第十四章 真実の発覚!③
「千尋はっ?!」
「よっしい……そんなすごい剣幕で……一緒にいるけど」
「出して!あいつ、電源切ってるから!」
「分かった」
ベッドで寝そべっているあたしに、にゃんちが声を掛けた。
「千尋、よっしいから電話……」
「嫌、出ない」
にゃんちは、頭をぽりぽりと掻きながら……。
「出たくないって」
「あーもう!違うんだって!もうオレは全然怒ってない!むしろ、千尋愛してる!聞こえるだろ?!お願いだから、電話出てくれよっ!!」
あたしは、思わずにゃんちのスマホをふんだくり、
「はあ?!愛してる?!よっしい……頭、どっかに打ったの?病院、行かなきゃ……」
「千尋……良かった、電話出てくれて。千尋ー……ごめん。ごめんな、千尋!今から、すぐにうち帰ってきてくれよ!本当に悪かった!」
「……マジ、どしたわけ?」
にゃんちと眼が合ったけれども、ハテナ顔。
「一生のお願い、ここで使う!今すぐに帰ってきて!」
「分かった、分かったから。三十分くらいで帰る……」
「待ってるからな!」
電話が切れた。
「にゃんち……よっしい、頭打ったみたい」
「すごい剣幕だったね。全部聞こえてたけど……何だか知らないけど、すぐに帰った方がいいよ。気を付けて」
「うん、急いで帰らなきゃ」
――「珀っ?!」
「猛……何?」
珀は、もうスマホの電源を切ってはいなかった。
良かった……。
「あのさ、すんげー大事な話があるんだわ。今から、すぐに家戻ってきて!」
「大事な話?一緒に住んでるのばれた事?それは、猛には悪かったと思ってるよ。またとばっちり食らわせちゃって……」
「んな事、どうでもいい!いや、どうでもよくはないけど。とりあえず、今はどうでもいいんだ!とにかく!すぐに帰ってきて!待ってるからな!」
――一方的に、電話は切れた。
「何っだよ。勝手なヤツ」
「猛くん?すごい剣幕だったわね」
「ああ。猛が取り乱すのって、マジかなりレアだから、こりゃ帰るしかないな。千尋もいたら、はらわた煮えくり返るけど……」
「珀、今夜バイトだったんじゃないの?」
「バイトより、親友を取るよ」
香夏子の部屋を、後にした。
家へ帰ると……よっしいと珀ちゃん、二人揃っていた。
「おい。何で千尋まで帰ってくんだよ。千尋がいるなら、オレは出てく」
「珀、落ち着けって……今回の事は、全部オレのせいなんだ」
「はあ?どういう事?」
「何言ってるの、よっしい」
「あのさ……早瀬から、全部聞いた。千尋、オレの為に珀との別れを選んでくれたんだな。オレなんかの為に……」
「は?猛の言ってる意味がまるっきり理解できないんだけど」
「あーもう……どっから説明したらいいんだよ!あのさ……千尋、聞いて。オレ、舞先生と付き合ったりしてないよ」
「……へ?付き合ってないの?」
「付き合ってない。確かに、家まで送ってくれたりしてたけど……振られたってか、所詮生徒と教師なんだし、その先なんてないよ。当然、オレは男としてなんて見られてないわけで……それは、珀も知ってる事だ」
「……分かってる。付き合って……なかったの?」
「今度は、珀に聞いて欲しい。早瀬がさ、お前と千尋が別れないなら、オレと舞先生が付き合ってるって、学校中にばらすとか脅したらしい。で、千尋はオレを守る為に、お前と別れる決心をした」
「は?ん?まとめると、玲が千尋を脅して、千尋は猛の為にオレに別れたいって宣言したって事?……あの野郎……」
「早瀬も誤解してたんだよ。確かに、舞先生とは普通以上に仲良く見えたかもしれない。傍から見れば。けど、付き合ってなんかないんだよ。まあ、早瀬だけを責めるわけにもいかない。千尋も、それで無理やり珀と別れたんだろ?オレと舞先生が付き合ってると思い込んで、その事実が学校中に広まらないように……」
「千尋……そうなの?マジかよ。あの女、絶対に許さねえ」
「いや、早瀬も勘違いしてたわけだから、責められない」
「だからって、千尋を脅してまで……ありえないだろ!」
「千尋、本当にごめん。オレの為に、珀に別れを切り出したんだな。辛かっただろうに……ごめんな。マジで、全部オレのせいだ」
何も、言葉が出てこなかった。
そう……。
よっしいは、舞先生とは付き合ってはいなかったのか。
何だか、肩の力がどっと抜けた……。
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