きっかけは、デッドボール
彼は、私にとって、はじめての人だった。
彼との出会いはもう十年も前のことになる。
高校二年生の時、同じクラスになったことがきっかけだった。
「どうも! 石山です! よろしくおねがいします」
教室の一番後ろの席で元気よく挨拶された。運動部らしく腰から綺麗にお辞儀をして右手を差し出すその姿は彼のまっすぐな性格を表しているかのようだった。そこから上目遣いでこちらを見上げるその笑顔はちょっぴり、私のタイプだった。
男子はもちろん、同じ陸上部の友人でさえも私のことを『丹羽さん』と敬