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[詩集]まなつび

春雨スープ


インスタントの春雨スープを飲んで、
一息ついたら、隣の家の窓に明かりが、
そうして今日はまた終点へ向かっていくもので、
あっという間なもので。

例年より雪の積もった街も雪解け
街路樹に新芽が顔を出して、春を告げています。
気が付けば、天井を遊泳している抱負などを
すこしずつ摘み取って叶えていきたいものです。


ぷかぷかしたスープの湯気に
ここでやっと冬眠から覚めたみたいに
日々は目くるめく、駆け抜けていきます。

猛烈な寂しさを感じて
加速度を増していく夜の雨みたいに
今、そうして目くるめく、駆け抜けていきます。


インスタントの春雨スープを飲んで、
一息ついたら、夜を纏った瞼に
やっと朝の光を送るのです。

だから春雨飲みたい。
だから春雨飲みたい。


昨日も[詩集]まなつび という
同じタイトルの投稿をしたのですが、

今回の詩集は、2部の前後編で構成するという
試みをしてみました。

そしてこちらは後編になります。
前回と同じく
夏へと向かっていく様をテーマにしています。

気に入っていただけたらうれしいです^ ^



Town



雲一つない空に鯨が泳いでいるとは思わず、
意味もなく大きな街へ来たもので、
瞼が夜の底へと下るまでの余暇をここで
過ごすことにします。

この街には、季節の影みたいな言葉と映像が
散らばっているみたいで、
まるですべてがそれで出来ているみたいです。

雨も芯が通っている様に、
心の奥 ノックする様に、
深く深くやってくるのです。


観点が混ざりに混ざって入り組んでいる
幾何学的な街で、
浮かぶ文言すべてが本当とは限らないので、
アスファルトに深く根を張って
ここでは生きていくのです。


どれが本当 どれが違うかも分からない
幾何学的な街に、
呟く言葉はすべてが本当とは限らないので、
兎にも角にも蔦を張って
ここでは生きていくのです。


雑感


言葉の端がうねりだしたら、
紙のなかでさ、うねる先から
作られていくサンゴ礁。
文字で作られたサンゴ礁。


浅瀬から深くまで行くと
黎明れいめいの記録のむれが
冴えた視力で嘘を見抜くみたいだ。


人々のそれぞれの
日々の章節は、はじまりから
変わりが見られるから面白いのです。


そして季節の変わり目には
前の季節のおもかげが
足元辺りに魚みたいに泳いでいるから
そうすると一つ大きくなったと感じるのです。


二尺玉


想像上でも 海と空の合間に
二尺ほどの花が咲いたら この距離感に変わりはあるかな
本音も浅瀬で水沫すいまつになるから
温度も空気も ほぐれない侭だな


夏という一つの国で
青はいつでも豊作で、
あちらこちらに実っているはずなのに
僕はいまだにそれに気付けないでいる。


向日葵畑と同じ背丈か
それ以上になっても、
口から発した言葉はいつも
羽根を持たずして散ってしまうから


日影に座る猫の目になって
そこから伸びる空のすべてに
言葉の片がむれをなして
今も泳いでいるのかと


思っているのかもしれないです。
笑い話になれる日を
待っているのかもしれないです。
待っているのかもしれないです。


湾曲


深々とお辞儀する樹々の何もかも
深々と回り出す夜も何もかも
細々と枝みたいに別れた人のむれと
湾曲する窓の光に鴉が吠える。


凪いで揺れる 凪いで揺れる 
この夜を上手く扱えず かと言って 
下手に眠れぬ侭で 繰り返し 
水を飲み 日向に辿り着こうとする。


想像が翼を持ちすぎている 
この夜を上手く扱えず かと言って 
夢のなか思う様に 旅に出れぬので
眩しい日に いっそ辿り着こうとする。


深々と礼をして どこを目指すの
蔓を手繰っても 答えは分からない様な
夜よ何もかも 飲み込まないで
寂しい街よ 湾曲しないで、


深海魚


幾ら泳いでも、青色は尽きないな
別にいいんだけれど、時に期待が緋色でもいいから。

命纏う銘銘めいめいの魚の眼を見る、
それは疾風でも泳ぎ続けた夢のたぐいです。


星を手招きすることに疲れても、
白夜の微々が汗みたいにこびり付くから。

憂う春の深海から先を見据えて、
夢が爪先から零れるまで。

透明になるふりをしているだけでも、
黎明積る知識の海に辿り着くから。

気まぐれな春の泡から目先の土地に、
爪先から溢れた夢が日溜まりになるまで。


サマーリバーブ


ゆめを見ている。家の近くに昔あったあの畦で
友達と笑っている。夏の日差が暖かい
虫が羽ばたく、それもまた久しい
透き通ってみえる、透き通ってみえる、


いつも心象にあるのでしょう。
それはトロイメライ
蝉の声 リバーブしている。

朱い空の鳥 夕景が窓に
どこまでも続いていく どこまでも続いてよ

いつも心象にあるのでしょう。
それはトロイメライ
夜の音 リバーブしている。

海辺の水鳥 私たちの街
どこまでも続いていく どこまでも続いてよ


花揺る坂を すれ違わないで
待ち合わせする 待ち合わせする
入道雲と曇天が空で混じっている
それを一人で見ていても きっと寂しいから

拙い言葉で それも仕方ないよね
答え合わせする 答え合わせする
ソーダ水と果実をベンチで食べている
変わらず夏のすべてが 音を鳴らして踊っている


閲覧ありがとうございます!

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