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第十四章 真実の発覚!②

「千尋、おはよ。今日も学校行かないの?」

「うん、おはよ……どんな騒ぎになってるか想像つくし。好奇の眼で皆に見られるのは、嫌なの」

「まあ、結構な騒ぎにはなってるけど……珀も、また不登校になってるみたいだし」

あたしは、にゃんちの一人暮らしのマンションの部屋で、お世話になっている。

もう……あの三人の部屋には、二度と戻れない。


「じゃあ、オレは行ってくるよ。騒いでいる人には、できる限り説明しとくから。行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」

軽いキスをして、にゃんちは部屋を出て行った。


珀ちゃんの気持ちが、よく分かる。

スマホの電源、切りたい気分になる。

怖いんだ。

怖いから……。

ただ、電源を入れない。

電話が来る事も。

電話が来ない事も。

どちらも、怖いんだよ……。

そう思いながらも、静かにスマホの電源を入れてみた。


不在着信は残るように設定してはいない為、確認する事ができない。

ラインは……。

やはり、思っていた人から思っていた通りのメッセージが入っていた。


『千尋、ごめん。言い過ぎた。今、どこにいるの?』


よっしいだ。

よっしいは、必ず自分から謝ってくると思っていた。

そういう人だもの。

けれども、それだけだった。

珀ちゃんからは、何の連絡も入ってはいなかった。

「はあ……何やってるの?あたし」

あたしは……。


本当ににゃんちの事が、好きなの?




――「よっしい、ごめん。千尋なら、オレのとこいるから」

「うん……分かってる。他に、千尋の行くところはないから」

「オレと付き合う事、反対なんだって?」

「あいつは、珀の事が好きだからだよ。にゃんちは、千尋に本気なの?」

「うん、好きだよ」

「なら、尚更やめた方がいい。千尋は珀の事がまだ好きだし、あいつらは別れたりなんかしないから」

「どういう事?オレの眼の前で、珀とは終わったんだよ?」

「オレには分かるんだ。だから、にゃんちには傷ついて欲しくない。それだけ」


午後の日差しの照りつけるベランダで……。

「あ、ついでに!学校にはちゃんと来いって言っておいて」

よっしいは、自分のクラスへと戻っていった。


「珀の事がまだ好き、か。そんなの、わざわざ忠告されなくても分かってるけど」





――皆、噂好きだ。

「千尋と珀、同棲してたんだって!」

「珀とにゃんちで、千尋の奪い合いしたらしいよ!」

「千尋、珀と別れてにゃんちとヨリ戻したんだって!」

「珀は、綺麗な大学生のお姉さんに今ハマってるみたい!」

分かった、分かった……。

学年中が、この話題で持ち切りだ。

珀がオレの名前を出さないでいてくれたお陰で、同棲って事で話は済み、オレの名前は誰からも出てはこない。


分かるよ、千尋。

こんな中、登校したくない気持ちはよく……。

はあ。

「出てけ」は、さすがに言い過ぎたな。

珀も千尋もいないなら、あの部屋は……。


一体、誰の部屋なんだよ。


おかしいんだ、何かが引っかかる。

何かが、おかしい。

決定的な何かを、オレは見落としている。

早瀬……。

早瀬の言葉は、やはりどう考えても不自然だった。

そして、その後のやってしまったって感じのあの顔……。

オレは、早瀬のところへ向かった。


放課後。

「早瀬、ちょっと付き合ってよ」

「吉岡くん……何よ、どこへ?」

「パフェ、奢るよ。駅前の喫茶店」

「行く!」

いちごパフェをほくほくと食べる早瀬。

「美味い?」

「うんうん♪ありがとう、吉岡くん!ひょっとして、あたしの事が気になりだした、とか?」

「それはないから、安心して」

「あ、そ。まあ、いいわ。で?何なのよ?」

「珀が好きなんだな」

「……好きよ?悪い?」

「自分は珀とエッチした。でも、彼女にはしてくれない。けど、それでも良かった。珀は、彼女を作らない男だと知っていたからだ。それなのに、珀が初めて彼女を作った。そりゃ、気に食わないわな」

「……ええ、そうよ。本当に、冗談じゃない。あの珀が付き合う女だもん。相当落ち込んだけど、それだけいい女だと思った。なのに、相手はあの千尋よ?!信じらんない!」

「で……?何したの?珀と千尋を別れさせようと……」

「……あたしは、何もしてないわ」

「いや、分かってるんだ。もう隠さなくてもいいよ」

「あら、そう。確かにちょっと悪かったかもしれないけど……吉岡くんが申し訳ないって思うのも分からないでもないけど、結局その程度で別れられるって事だったのよ。だから、いいじゃない。全てが丸く収まって」

「オレが申し訳ない?どういう意味?」

「あら、だって知ってるんでしょ?あたしが、吉岡くんと舞先生の関係ばらそうとしてって……」

「はっ?!お前、マジ何言ってんの?!」

「へっ?!え?!だって、あたし……」

「いいから全部話せ!じゃなきゃ、このパフェあと十杯頼んで、全部奢らせてやるっ!」

「分かった、分かったわよー!」

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