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昔、書いた落書き

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2019年11月まで、mixi、Yahoo!ブログ、Bloggerなどに載せていた 小説や詩のようなもの掘り起こして載せています。 (『ガムテープ女』が最後の作品です。)
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#創作

『チャンスは一度きり』

研ぎすまされた心で俺を感じ取れ この場所で闇よりも深く潜んで待っているから あの星が3回続けて瞬いたら せぇののタイミングで息をとめて目を閉じろ 俺は風に紛れてそっと近づき 軽くふれるだけのキスをしてまた姿を消す 気配はあえて消さないでおく チャンスは一度きり 簡単なことだろ?

『月夜のドライブ』

真っ直ぐに伸びるこの道は 空と交わるところでそのまま空へと続き やがて雲間に消えていく お気に入りの歌を口ずさみながら 光よりも速いスピードで駆け抜けよう 遠くに見えていたキミが指差した星が 今にも手が届きそうな程近くに そして僕の車は月と同じ青色に染まる 隣で寝息を立てているキミに 見せられないのが残念だな

『夜の掃除屋』

朽ちた鉛筆のようなビルの群れ 観覧車の一番高いところから見える景色と その向こうの夕焼けとが微妙にずれて見えるのは きっと僕たちの仕業なんだと思う もうじき街は闇に浮かび上がるよ 急いで観覧車から舞い降りよう 壁に貼り付いたたくさんの嘘や言い訳やうわべだけの愛を 朝が来るまでに剥がすのが僕たちの仕事 ところどころに埋もれている真実を大切に大切に 胸のポケットに忍ばせていることは誰にも秘密だよ

『深青』

空と海の狭間の曖昧な部分で 浮くに浮けない沈むに沈めない僕の記憶が 言いかけてやめた言葉のように 彷徨いながら漂いながら行き場を探している ほんの些細なことでも 意味をもたせてあげることで ある記憶は空高く舞い上がり ある記憶は海深く潜ることができるのだけれど いずれにしてもその青は 深く深く

『因果』

「自分の人生が産まれる前に既に決められていたと知ったら お前どうする?」 友人が突然聞いてきた。 「なんだよ、なに突然へんなこと言い出すんだよ」 俺は笑って答えたが、彼は笑ってはいなかった。 「DNAってのは人間を形成している設計図のようなもの って知ってるか?」 「あぁ、聞いたことあるな」 「自分がいつ何をするのか、そこにすべて書き込まれていたとすると?」 「俺たちは産まれてから死ぬまでのあいだ、自分の意志ではなく 予め決められたことをやっているということか?」 「そうだ」

『プログラム』

満ち足りた空間に漂うボクらは 互いにあらゆる方向を見ながらも不定期に見つめあう それは偶然が生み出す一瞬の出来事のようでいて 実は最初からプログラムされているのかも知れない ボクの中の歯車の回転する速度と キミの中の歯車の回転する速度と それを取り巻く様々な部品の組み合わせによって きっとボクらの動きは決められているのだ 血管を流れる血液の速度でさえも 生まれる前から決められているに違いない しかしキミと見つめあうほんのわずかな時間だけ その流れが速く感

『サンクチュアリ』

神の領域で鳥の目線で 眠らずの森で待ちわびた光で 打ち鳴らされる鐘の音は どこまでも響き渡りて自然と同化する 凛とした空気は凍てつくように冷たく 深呼吸をした僕の喉に一瞬 切り裂かれたような錯覚を感じさせる 考えるのではなく感じるんだ 思い出すのではなく生まれるんだ 遠くから近づいてくる雷鳴とプラズマの匂い 先住民さえ計り知れないところで あの雨はここまで辿り着けるのかい? 僕に尋ねるヘラジカの若い雄

