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賃上げってなに?人事は自社の賃上げをどのように推進していくべきかをまとめてみた

2024年は年初から賃上げの話題が目白押しです。岸田総理は2024年の年頭所感において、「まずは足元の物価高から国民生活を守り、「物価上昇を上回る賃上げ」を必ず達成しなければなりません。経済界には、今年の春闘で「昨年を上回る賃上げ」をお願いし、賃上げ促進税制を中小企業にも使いやすい形で強化します」と宣言しています。昨年は連合や経団連も相次いで賃金上昇を日本経済の課題と捉えており、それに呼応する形で政府が税制優遇を行う変わりに日本の経済界に対して賃金上昇を訴えた形になります。

そんな賃上げですが、言葉だけが一人歩きしていて、実際飛び交っている言葉の意味は分かりにくいのでは?と思っています。そこで今回は賃上げについて取り上げていきます。


1.そもそも「賃上げ」「ベースアップ」「定期昇給」ってどういう意味?

賃上げとは、労働者が受け取る基本的な給与や賃金が増加することを指します。労働者に対して提供される報酬の一環として行われる変更であり、通常は労働市場の需給や企業の業績、経済の状況などに基づいて行われます。私は賃上げを主に以下の3つに分類しています。

①ベースアップ

全従業員の基本給を一律に引き上げる賃上げ方法のことを指します。略して「ベア」と呼ばれることもあり、全従業員の基本的な収入が増える賃上げ方法です。

②定期昇給(勤続年数などによる昇給)

報酬制度などで定められている、従業員の勤続年数や年齢などに応じて給与等が自動的に増加する賃上げ方法です。通常は年1回、就業規則に定められた昇給月に行います。 能力成果主義の浸透により、勤続年数や年齢を全ての世代に適用するのは馴染まなくなってきております。新卒入社の数年間等、限定して行われるケースが増えている印象です。

③定期昇給(人事評価による昇給)

従業員の能力や成果に基づいて昇給が行われる賃上げ方法を指します。②の昇給と同様、通常は年1回就業規則に定められた昇給月に行います。 この昇給の仕組みでは、各従業員が組織に対してどれだけの価値を提供し、成果を上げ、能力を向上させたかが昇給の主要な基準となります。昇給の基準は企業ごとに異なり、企業が何に焦点を当てるかによって変わります。 また給与だけに限定せず、賞与も考慮して両方のバランスを取りながら増額するような総年収を高める昇給を採用する企業もあります。

2.なぜ賃上げのニーズが増えているのか

それではなぜ、賃上げのニーズが高まっているのでしょうか?私は主に2つの要因があると考えます。

①政府主導による物価上昇への積極的な取り組み

冒頭で触れたとおり、2024年は年初から物価上昇への高い課題が問題提起されています。
日本の物価上昇が必要な背景として、過去の消費者物価指数の推移を調べてみたところ日本生命ホームページにわかりやすいグラフが記載されています。下記のとおり、バブル崩壊が起きた1990年を境いにして、日本の消費者物価指数はあまり上昇していないことがわかります。

日本生命HP 新社会人のための経済学コラム 第54回より

なぜこの30年間、日本の消費者物価指数が上がらなかったのでしょうか?その背景を次のとおりと捉えています。

  • 冷戦の終結とともに産業構造が大きく変わり、日本がかつて強みを発揮していた領域の主流が変わっていった

  • 円高と輸入自由化が重なることで海外から安い製品や食品が輸入されてきたことが、日本の物価上昇の抑制要因になっていた

  • 日本の雇用や会社に対する考え方がなかなか変化できずにいた期間に、日本企業が強くなれずにいた

②人材の確保のために賃金上昇が必要不可欠となっている

最近、企業は人員不足という課題があります。それゆえ、採用活動を強化し人材確保に力を入れています。これによって採用競争が激しくなり、どの企業も人材確保が難しくなっています。
人員不足の対策として、企業は退職者を増やさないように努力しています。競争が激しい状況下では、従業員が他の会社に転職する可能性も高まっています。そのため、企業は従業員の定着を促すためにエンゲージメントを高める様々な取り組みを行っています。
結果、魅力的な人材を採用し、退職を減らし、既存の従業員のやる気を高めるために、毎年賃上げを確実に行なっていく施策は不可欠な取り組みとなっています。

さらに人的資本開示の取り組みにおいて、従業員数や賃金上昇率を公表する企業も増えてきております。情報を公開することで、給与を還元することに積極的な企業に人が集まり、そうでない企業には集まりにくくなっていきます。この動きもさらに加わっていることも後押ししている要因です。

なお、2024年の賃上げに関する最新の動向について、こちらのサイトによくまとめられていましたので紹介しておきます。

3.人事企画担当者は会社の賃上げをどのように推進していくべきか?

以上のとおり、社会全体で賃上げへの要望が高まり、経営の優先事項として捉えられています。ただし、企業ごとに賃上げに対する姿勢は異なります。人件費が増えると、当然ながら売上も増やさなければなりません。しかし、実際に売上を伸ばすのは非常に難しい課題です。

人事企画担当者には、賃上げを進めるだけでなく、事業戦略にも深く関与する覚悟が求められています。販管費を増やすためには、売上高をどのように増やすか、それにはどのような戦略が必要か、他のコストを削減して総合的な販管費を制御できるかなど、戦略的な視点が必要です。

同時に、賃上げの実現方法についても具体的な数値や説明を通じて提示する必要があります。これによって、経営陣や財務担当者に対して、賃上げが実現可能であることを説得力をもって示すことが求められます。今はまさに、人事企画担当者が企業の変革を牽引していくための重要な時期に立っていると言えます。

以上のような話を、先日のスペースでさせていただきました。松原さん、おにぎりまんさん、どうもありがとうございました。

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