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#19. ペルソナの潜在ニーズを把握し、数値化する方法

3C分析-Customer ペルソナのCVCへの落とし込み

3C分析 Customerの全体分析の後の詳細分析、ペルソナの”カスタマイズド・バリューチェーン(CVC)”への落とし込み例を紹介します。今回のnoteは非常に地味ながら、実務家にとっては、大変有意義な内容となるはずです。経験者がどのように思考し、それをどのように落とし込むかを知ることができます。

今回もCVCが中心の話になるので、「CVCって何?」という方は、前のnoteを読んでからお読み下さい。前置きなく、いきなり実例から入っていきます。

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本noteは、ポートフォリオワーカー*になった、外資系IT企業マーケティングマネジャーによる、『初めてマーケティングを学ぶキミに伝える マーケティングフレームワーク活用講座』の連載企画です。

*「ポートフォリオワーカーって何?」は、こちらを参照下さい。自己紹介とともに説明しています。

前回はこちら、最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。
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B2Bオフィス向けIT製品(数百万円程度)CVC

実際にボクが勤務した複数企業で使っていたペルソナ+CVCを、汎用的にしたものです。B2Bオフィス向けIT製品の製品ポジショニングのとりの難しさが、3C Customer分析の段階でわかると思います。難しい理由は最後に説明します。

想定ペルソナのイメージ

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<販売製品>
・情報システムIT部門がデータセンターで導入する製品、単体で使用、ユーザーPCへのインストールなし
・製品価格帯は数百万程度
<マーケット>
・プロダクトライフサイクル*的には導入期後半、まだ成長期に入っていない
・先進大手企業での導入はちらほら出ているが、製品カテゴリー的にもまだ認知度は低い
<想定ペルソナ>
a.効率的なXXの管理を求めている企業のIT部門
b.拠点数が多いと、XXの管理が複雑になっていることが想定されるのでそこがターゲットか?
c.米国本社の導入事例からYY社製品を導入済企業とは相性がよさそう
d.競合として安価なZZ社製品がある、しかしその場合は管理面に不満を持つはず
e.製品カテゴリー認知もまだ低いため、導入前後の手厚いサポートを求められる可能性大
→b.多拠点とd.ZZ社既存ユーザー(or 検討ユーザー)がメインターゲットか?

<潜在製品マーケット規模>
10-20億円(派生サービス含めると40-60億円)、でも実際は半分程度**

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*プロダクトライフサイクル
製品が市場に登場してから退場するまでの間を指し、普通は各製品に対してこの間の売上と利益の変化に着目して最適のマーケティング戦略を構築するための基本的な情報となる。導入期、成長期、成熟期、衰退期で区別(Wikipedia)
**マーケット規模
プロダクトマネージャーの悪いクセで、マーケット規模は大きく書いてしまいます。調査会社のインタビューでも嘘は言いいませんが、”可能性”とか”正確には把握していないが”との枕詞の後に蒸す(ふかす)のは日常茶飯事w、市場予想データの半分程度と見ると結構妥当だったりします。

外資系IT企業の日本オフィスをオープンする際のビジネス概況をイメージして書いてみました。大抵の場合、IT系商社がその製品を海外で見出し、総代理店として日本国内での販売を開始。数年行っていた後に、”これから拡大しそう”と手応えが感じられた段階で上陸してきます。

数年間での日本国内総販売数は、平均販売価格が数百万円だとすると、30セット前後、金額にして3-5億円ぐらい。米国本国では、キャズム*を超えたと確信が持て、米国含むグローバル売上が100M$(100億円ちょい)、ないしは150M$(160億円程度)を達成し、2桁成長なんて当たり前、IPOに向かい、ガンガン売上を伸ばそうと勢いついている段階です。

*キャズム理論
ジェフリー・ムーアが唱えた理論。アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーの間の大きな溝(キャズム)を乗り越えられるかどうかが、その製品が普及するか、一部の新製品マニアに支持されるにとどまるかどうかの一番の鍵となる。(Wikipedia)

プロダクトライフサイクルで言いかえると、導入期と成長期前/中盤あたりに発生する(の~ち注)

