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年の瀬の夜に Ⅱ

こんばんは、のです。大晦日ですね
今年一年、本当にお疲れ様でした。

今回は、この1週間noteで投稿していた、今年の投稿をまとめた総集編シリーズの最後になります。
“年の瀬の夜に”と題して、年の瀬の夜のお供になれたらという気持ちで、いくつか詞をまとめています。
また、新作も1本収録しています。

すべての詞を見るのも、目次から気になるタイトルをクリックして見るのもいいですし、
読み方は自由なので、ぜひ気軽に閲覧していただけたらうれしいです!



無題

会話というのは見えなくて、
風の様に過ぎていって、
それでも面白くて、
もっといろいろ話したくて、

言葉は凧みたいに浮かんでいくから、
糸を手繰り寄せて、
またひとつ語彙が増えて、
だからもっと話したくて、

ちいさな機械のなかで
おおきな繁茂のなかで
違ってもいい
何から話そう

ちいさな機械のなかで
おおきな繁茂のなかで
違ってもいい
何から話そう


クルーズ

雨の日の片隅の余白に日溜まりを
日照りの揺れる白い面 魚を泳がそう

雪の日の片隅の余白に日溜まりを
いつも見てたいのです  葉を浮かばせたいのです


僕は深々の憂いと
日々の微細をクルージングしてる

炊き上がった歓びが
其処に咲いていないかと

僕は細心に
世界を張り巡らし物を得る鳥の様に

其処に咲いていないかと
クルージングしてる。


春の片鱗

寝入りばなの夜から夢の像が増えてく
山嶺を雲が食べれば
つぎは朝が夢を食べるの

夢のなかで君は春の片鱗を見せた
手を振ったら 春は朝になる
君も朝になる

そして

春の輪郭 街にすこしずつ
散らばっているはずなのです。
蝶々の羽ばたく後に
独特の風の重なり

春の輪郭 冬にすこしずつ
目に見えているはずなのです。
君を夢に見た後に
青色の霧雨を待つのです


異形の織りなす夜に、
熱に溢れている月や、
仮初めは積もりゆくけど
その内来るでしょう朝の光に


長閑に出る言葉に意味を持っては
外に出るのよ


Nostalgie

夜の頭上に花が咲いたら
僕の期待も実がなって
いつしか忘れるような最終地点で話すだろう
この夜に野を越え
もうすぐ言葉は密かな砂あらし
いつしか辿るはずの宿命の森を伝って君へ

誰もいない街を抜け出そう
そうきっと、そうきっと
朝には粒子の部屋から
そうきっと、そうきっと
読み込み中の画面に張り付く
無音の凪に応える
道すがらの情熱は
ぼんやりの日々に火をともす

そう思えば今日が来る
青く色付く日記の文字を
眺め、涙の音がする
それをそっと、また君へ伝え
地平は全ての力を込めて影から
僕や君を見つけ出す
ようやく辿り着いた森から
枝葉と枝葉が耳を打つ

君のいない街を抜け出そう
そうきっと、そうきっと
朝には粒子の部屋から
鍵を閉めて、どこかへ繰り出そう
頭の中の記憶だけの
途方もない道すがらの情熱と
アスファルトの履歴を追う

誰もいない街を抜け出そう
そうきっと、そうきっと
朝には粒子の部屋から
そうきっと、そうきっと
読み込み中の画面に張り付く
無音の凪に応える
道すがらの情熱と
ぼんやりの日々を思えば今日が来る

夜の頭上に花が咲いたら
僕の期待も実がなって
いつしか忘れるような最終地点で話すだろう
この夜を隠す蔦は
立ち竦む森への入り口
この距離感が縮まればいいな
二人のノスタルジー


