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『ファミリーランド』澤村伊智(著)

30年後、50年後――あるいは100年後に「家族」のかたちはどう変わるのか。『ぼぎわんが、来る』『予言の島』などホラーとミステリの両ジャンルで、高い評価と熱い支持を受ける澤村伊智。稀代のストーリーテラーが、SF的想像力と未来の物語に挑む連作短篇集。

初読み作家。
ちょっと先、IT化がかなり進んだ未来の短編集。どれも、SFでホラーで滑稽。かなり楽しめた。

技術がストレスと直結しているディストピアなんだけど、結局ストレスの原因は人間で、時代が変わっても人間は変わんないね、という悲しさがホラーだし滑稽。世にも奇妙な物語のようなお話だった。

コンピューターお義母さん

鍵から照明、冷蔵庫、テレビに至るまで全ての家電がAIで管理され、そのAIが、遠い老人ホームにいるお義母さんにハッキングされ、嫁いびりに使われるディストピア。嫁が帰ってきて鍵を開けても、姑に即ロックされた描写は、読者にも殺意が湧いたよ。多分この本で一番ストレスフル。
セキュリティどうなってんだよ、と思いつつ、地獄のようなラストに呆然。

翼の折れた金魚

遺伝子改造モノ。子供の遺伝子を改善し、より強く、より賢い子供を作ることが常識となっている社会。ただし子供は金髪碧眼になり、髪や目が黒い子供は迫害される。教師自身も黒髪のくせに、黒髪の子供をみると嫌悪感を抱く、という人間の感情の流されやすさが気持ち悪かったお話。

マリッジ・サバイバー

婚活マッチングサイトモノ。中国でFBが婚活サイト始めたらこんな感じになるだろう、と恐い。監視があるからこそストレスを感じるけど、監視があるからこそ異常行動者を即逮捕できる、というジレンマと、マッチングサイトと掛け合わせる発想が素晴らしい。遺伝子まで管理するよ、という思想もすけて見えてより怖い。もう試験管で子供作って、結婚しなくてよい社会をつくってくれよ、と切に願う。一人で気楽に生きていたい。

サヨナキが飛んだ日

一家に一台、医療ドローンという時代。喋って世話を焼いてくれる鳥型ドローンに依存する子供が増え…。というお話だが、本筋は母の娘殺し。サイコは未来でもサイコだな、とちょっと安心すらしてしまった。

今夜宇宙船の見える丘に

介護モノ。しかし介護ロボットではない。足を切り落とし、人工肛門をつけ、介護者を楽にするキットを安売りするよ!という地獄。被介護者にキットを使え、と言わしめる地獄。そしてこれが貧困層には必須という地獄。足を切るのがフェーズ2,手を切るのがフェーズ3,脳の停止がフェーズ4と進んでゆく。年金を受取るためだけに。そしてこれをエイリアンとの遭遇に絡める発想が最高。オチにはお前もかよ!と突っ込まざるをえない。まぁ技術代だよね(笑)

愛を語るより左記のとおり執り行おう

葬儀が形骸化しARで済ます時代、遺言でヴァーチャルではない葬儀を頼まれた家族の顛末を追うお話。
えっ会場が要るの? とか、えっなんで寺が関係あるの? とか、えっ、死体どうするの? とか、一々ひっかかっていて笑える。しかし一番リアリティを感じた。現在でもすでに形骸化している葬儀だが、数百年たち、これでもかと風化しており楽しい。今の仏教、仏陀の教えの欠片も残っていないと感じているので、痛快だった。これは映像化したら面白そう。
とはいえ、自分のように社会と接点のない人間にとって、心底葬儀は不要だな、と再認識してしまった。

最後、巻末の参考文献にも笑った。この人他の本でもこんな感じなんだろうか? エッセイとか読んでみたい。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #SF #ホラー #澤村伊智

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