マガジンのカバー画像

感想

362
運営しているクリエイター

#感想

『歌屑 伊藤悠初期短編集』伊藤悠(著)

荒廃した東京を走る列車を守り戦う少女たち。人を殺せない忍びの少年の悲しき戦い――etc。『新線西部軌道』、『黒白』、『黒突』、『影猫』、『影猫II』――伊藤悠が鮮烈な筆致で描く運命に抗い己を貫く者たちの生き様! 心揺さぶる傑作短編がついに初単行本化! 待望の短編集! 20年待ったよ…。 20年前の学生時代、面影丸に目もくらむ衝撃を受けて以来大ファン。 単行本化されてないウルトラジャンプの読み切りが読みたくて国会図書館に行こうか悩んだりもしたが、やっと単行本化された。 初

『AKIRA』大友克洋(著)

漫画史に残る傑作SFコミックを原作者・大友克洋自ら監督を務めた劇場版アニメ。第三次世界大戦後の2019年。バイクで転倒負傷した鉄雄は軍の研究室へ連れ去られる。そこで“力”に覚醒した彼は、“アキラ”への接近を試みる。 映画版を見直し、続けて漫画も読み返す。お腹いっぱい胸いっぱい。 映画と漫画、どちらも神がかって素晴らしいが、ついつい比較してしまう。情報量という点では漫画が圧勝で、映画では間抜けにしか見えなかったミヤコが実はナンバーズだったり、アキラ君が普通に復活したりとかジ

『シン・ゴジラ』庵野秀明(総監督)

東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが巨大な轟音とともに大量の浸水に巻き込まれ、崩落する原因不明の事故が発生した。謎の巨大不明生物は上陸。普段と何も変わらない生活を送っていた人々の前に突然現れ、次々と街を破壊し、止まること無く進んでいく。“ゴジラ”と名付けられたその巨大不明生物と、自衛隊との一大決戦の火蓋がついに切られた。果たして、人智を遥かに凌駕する完全生物・ゴジラに対し、人間に為す術はあるのか? やっと見た。世間の評判が高かったので期待したが、そこまで楽しめず。

『ペンギン・ハイウェイ』石田祐康(監督)

森見登美彦の日本SF大賞受賞作をアニメ化した青春ファンタジー。小学4年生のアオヤマ君は、日々世界について学んだことをノートに記録し研究している男の子。夏休みを翌月に控えたある日、アオヤマ君の住む郊外の街に、突如ペンギンが現れ…。 阿呆成分は残っているが、京都から卒業した森見登美彦の傑作SFファンタジー。森見作品とは思えない爽やかさに驚く。 お話は原作に準じており、それがかわいらしいキャラと音楽で小気味良く動く。逆に森見作品なのに外連味がなさ過ぎて違和感すら感じる。それに慣

『夜は短し歩けよ乙女』湯浅政明(監督)

『四畳半神話大系』のクリエイター陣が再集結した劇場版アニメ。クラブの後輩である“黒髪の乙女”に想いを寄せる“先輩”は、天真爛漫に京都の街を歩き続ける彼女を追い求めるうちに、不思議な出来事に巻き込まれていく。主演ボイスキャストは星野源。 濃密すぎる一作。起承転結がないので、見ていて疲れるが、怒涛の一夜の出来事なのでしょうがない。絵柄がポップでキュートなおかげで胸やけせずに楽しめた。 お話は荒唐無稽な京都が舞台。飲み比べしたり文化祭したりと、夢の中の出来事のように華やかで楽し

『夜明け告げるルーのうた』湯浅政明(監督)

寂れた漁港の町・日無町(ひなしちょう)に住む中学生の少年・カイは、クラスメイトの国夫と遊歩とバンドを組むことに。練習場所である人魚島に行くと、人魚の少女・ルーが3人の前に現れた。しかし、古来より日無町では、人魚は災いをもたらす存在。ふとしたことから、ルーと町の住人たちとの間に大きな溝が生まれてしまう。そして訪れる町の危機。カイは心からの叫びで町を救うことができるのだろうか…。 躍動感が素晴らしいの一言に尽きる。 かっちりしてない線が画面狭しと踊り狂うのに、音楽とはぴったり一