カプチーノ

柔らかな それは砂鉄の様な星雲
自分もまた そこの一つの星として

朝になったら日溜まりを
カプチーノみたいにコップに入れて

世界の窓を開けて
家々のカーテンを揺らして


そすれば綿雲に座って
街の流れを見てみるの

朝の仕様に変わっていく
仕度をそこで見ているの


道で呟くユーモアを
哀楽を含めた仲睦まじさを

口笛ふいた颯爽を
そんな朝をそこで見ているの


猫と無題

夜の片鱗から目を開けて
昨夜の言葉の糸が舞った
夢に見た或る土地を見た
いつもの朝にさ人が待つ
朝の周りに嘘が散って、
私の口から花弁に似た、
儚い想像、空想の話だけ
空想の話を音符に込めて


そこに花瓶があるだけで
す。花瓶があるだけです
。花瓶があるだけです。

外に出たのは何れの猫だ
けです。何れの猫だけで
す。何れの猫だけです。


例えばあの鉄塔にニャア
ニャア鳴いてるの、夕暮
れにはピカピカするから
ね、優しい光だね。私は
窓から家屋をながめてい
る。いつまでもご飯の匂
いがそこに上っている。


そこに花瓶があるだけで
す。花瓶があるだけです
。花瓶があるだけです。

外に出たのは何れの猫だ
けです。何れの猫だけで
す。何れの猫だけです。


時計がぐるぐる回ってる
。ぐるぐる回ってる。ぐ
るぐるぐる回っている。

私は何を急いでいる。何
を急いでいる。何を急い
でいる。或る猫と無題、

或る  猫と  無題。


翳り

日がじっと照らす街の角にも
翳りはあるの、確かに

日がじっと照らす街の向こうは
翳りだらけなの、きっと


憂いの塊みたいなものを紙に起こしてしまうよ
箱一面の喜びもまた合間に取り込んでいるよ

世界は思う以上に翳りが多いの
それでも笑ってたいの 
笑ってたいの 笑ってたいの


杞憂の塊みたいなものを
雪が降ると感じてしまうよ
冬はまるで尊く、紙一重に寂しいよ

世界は思う以上に翳りが多いの
それでも笑ってたいの 
笑ってたいの 笑ってたいの


日がじっと照らす街の角にも
翳りはあるの、確かに

日がじっと照らす街の向こうは
翳りだらけなの、きっと


日溜まりが気まぐれに移りだす、
翳りのある方、翳りのある方、目指してさ

日がじっと照らす街の向こうに
溢れだしてよ、溢れだしてよ、いつも


12月の独り言

歩く先の石に名前を付けた
雨露に濡れ、そこで雨宿りした
そんな少しの話を持ち寄って
君の元へ帰れればいいのにね

吐く息は彼方に
ぼんやりとくっきりと
青い周りに浮かんでゆく
そんな僅かな話を頭に入れて
君の元へ帰れればいいのにね、過去へ

12月の独り言
形を変えて雨でさえ
通り過ぎたら
遠い記憶の肩ゆらす
街灯だけ
君の輪郭を照らして
笑い合ったね

そうだったね

ゆっくりと水の中のように
海月のように呟いた
騒めきだけが返ってきた

ゆっくりと水の中の中に
散らばる泡に呟いた
騒めきだけが返ってきた

12月の独り言
形を変えて雨でさえ
通り過ぎたら
遠い記憶の肩ゆらす
漂うだけ
魚の影は糸の先
少しずつ引いて
確かめて

12月の独り言
形を変えて雨でさえ
通り過ぎたら
遠い記憶の肩ゆらす
街灯だけ
君の輪郭を照らして
笑い合ったね

そうだったね


夜の魚

あなたのこと、街のなかで、ひと際きらめいてみえる。
