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2019年11月の記事一覧

『天冥の標Ⅲ アウレーリア一統』小川一水(著)

アウレーリア艦長と《酸素いらず》の一統が奪われた忘却炉「ドロテア・ワット」を追う。西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント 大主教国は肉体改造により真空に適応した《酸素いらず》の国だった。海賊狩りの任 にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカ に暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたと いう彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが……。シリーズ第3巻。

『ファミリーランド』澤村伊智(著)

30年後、50年後――あるいは100年後に「家族」のかたちはどう変わるのか。『ぼぎわんが、来る』『予言の島』などホラーとミステリの両ジャンルで、高い評価と熱い支持を受ける澤村伊智。稀代のストーリーテラーが、SF的想像力と未来の物語に挑む連作短篇集。 初読み作家。 ちょっと先、IT化がかなり進んだ未来の短編集。どれも、SFでホラーで滑稽。かなり楽しめた。 技術がストレスと直結しているディストピアなんだけど、結局ストレスの原因は人間で、時代が変わっても人間は変わんないね、とい

『ディザインズ』五十嵐大介(著)

自然界を超越した異形の生物──HA(ヒューマナイズド・アニマル)。それは遺伝子を“設計”された、ヒトと動物とのハイブリッド。HAが備える驚異的な身体能力は、野心を抱く人々の策略によって殺戮の現場へと投入され、その真価を発揮していく。ヒトは何のためにこの異形をデザインしたのか──その背景には、人類の未来へとつながる壮大な計画が横たわっていた! 稀代の表現者・五十嵐大介が放つハードSF、ついに登場! 完結したのでまとめ読み。五十嵐大介には珍しく(初?)バトルアクション物で、結構

『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ(著)冨永星(訳)

時間の常識を根底から覆す! 時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもない──。“ホーキングの再来”と評される天才物理学者が、「この世界に根源的な時間は存在しない」という大胆な考察を展開しながら、時間の本質を明らかにする。本国イタリアで18万部発行、35か国で刊行予定の世界的ベストセラー! かなりポエミー。科学的な本かと思いきや、哲学、詩的な話と半々。まぁどちらも全然理解できなかったけども。 タイトルは詐欺気味。原題は「時間の順序

中学生必読!『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』西成活裕(著)

中学生は決して読まないでください! ! 5〜6時間で中学3年分の数学がほぼ終わってしまう 「禁断の書」ついに発刊! 本書は、中学・高校で数学に挫折してしまった大人のための「最速・最短で数学のやり直しができる本」です。 数学なんて人生で役に立たないでしょ、と思ってる中学生は必読。 中学時代に勉強を放棄した人間だが、わかりやすくて感動した。 中学授業は匍匐前進横並びでちまちま進むのに対し、この本は全力疾走するイメージ。授業でちんたらやってるうちにやった事を忘れる人間としては、

『まほり』高田大介(著)

大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村に出身地が近かった裕は、夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた昔なじみの飯山香織とともにフィールドワークを始めるが、調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されて

『ロボット・イン・ザ・ハウス』デボラ・インストール(著) 松原葉子(訳)

AIが活躍する近未来のイギリス。妻に去られた三十代ダメ男のベンと、庭に現れたぽんこつ男の子ロボット・タングの旅と友情、成長を描いた『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。多くの「タング・ロス」の声に応え、続編が登場。ベンと元妻エイミーに女の子ボニーが誕生して九カ月。二人は微妙な関係のまま、タングとボニーの両親として暮らしていた。お兄ちゃんになったタングは、妹のお世話をしようと大奮闘。喜んだりやきもちを焼いたりとてんやわんや。そんなある日、庭にまた一体のロボットが…。人間とロボットの

『天冥の標 2 救世群』小川一水(著)

西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく罹患者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていく―すべての発端を描くシリーズ第2巻。 現代地球でまさかの冥王斑アウトブレイク。SF成分少なめだが、アウトブレイク物として面白

『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ(著)山田蘭(訳)

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作! まんまと騙されたよ。終わってからみると、たしかにそいつしか居ないのだけど、読んでる時は、怪しい演出にほいほい釣られる。お見事。 また

『少女禁区』伴名練(著)

15歳の「私」の主人は、数百年に1度といわれる呪詛の才を持つ、驕慢な美少女。「お前が私の玩具になれ。死ぬまで私を楽しませろ」親殺しの噂もあるその少女は、彼のひとがたに釘を打ち、あらゆる呪詛を用いて、少年を玩具のように扱うが…!?死をこえてなお「私」を縛りつけるものとは―。哀切な痛みに満ちた、珠玉の2編を収録。瑞々しい感性がえがきだす、死と少女たちの物語。第17回日本ホラー小説大賞短編賞受賞。 耽美な短編2篇。「chocolate blood,biscuit heart」はS

『われらはレギオン2 アザーズとの遭遇』デニス・E・テイラー(著)金子浩(訳)

増殖に増殖を重ねて百体以上になったボブは、人類が入植可能な惑星を求めて大宇宙を探索し、四つの植民可能な星系を見つけた。だがその途上で、ボブたちは原住生物が虐殺され、すべての鉱物資源が採掘し尽くされた星系をいくつも発見する。その犯人を〝アザーズ〟と名づけたボブたちは、その正体を探るが……!? 1巻ほどの波乱万丈さはないけど、物語は粛々と進んでゆく。とはいえ、エデンの発展や、地球からの人類脱出、ボブ(の一人)の恋、ボブ(の一人)の自殺、金属泥棒アザーズとの戦争突入、新たな知的生

『教養は「事典」で磨け ネットではできない「知の技法」』成毛眞(著)

辞書・辞典・事典・図鑑。これらを、引いたり調べたりするものだと思ってはいないだろうか。また、大人になってからはすっかり縁遠くなってしまった、という人はいないだろうか。実は辞書や事典は、生涯をかけて読まれるべき、実に面白い「本」である。いまやインターネットでなんでも調べられるが、そこで得られる知識は、入力したキーワードから予測される範囲の事柄にすぎない。一方、辞書や事典を読むのにキーワードはいらない。適当にページを開けば、必ず知らない何かが記載されており、思いもよらなかった知識

『人間の手がまだ触れない』ロバート・シェクリイ(著)

このままでは、ふたりとも餓死してしまう!手違いのため食料を積み忘れた宇宙艇乗組員は、前方に現われた人跡未踏の惑星に着陸し、食料を調達しようとするが!?ブラックなユーモアあふれる表題作、時空にできた割れ目に挟まってしまった男の奇妙な冒険を描く「時間に挟まれた男」、殺人が特定のルール下で合法化された社会を舞台にしたサスペンス「七番目の犠牲」ほか、奇想天外でウィットに富んだ13篇を収録する傑作集。 傑作社会風刺SF短編集。70年前のSFだけど、ギャグ寄りで普通に面白い。さすがに出

『龍の耳を君に』丸山正樹(著)

手話通訳士の荒井尚人は、コミュニティ通訳のほか、法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳をする生活の中、緘黙症の少年に手話を教えることになった。積極的に手話を覚えていく少年はある日突然、殺人事件について手話で話し始める。NPO職員の男が殺害された事件の現場は、少年の自宅から目と鼻の先だった。緘黙症の少年の証言は果たして認められるのか?ろう者と聴者の間で苦悩する手話通訳士の優しさ、家族との葛藤を描いたミステリ連作集。書評サイトで話題を集めた『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士