどの要素が、このシーンにも散りばめられております。
まひろに出会って、中宮様は変わりましたね。
そして曲水の宴にて、
道長様や公卿らが仲睦まじく談笑している様子。
これを見て中宮様は、
「さっき、父上が心からお笑いになるのをみて、びっくりした」
とまひろに話しました。まひろは中宮様の御心はお見通しかのように、流れるように指南します。
「殿御は皆、かわいいものにございます。帝も殿御におわします。さきほどご覧になった公卿たちと、そんなにお変わりないように存じますが。帝のお顔をしっかりご覧になって、お話申し上げなされたらよろしいと存じます」
まひろのこの言葉を受けて、とまどいのお顔で菓子を口へ運んだ中宮様。
まひろの言葉が心に響き、とまどってしまう、この繊細な表情がなんとも素敵でございました!「はぁ~♡」と観ているこちらの心までも花開くようなシーンでした。
まっすぐな生き方のまひろ、「心にまっすぐ届く言葉の魔法」に中宮様がかかったようでした。
そしてこの中宮様とまひろのやり取りを、遠くから見ていた道長様。どんな会話か聞こえなくとも、ふたりの様子から理解できるのですね~。これもまた、道長様の愛の大きさが伺えます。内気な娘が、人間味のあるときめいたお顔をされていたこと、それが、これまでにない手応えを感じること。またそれを優しくサポートしているのが、昔から惚れている女であること。(道長様~眼福ですな♡)
中宮様は、幼い敦康親王と実の親子のように心を通わせています。知らず知らずのうちに、殿御を雲の上の遠い存在と設定してしまっただけで、幼い親王様と成人男性はもとより、帝とてそう大差ございません。その誤解が解ければ、中宮様と帝が心を通わせる日もそう遠くはない・・・
と期待できる演出でした。さすが脚本家・大石静さんはラブストーリーの名手と言われるだけありますね。今回も感動。今回も大満足です。
興福寺の僧の件、度重なる災難、懐妊祈願、御嵩詣。
頼みのはるあきら(安倍晴明)が亡くなったいま、なんでも背負って決断し、世の平安のために励む道長様。そりゃますます力強く、そして己や周りに厳しくなりますが、だからこそ孤高になりますね。組織のトップとしての強さと弱さ、陰と陽、光と影は、常に等しいのだと思わざるを得ません。
「道長らしからぬ怒り方」と公卿に言われ、
「そなたらしからぬ考え」と帝に言われ。
道長様は必死なのでございます。
「なんとかならぬか」と弱々しい声で、胸の内をさらけ出せるのがまひろのみ。道長様にとってまひろの存在が、これからも必要不可欠ですね。藤壺の女御たち、面白半分で騒ぎ立てないでー(笑)