辺りはマリンブルーの造形で
そこに入り込む魚になったの。

月夜のしずく、それを餌にして、なにもかも枯れ果てるまで
どこまでも延々と、
泳ぎだす真似、夜の魚だよ


現実的な夢想と、夢想的な現実の間を
漕ぎだした自分たち
夜景の向うを目指して

めくるめくオールを漕いで、
無口な渦を抜けたその先に
何が待ち受けているのだろう。


もうすぐ朝と隣り合わせ
月夜は微細に水面を照らす。

もうすこし旅を続けたい
あなたは言う、26時頃

帆をひろげて、風に沸いた
若々しさを言葉にしてみたい

夜の向うも僕は変わらず
あなたもきっと変わらないのだろう。


月とユリーカ

やるせない星になれたら、そこから何を言うのだろう。
宇宙漂う雲たちに「月の欠片がほしい」と言うのかな。
月の方角を見ると地球の空気感じるよ。

話してみたいどうしても、夜に秘めた僕の言葉
光の瞬く流星か、26時の雨になって、
家の方角を見ながら夜の風をあびている。


思い出の水分を
夜な夜な月が吸い込むから
月のひと欠片ごとに
なつかしい気持ちになってしまうのだろう。

ひとり言も、夢の話も、
夜な夜な月が吸い込むから
月のひと欠片ごとに
なつかしい気持ちになってしまうのだろう。


やるせない星になれたら、なんて言ってみた物の
そこまで今が充実していないわけじゃないのに

思い出だけじゃなく僕でさえも
月に吸い込まれそうになるから

話してみたいどうしても、夜に秘めた僕の言葉
光の瞬く流星か、26時の雨になって、


春雨スープ

インスタントの春雨スープを飲んで、
一息ついたら、隣の家の窓に明かりが、
そうして今日はまた終点へ向かっていくもので、
あっという間なもので。

例年より雪の積もった街も雪解け
街路樹に新芽が顔を出して、春を告げています。
気が付けば、天井を遊泳している抱負などを
すこしずつ摘み取って叶えていきたいものです。


ぷかぷかしたスープの湯気に
ここでやっと冬眠から覚めたみたいに
日々は目くるめく、駆け抜けていきます。

猛烈な寂しさを感じて
加速度を増していく夜の雨みたいに
今、そうして目くるめく、駆け抜けていきます。


インスタントの春雨スープを飲んで、
一息ついたら、夜を纏った瞼に
やっと朝の光を送るのです。

だから春雨飲みたい。
だから春雨飲みたい。


暁闇

扉を閉めたら街は静謐
書く手から踊るよ
文字がとけるよ
何ごとも長く続いた方がいい
望郷。
星は空の水滴のよう

暁闇の通りを
今日も歩くけれど
まだ、あの日の答えを
分からないまま、立ち竦む
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくる
その手から込めるよ
夜の轍を

車の抜けるトンネルで
空気はゆれるけれど
まだ、この夜の空白を
どこか置いたまま眺めている
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくると
願った日々、
打ち解けたい雨の轍と

伸びきった髪は草木みたいに
風に靡いて立ち竦む
風声鶴唳のその刹那が
消える頃、空は明けていく
暁闇の通りを
今日も抜けるけれど
あの日の答えを、それぞれ
持ち寄ったらどこを目指すか