想定ペルソナのCVC

この想定ペルソナの全体分析をブレークダウンしたCVCがこちらです。

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このCVCで特徴的なのは、「スペック」「価格」の相対的重要度の低さです。

「e.製品カテゴリー認知もまだ低いため、導入前後の手厚いサポートを求められる可能性大」と想定しているため、エコシステムとしての製品供給体制、バリューチェーンにおける、いわゆるサービス提供体制が重要視される可能性が高いと考えました。そのため、製品のキモである「スペック」、購入者が一番気にすると思いがちな「価格」が、「サービス」「サポート」よりも低くなっています。

B2Bにおいても、「価格」や「スペック」は重要です。

しかし、コンシューマー市場よりは「価格」「スペック」の重要度は低くなる傾向が強いと考えます。B2B製品/サービスカテゴリーは、競合製品との機能差がそれほどない場合が多く、「価格」や「スペック」よりも、バリューチェーンやエコシステムが重要視される傾向が強くなってくるからです。

足りない機能(「スペック」)を「サービス」提供により代替する、力技による提案も可能な場合も多々あります。そういった点からも、VCやエコシステムの充実が、「価格」や「スペック」といった単体要素よりも評価される傾向があるのだと思います。

実際に、「製品はこっちの方が全然いいのに、なぜか売れない」といったこともしばしば見受けられます。

とはいえ、「スペック」は、価値提供のキモです。購入し、実際に使用するものです。CVC内での重要度は”4”かもしれませんが、別の角度から、さらに詳細な検討を行います。

「スペック」の中身、製品/サービスの機能のブレークダウンを行います。

実際の作業は、自社製品機能や他社製品機能を比較して考えるため、この後実施する3C Competitor/Company分析とかぶる内容です。しかし、Customer分析であえて先に実施します。

顧客が「この製品カテゴリの製品なら、この機能は当然あるよね」と考えている、提供されなくてはならない必須の機能があるかを確認するためです。この必須の機能がないために、全体CVC評価が高くても、採用されないこともありえるからです。

これは、B2C(コンシューマー)製品/サービスでも同様だと考えます。実務者としてB2Cの経験はありませんが、エンドユーザーとして自分の行動を客観視してみると、必須機能がないために、「この機能があれば絶対これほしいのに。。。」と泣く泣く購入を断念していることが結構あります。

当たり前のことですが、製品/サービスを購入するのは、期待する価値やベネフィットを得るためであり、それが実現できない場合は、その製品/サービスは購入されません。

その当たり前のことが、3Cやら、SWOTやら、4Pといったフレームワークを使ったプラン策定作業を行っていると、見落とされがちになります。そのためにも、その価値やベネフィットをもたらす機能の有無を予め把握することが重要だと思います。

そのための全般的な機能把握を行います。

機能一覧シート作成

機能一覧シート作成方法は、想定顧客が検討するであろう機能をリスト化するとともに、想定顧客が重要視すると思われる度合いを機能毎に数値化します。CVCからの流れで考えると、このような図になります。

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さらっと、書きましたが、実際、やってみるとこれはなかなか骨の折れる作業です。顧客が求める重要な機能など、どこにも出ていません。

そのため、この作業は、以下のようなプロセスで行うといいと思います。

1.自社製品仕様書やカタログから機能を抜き出す
2.他社製品仕様書やカタログから機能を抜き出す
3.重要だと思われる機能順に数値化
4.この際に、ほかの人の意見も聞けるとベスト

となります。実に泥臭い作業になります。

また、他社製品仕様書はなかなか手に入らないため、ネットを探し回るのは当然として、人づての情報提供を含め、複数手段により入手を試みます。自社製品機能一覧だけでも大変ですが、他社機能も、となるとホント大変です。

この際、仕様書やカタログを丹念に調べることになるので、自社、他社の機能有無の他に、その機能のポイントをメモしておくといいと思います。最低限、○✕△ぐらいの記述は書いておくといいでしょう。次に行う、Competitor/Company分析で行う作業の重複を避けることができます。

