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第十五章 何かの間違い!⑥

「やっぱり……珀ちゃん、傷ついてるのかな。一度は関係のあった人なんだもの。そんな人が妊娠したり、結婚したりなんかしたら……」

「それは違うよ。千尋が考える事は、何もないよ」

「何よ、それ」

「少なくとも、もう香夏子さんの話はしない方がいい。過去なんだから」

「……そうね、分かった」

何だか、変なの……。

二人して。

香夏子さんが妊娠したって、そんなに禁句ワードだった?


「ねえ、よっしい」

「ん?」

「あたしね、珀ちゃんの事が本当に大好きなの。でも、せっかく元に戻れたのに、珀ちゃんはあまり幸せそうじゃないわ……」

「それは、千尋の気のせいだよ。珀だって、幸せだよ。千尋の事、本当に愛してるよ」

「そう?よっしいがそう言うなら、間違いないよね。あたし、珀ちゃんの事、信じてもいい?」




――珀……。

無性に、珀に腹が立つ。

お前は、自分でも気付かぬうちに、千尋を裏切って傷つけてるって、どうして分からないんだよ。


「んな事より、千尋、ちゃんとテスト勉強してんの?」

「へ?思い出させないでよ。よっしいのノート貸して!そうね、そろそろ二週間を切ったか。勉強に本腰入れなくちゃ、やばいかもね。よし、食器洗いはよっしいに任せた!今から、珀ちゃんが帰ってくるまで勉強しよっと!」

「珀が帰ってくるまでって……あいつ、別にすぐ帰ってくるぞ」

「じゃあ、珀ちゃんも一緒に勉強タイムよ。補習だけは、絶対に嫌だもん!」



――オレは……。

何、やってんだ。

あんな話の後でいきなり出かけたら、千尋が変に思うだろっつうのに。

猛、尻拭いばっかさせてごめん。

「はあ……」

吐く息が白くて、驚いた。

もう……冬か。

こないだまで、海ではしゃいでたのに。

一年って、こんなに早かったっけ……。



「ただあいま。あれ?千尋が勉強してる……」

「珀ちゃん、お帰り!珀ちゃんってば、もしかして忘れてた?もうすぐテストだって」

「忘れてたってか、まあ、補習受けてるし。てか、オレはマジでやばいかもな。ほとんどまともに、二学期の授業受けてないし。完全に補習組だわ」

「ちょっと、諦めないでよ!珀ちゃんが補習じゃ、あたしチョーつまんないじゃないの!ほら、一緒に勉強しよ!」

「うん……後でな。今、やる気しない」


「珀、ちょっとこっち来い」

「へ、何?」

よっしいが、無理やり珀ちゃんを寝室へと連れて行った。




……何?

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