二尺玉

想像上でも 海と空の合間に
二尺ほどの花が咲いたら この距離感に変わりはあるかな
本音も浅瀬で水沫すいまつになるから
温度も空気も ほぐれない侭だな


夏という一つの国で
青はいつでも豊作で、
あちらこちらに実っているはずなのに
僕はいまだにそれに気付けないでいる。


向日葵畑と同じ背丈か
それ以上になっても、
口から発した言葉はいつも
羽根を持たずして散ってしまうから


日影に座る猫の目になって
そこから伸びる空のすべてに
言葉の片がむれをなして
今も泳いでいるのかと


思っているのかもしれないです。
笑い話になれる日を
待っているのかもしれないです。
待っているのかもしれないです。


青と川縁

杞憂の輪郭を麓から浮かべる
川はいつもそこで優しくあってほしい

僕にとって心の原風景には
山並みと青い鳥の鳴く川縁が映るのです


その輪郭と川を下っていけば
夕日が山の頂にちらつき消えました

時間は本当に一瞬だと感じながら
ささやかな青さを掬って、夜をなぞって帰ります


最終地点

最終地点で汚れた靴を洗おう
最終地点で疲れた髪を拭おう

僕らそれが運命だったか
そうじゃないのか分からないけど
星の道を旅していた


固まるだけ固まった未来
青いだけ青かった世界

それが運命だったか
そうじゃないのか分からないけど
そこに居たんだ


窓から光は俊敏になっ て   く
僕は、信じることからはじめなきゃ
君のこと、全てのことに
殻のなか、留まってばかりだったんだね


窓辺の水滴に文を書いてみる

僕は、最終地点に気付けば居たんだ
扉を下りて、点々としたかつての街も
ここでは優しい気持ちになれたんだね


最終地点で汚れた靴を洗おう
最終地点で疲れた髪を拭おう

僕らそれが運命だったか 
そうじゃないのか分からないけど
分からない侭でもいいんだ


Around(新作)

今更引き返そうとは思わないよ
ここまで来たら一直線に行ってしまおう
どこまでも未来の
一握の安らぎに会えるまで行こう
百年先の木々はそれを知っているのか
僕と日々の軋轢だって消え去ってしまう頃
ぼんやりとした言葉と歩き出す
昼下がり

忘れてしまうこと
時が経てば忘れてしまうこと
忘れられないこと
この日射しに思い出したこと
僕の蹲る地平は
記憶の中だけの人の履歴

今更引き返そうとは思わないよ
ここまで来たら一直線に行ってしまおう
どこまでも未来の
一握の安らぎに会えるまで行こう
僕の曖昧な感情は
時に嘘を付いてしまっていた
いつも飛びっきりの言葉を
言ってほしかったんだろうと

次に向かって歩き出したあなたの影を追ってまで
止めたりはしないよ
止めたりはしないよ
僕はここからアラウンド
永久とこしえの感覚を
胸に抱いて一歩踏み出す

忘れてしまうこと
時が経てば忘れてしまうこと
忘れられないこと
この日射しに思い出したこと
僕の蹲る地平は
遠い記憶の中の清廉せいれん

いつの日
かの地平を超えて
時が経てば忘れてしまうこと
いつの日
かの地平を超えて
この日射しに思い出したこと
僕はここからアラウンド
永久の感覚を
胸に抱いて一歩踏み出す


疾走

真っ白な朝を急ぐ 脳はとうに渦をまいて
何も無い無い感情がやがて青を掴むのを期待して

真っ白な朝を急ぐ 脳の憂いも渦をまいて
それすら掻き分けて 走る 走る 走る


夜の焦燥こねくり回して 
どこで線引きするか わすれてしまうほど 
今日の僕はなんだか違う気がする

額汗ばみ 向かう朝の先
今日の僕はなんだか違う気がする 
それも心地いい
渇いた心 まるで水を浴びたみたい


どこまで来たのか いつもと違う世界
僕を手招きした新しい世界
人の波の間 すり抜けて
遠のいていたはずの青を眼下に

息継ぎする毎に 離れた言葉を思い出す
より鮮明に 風に交じって


夜の焦燥こねくり回して 
どこで幕引きするか 二の次になるほど 
今日の僕はなんだか違う気がする

額汗ばみ 向かう朝の先
今日の僕はなんだか違う気がする 

まるで風に乗り
潤んだ心 果実が開けたみたい


真っ白な朝を走る 脳はとうに一つ確かなこと
繰り返し確かめて 話してみる今に 今に


距離感

嘘の話でもいいから 気持ちの沈む夜は
控えめでいいからさ 君の声が聞きたくて
春も夏も過ぎていって 秋も冬もあっという間で
気持ちの沈む夜だから ちょうどよい距離感を
改めて感じたい 