この作業が終了すると、顧客が重要視するであろう機能を自社製品が提供できているかどうかがわかります。

図の例では、機能YYYの重要度は”1”と判断されていますが、自社製品ではサポートされていません。顧客がそれに目をつぶってくれればいいのですが、そうならない場合は致命傷になりかねません。この機能がないために、他社製品を採用すると決断されるかもしれません。

SWOTでの作業になりますが、予めこの点は把握しておくといいでしょう。前述した「サービスによる代替」を検討することになります。

B2Bオフィス向けIT製品販売の難しさ

冒頭に書いた、「B2Bオフィス向けIT製品販売の難しさ」ですが、代表的なものを3つあげてみます。

✔顧客ニーズ把握がしづらい
✔ブランド認知が重要
✔機能(スペック)はキモであるが、バリューチェーンの方が重要

『顧客ニーズ把握がしづらい』
市場規模が小さいため顧客ニーズの把握をしようにも、調査費用が出ません。そのためフェルミ推定の如く、調べられるデータをくっつけ、ひっ剥がし、妥当だろうと思う形に仕上げます。そのため、ある程度のデータやプランが出来上たら、エンド顧客に接している営業マンに意見を聞き、内容が妥当かを必ず確認するようにしています。

この際、一人の顧客の意見を鵜呑みにしない、ニュートラルな判断ができる営業マンに聞く、複数名に聞くのも重要です。各人は良かれと思って意見を言ってくれていますが、どうしてもその人個人のベクトルがかかってしまいます。それをなるべくミニマイズする、あるいはミニマイズする意識を持っている人に聞くといいと思います。

『ブランド認知が重要』
B2Bの場合は、ひとりで評価するわけではなく、上司や関係部署の人々が、最終エンドユーザとして、直接、間接的に評価することになります。

この複数名評価を理由に、担当者は、より無難な選択をしがちになります。

不具合が発生した時に、「オマエが、XXを選択したから、このような問題が発生した」と責任を自分だけに押し付けられたくないのです。言われたとしても「XXはマーケットシェアNo.1で、実績も安定性も一番あると判断したので。。。」とより妥当な合理的判断をしたと、カウンターを返せるようにしておきたいものなのです。製品単価も高いですからね。

そのため、市場認知が高いベンダーが選択されやすい傾向があります。誰でも知っているマイクロソフトやシスコといったベンダーが事業の水平展開しやすい理由でもあります。

『機能(スペック)はキモであるが、バリューチェーンの方が重要』
「サービス」「サポート」体制の重要性は前述したとおりです。この「サービス」「サポート」体制ですが、”体制”と書いているぐらいなので、人モノ金がとてもかかります。

そのために、多くの外資系ITベンダーでは、代理店にそれを提供してもらう代理店販売スキームを取ります。そうすれば、体制の部分は、大部分は代理店に任せ、最小限のリソースでオペレーションできます。

そう、ある程度、どれもこれも、どんな製品であれ、同じようなスキームで製品提供できてしまうのです。つまり、製品機能もあまり差がなく、バリューチェーンも差がないので、販売における差別化がとても難しいのです。

プロダクトマネージャとして、自分の知識や経験をどの企業でも活かせる理由ではありますが、その当該製品を売るプランを立てるのが本当に難しいのです。

どこでも通用するスキル、といえば聞こえはいいのでしょうが、当該製品が売れるか売れないかは、プロダクトライフサイクルやその企業がすでに保有するアセット(資産:営業マン、代理店等)だったりが大きく影響します。

なので、それを最大限活用できるようにプランニングするのが腕の見せどころでもあります。しかし、どこの会社でも似たようなプランになってしまうのが悩みどころですw

雑感

今回のnoteは、仕上げるのになにげに時間がかかりました。
・整合性を考えながら書いた
・思考の論理展開が多かった
・実際のマーケティングプランを考えるように書いた
ためです。

PowerPoint作って、セミナーとか人に話しているときは、スムーズに論理展開もできていると思うのですが、書くとなると大変です。

では、音声入力だとスムーズにいくか、というと、そうはならない。
音声入力は音声入力で、マイクを意識してうまくしゃべれないし。。。

まだまだ修行です。

P.S.あっ5400字も書いてた。時間かかるはずだわ。。


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