『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ(著)冨永星(訳)

時間の常識を根底から覆す! 時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもない──。“ホーキングの再来”と評される天才物理学者が、「この世界に根源的な時間は存在しない」という大胆な考察を展開しながら、時間の本質を明らかにする。本国イタリアで18万部発行、35か国で刊行予定の世界的ベストセラー! かなりポエミー。科学的な本かと思いきや、哲学、詩的な話と半々。まぁどちらも全然理解できなかったけども。 タイトルは詐欺気味。原題は「時間の順序

中学生必読!『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』西成活裕(著)

中学生は決して読まないでください! ! 5〜6時間で中学3年分の数学がほぼ終わってしまう 「禁断の書」ついに発刊! 本書は、中学・高校で数学に挫折してしまった大人のための「最速・最短で数学のやり直しができる本」です。 数学なんて人生で役に立たないでしょ、と思ってる中学生は必読。 中学時代に勉強を放棄した人間だが、わかりやすくて感動した。 中学授業は匍匐前進横並びでちまちま進むのに対し、この本は全力疾走するイメージ。授業でちんたらやってるうちにやった事を忘れる人間としては、

『まほり』高田大介(著)

大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村に出身地が近かった裕は、夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた昔なじみの飯山香織とともにフィールドワークを始めるが、調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されて

『ロボット・イン・ザ・ハウス』デボラ・インストール(著) 松原葉子(訳)

AIが活躍する近未来のイギリス。妻に去られた三十代ダメ男のベンと、庭に現れたぽんこつ男の子ロボット・タングの旅と友情、成長を描いた『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。多くの「タング・ロス」の声に応え、続編が登場。ベンと元妻エイミーに女の子ボニーが誕生して九カ月。二人は微妙な関係のまま、タングとボニーの両親として暮らしていた。お兄ちゃんになったタングは、妹のお世話をしようと大奮闘。喜んだりやきもちを焼いたりとてんやわんや。そんなある日、庭にまた一体のロボットが…。人間とロボットの

『天冥の標 2 救世群』小川一水(著)

西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく罹患者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていく―すべての発端を描くシリーズ第2巻。 現代地球でまさかの冥王斑アウトブレイク。SF成分少なめだが、アウトブレイク物として面白

『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ(著)山田蘭(訳)

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作! まんまと騙されたよ。終わってからみると、たしかにそいつしか居ないのだけど、読んでる時は、怪しい演出にほいほい釣られる。お見事。 また

『少女禁区』伴名練(著)

15歳の「私」の主人は、数百年に1度といわれる呪詛の才を持つ、驕慢な美少女。「お前が私の玩具になれ。死ぬまで私を楽しませろ」親殺しの噂もあるその少女は、彼のひとがたに釘を打ち、あらゆる呪詛を用いて、少年を玩具のように扱うが…!?死をこえてなお「私」を縛りつけるものとは―。哀切な痛みに満ちた、珠玉の2編を収録。瑞々しい感性がえがきだす、死と少女たちの物語。第17回日本ホラー小説大賞短編賞受賞。 耽美な短編2篇。「chocolate blood,biscuit heart」はS

『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』デニス・E・テイラー(著)金子浩(訳)

増殖に増殖を重ねて百体以上になったボブは、人類が入植可能な惑星を求めて大宇宙を探索し、四つの植民可能な星系を見つけた。だがその途上で、ボブたちは原住生物が虐殺され、すべての鉱物資源が採掘し尽くされた星系をいくつも発見する。その犯人を〝アザーズ〟と名づけたボブたちは、その正体を探るが……!? 1巻ほどの波乱万丈さはないけど、物語は粛々と進んでゆく。とはいえ、エデンの発展や、地球からの人類脱出、ボブ(の一人)の恋、ボブ(の一人)の自殺、金属泥棒アザーズとの戦争突入、新たな知的生