僕の方はというと上手く言葉が返せないけど
これから話すことが一歩先の未来になることを
知っているから 
振り向き様におどけてみせて

あの季節も この季節も 
混ぜ合わせた話を作ろう
暗い扉を朝がノックするまで
二つの心はしずかにゆれる


古くなる記憶が新しいものに変わるとき
隅っこでぼんやりしていた
誰かに会えたりするのかな
懐かしいことばかり そこで話せたら
昔のように分かり合えるのかな


僕の方はというと僕自身にも嘘を付くけれど
それでも未来を向けていると
君はきっと言うからさ
僕もおどけてみるよ ここで笑ってみるよ

あの季節も この季節も 
混ぜ合わせた話を作ろう
暗い扉を朝がノックするまで
二つの心はしずかにゆれる

僕の方はというと上手く言葉が返せないけど
これから話すことが一歩先の未来になることを
知っているから
振り向き様におどけてみせて

あの季節も この季節も 
混ぜ合わせた話を作ろう
暗い扉を朝がノックするまで
二つの心はしずかにゆれる


こだま

纏めの付かない言葉で あの夏を想う
逆立ちしてゆらめく この夏も想う

夕暮れ 散らばる光 散らばっていく光
散らばった侭の光 魚の様に泳いで行った

素直に夜には帰らなきゃだね 
土手で浮かべた表情
何となく何でもない顔をそこで見せた

もっと笑ってみたら 
その途端に時が素早く捲れて 綿毛になって 
どこまでも行ってしまうんだろうって


木霊した夏 水面がリバーブした日々
零した溜め息の数だけ 加速していった日々
面影は薄まったり、また思い浮かべたりして
青すぎた世界を駆け抜けていった

木霊した夏 いつもより水面がリバーブした今日
ここに確かにあった物
紛れもなく煌めいた物


夜には足を急がなきゃだね 
俯きがちになる表情
何となく何でもない顔をここで見せた

もっと笑ってみたら 
その途端に時が素早く捲れて 綿毛になって 
どこまでも行ってしまうんだろうって


時と蝶

年を越える
寒いな 夜を通り抜けて
笑い声が愛おしい 懐かしい
残そう すべて
新しい年が来る 朝に向かい人の歓声
面白い話をしよう 雑談の中

月は静かに
雪降る様を映す
夜の光の混ざる蝶
時間をリセットする
この夜の音

そんな風に話そう
妄想だらけでもいいさ
月は静かに夜を魅せる
白い地面 人の姿

夜の光を纏う蝶
うねる線を空に描き
生まれる新しい時をきらめく

そんな風に話そう
妄想だらけでもいいさ
今だけの時間を
この鐘の音

年を越える
寒いな 夜を通り抜けて
笑い声が愛おしい 懐かしい
また、気付けるさ


比喩じゃない

その僅かに比喩じゃない波打ち際で僕たちは
何を語って、何を感じて、
海に見とれていたのだろう
幸せというのは確かなもので
これからだってそう

夕日の幕が下りるその波打ち際で僕たちは
何かを語って、何かを感じて、
海をながめていたのだろう
水平線に霞むくらい羽ばたく鳥も
これからだってそう

伝えたいことは、脈絡は、
ずっとずっと比喩の中で
気付いてほしい 気付いてほしくない 
果たしてどっちなのか
自分でも分からない 分かってほしい 
どれもきっと等身大
波打ち際の僕たちは静けさに包まれた侭

伝えたいことは、脈絡は、
ずっとずっと比喩の中で
波の近付く、その刹那 掻き消すような波音に
本当のことだけ 本音だけ 
どれもきっと等身大
言ってみたい 
まだぎこちない距離感を破れない侭

その僅かに比喩じゃない波打ち際で僕たちの
夕日の幕が下りるその波打ち際で僕たちの
幸せというのは確かなもので
これからだってそう


到達点

一人はいやだ
そこで寂しい空気の塵を掴もうとした
一人はいやだ
自由なはずの空に嘆いた 空に嘆いた

海の上 浮かぶ月
錆びた言葉 錆びた侭ゆれた
轟音の夜 目にした光は
鯨の様に過ぎていった

飾らない感情を ぎこちない喜びを
帰り道の川の流れのような寂しさから
目が覚めたら ここは楽園だよ
存分に遊びなよ 夢心地の青の中

思い出の繭を破った僕は面影と踊る
事柄の到達点は光に満ち溢れていた
水平線はまどろみ 渦潮は回る
そして夜に火をくべる

思い出の繭を破った華麗な羽根は誰の物
事柄の到達点は光に包まれていた。


October

目が覚めたらいつもと変わらない日々が流れ出す
光をこねる草木と
とぼとぼ髪を靡かせた僕の
生活が歌い出す
波間のように上下に沿う山並みも
ずっとその侭だ

昨日の入道雲とすれ違った
さっぱりした空模様
動物みたいな雲も見られる

僕は無気力に歩く
ぎこちない喜びも手にしながら
空気の踊るような
ギターの音が響く街を歩けば

継ぎ接ぎな言葉でも
僕は思い入れと秋を歌う
この季節の温もりのために
火を絶やさずに
火を絶やさずに

夕方の鐘が鳴ると
カラスの勘が言っている
ゆっくりと急ぎがちな夜のために
火を絶やさずに
火を絶やさずに

昨日の入道雲とすれ違った
さっぱりした空模様
動物みたいな雲も見られる

僕は無気力に歩く
ぎこちない喜びも手にしながら
空気の踊るような
ギターの音が響く街を歩けば


雨の轍

雨の轍消えた此処で
かの日の紅
忘れられないくらいの銀世界の虹
思い出した
君の話一つ聞かせて
嘘でもいいから
君の顔浮かび出した
アスファルトに立つ

ごめんね、そこで言葉の渦に
僕は回って夜な夜などこか
遠くの朝の踊る薫り
そこに居るからそこに居るから
カーテンの前で蹲る僕が重なる地平
君の話一つ数えて
日常の朝


雨の轍消えた此処で
かの日の儚い
忘れられないくらいの黄金の束を
思い出した
僕の話いつの間に翳り
本当の挟間
君の顔浮かび出した
雨上がりに立つ

ごめんね、そこで言葉の渦に
僕は回って夜な夜などこか
遠くの朝の踊る薫り
そこに居るからそこに居るから
カーテンの前で蹲る僕が重なる地平
灰色の壁の向こう
日常の朝


雨の轍消えた此処で
かの日の紅
雨の轍消えた此処で
かの日の儚い

雨の轍消えた此処で
かの日の紅
雨の轍消えた此処で
かの日の儚い


題名のない…

通り過ぎた
焔みたい、赤い、赤い雲
夜の帷と
花の見える川面へ
きっと僕の言葉は泥濘
行ったり来たり、行ったり来たり
それでも伝えたいな
伝えたい


題名のない気分は
今を逆再生して
すべてやり直しそう
題名のない…
題名のない寝言に
例えば、例えば
誰かを思い浮かべて


鮮やかに、鮮やかに
土手から見えたスターマイン
そうきっと知っていたはず
布団に入る前に
電柱、その先を照らす窓、眠る空
そうきっと知っていたはず


題名のない…
題名のない気分は
歌を逆再生して
違って聴こえてきそう
題名のない…
題名のない独り言に
例えば、例えば
意味を任せて

題名のない…
題名のない気分は
今を逆再生して
すべてやり直しそう
題名のない…
題名のない寝言に
例えば、例えば
誰かを思い浮かべて

例えば、例えば
誰かを思い浮かべて
色紙の隅に
書き出してみて


桟橋

桟橋に船が着く頃
夜は徐々に熱帯
眠りの横に流る風を聞き
残る季節を指で数える

この生活の路線図は
膨大でまだまだ端のない
どこまでも道を描ける
そう駆け抜けていく

星羅の夏を響くあの日、花火の音
羽をゆらす鈴虫と隣り合わせ

桟橋に船が着く頃
夜は徐々に薄白を帯び
水面に映る顔を見て
髪が伸びたことに気付く

この生活の路線図は
壮大でまだまだ知らない
どこまでも声は駆ける
そう駆け抜けていく

星羅の夏を響くあの日、漣の音
街の隙間を縫う意味と隣り合わせ

朝陽が昇り
次第にとけ込み
夜の片鱗を持ち寄り
そう駆け抜けていく

朝陽が昇り
次第にとけ込み
夜の片鱗を持ち寄り
そう駆け抜けていく
桟橋に船が着く頃


ただ、春風。

遠い汽車は海岸沿い、あなたを乗せて走り出す
背中にゆれる葉桜の春を影のように落としては
どこまでも見送ったのは、言いたかったことを
言葉よりももっと近付いて伝えたかったから

それは伝わらない、きっと伝わらない、
僕のとっくに錆びついた心の蓋をしずかに開けたのは
紛れもないあなた、紛れもないあなた
車窓にゆられて眠りにつく頃、外は夕凪

今此処で、春の空気をようやく感じる、春の空気をようやく感じる
サイダーみたいに透明な泡が弾けだしていく春の空気を
頬いっぱいに吸い込んでみた
君の街へと、汽車と駆け抜けていく萌芽の風よ

右左に踊る絵空事、胸に秘めているんだ、長らく
いつしか砕けて消えてしまう未来の裏で
再会のコードを弾いているんだ、おそらく
君の街へと、君の街へと、

それは伝わらない、きっと伝わらない、
僕のとっくに錆びついた心の蓋をしずかに開けたのは
紛れもないあなた、紛れもないあなた
宵闇に眠りにつく頃、僕は朝凪

今此処で、春の空気をようやく感じる、春の空気をようやく感じる
サイダーみたいに透明な泡が弾けだしていく春の空気を
頬いっぱいに吸い込んでみた
君の街へと、汽車と駆け抜けていく萌芽の風よ

駆り立てる春の空気は、春の空気は
頬いっぱいに吸い込んでみた僕とあなたの
境界線に、境界線に
夢に似た輪郭を描いて、空に溶けだす東雲色

遠い汽車は海岸沿い、あなたを乗せて走り出す
背中にゆれる葉桜の春を影のように落としては


AM

AM 僕は眠れずに
昨日の終りのことを思い出す
縒れた服の糸をそっとちぎって
ポケットに入れたんだ

ぼんやりと分かっている
でもはっきりとはまだ言えない
朝陽が水平に包まれ
知らない話題も差し込む頃

模型の飛行機に日々を乗せて
想像の中で目を瞑って
限りなく透明な夜の雲を描き起こした
僕の嘘はどこまでが嘘なのか忘れてしまった
宵の川の上を飛んでは
市街を回る、その飛行機

AM 僕は眠れずに
お洒落な夢のことを思い出す
夜に食べたアイスの棒を
今になって捨てたんだ

ぼんやりと歌えるフレーズ
でも合っているかは分からない
リズムの中で目を瞑って
いつしか夜は無限大

模型の飛行機に日々を乗せて
雲の縁から白いペンで
どこまでが同じ雲か、違う雲かを考えては塗り
僕の嘘はいつの日か本当になるのか
思ったりもした
宵の川の上を飛んでは
市街を回る、その飛行機

AM 僕は眠れずに。



閲覧ありがとうございます。

あと少しで今年も終わります。
改めて、今年一年お疲れ様でした。
去年末と同じく、今年も年末にこうした企画や創作を投稿出来て、本当に楽しかったです。

2024年も、こうして継続していけたらと思っていますので、よろしくお願いします。
今年一年、多くの投稿を見ていただきありがとうございました!

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