『後ろのドア』

夜中、パソコンに向かっていると、ときどき後ろに気配を感じる。 振り返っても誰もいない。 ただ、後ろのドアが少しだけ開いている。 おかしいな、閉めたはずなのに、、、 閉めなおして再びパソコンに向かう。 しばらくすると、また後ろに気配を感じる。 僕の後ろに何かが立っているような気がするのだ。 恐怖を押さえ込みながら息を整える。 心臓の鼓動がうるさくて少し苛立つ。 意を決して振り向いてみるが当然何もいない。 ただ、後ろのドアが少しだけ開いている。 背筋に冷たいものが走る。 ド

『最後の一発』

弾丸は俺の頬をかすめて背にした壁にめりこんだ。 くっくっくっ。 奴が楽しんでいるのが分かる。 俺は発射された弾の数を数えている。 さっき見たあの拳銃は薬室まで数えて7発装填できる。 あと2発。 もちろん途中で補給していなければの話だ。 撃たれた足をかばいながら壁伝いに奥へと進んでいく。 この暗闇では流れ出す血の跡を追って 俺の居場所を見つけ出すのは難しいだろう。 奴に犬並みの嗅覚があれば別だが。 額からは汗が流れ続けている。 傷ついた足は、いまや火のように熱くなっていて 冷

『明日旅立つ君へ』

離ればなれに生まれた僕らは ある時点で出会いひとつになり そして明日また離ればなれになる 「自分の進みたい道を進めばいいよ」 僕の口から出た、偽りの言葉だ 君はためらいもなく「ありがとう」と言って 僕の手を一度握り締めてから席を立った でも、後ろを向いた君の肩が 小さく震えていたのを僕は知っている どうにもならないことなんて 僕らのあいだにはなかったと思う 僕らは自分たちの意思でこうすることを選んだんだ 追いかけることがかっこ悪いとか 君のために身をひくとか そんな気

『時の迷路』

時の迷路に迷い込んでしまった。 ここでは時系列に時が流れていない。 突然子供の頃に戻ったかと思えば、昨日と同じ体験をしたりする。 夜から朝に一日を遡ることだってある。 この迷路で僕は、子供の頃に亡くなってしまった大好きな祖父母に出会い 飼っている年老いた犬が元気に駆け回る姿を眺め 遠くに転校したきり一度も会っていない友達を懐かしみ 別れてしまった彼女がいつもの場所で僕を待つ姿を見た。 どれももう二度と見るはずのない光景だった。 そしてどれももう取り戻すことのできないものだった

『大きな茶色とこげ茶色の縞々の猫』

一匹の大きな猫が昼寝をしている 茶色とこげ茶色の縞々模様のふとっちょ猫 時々大きな口を開けてあくびをする 手足をぐぅーんと伸ばしながら しっぽをくねくねさせながら 猫は毎日同じ場所で昼寝をしている いつもいつも昼寝をしている まるでそこで昼寝をすることが仕事みたいに みんな大きな茶色とこげ茶色の縞々の猫が なぜそこにいつもいるのか知らない 知っているのは僕だけなんだ ある日、僕は見てしまったんだ 大きな茶色とこげ茶色の縞々の猫が 大きなあくびをしたと

『這う』

気がつくと辺りは闇に包まれていた。 どうやら気を失っていたらしい。 腕を下げた状態でうつ伏せのまま地面に寝転がっていた。 左の側頭部あたりに鈍い痛みがあるがどこが痛いのかよく分からない。 俺は痛む頭に触れようと手を動かしてみた。 さっきからずっと全身に妙な圧迫感を感じていたが やっとその理由が分かった。 腕を伸ばしきる前に冷たく硬い壁のような感触に突き当たった。 腕が動かせる範囲で闇に向かって手を突き出してみたがどこも同じだった。 次に足を左右に開いてみたがやはり壁に阻まれ

『シアワセの定義』

「幸せの定義ってなに?」 「うれしいことが起きることじゃないの?」 「それは定義じゃないんじゃない? 私が言いたいのは、何をもってして幸せと言えるか、よ」 「難しいな、人それぞれなんじゃないかな。 その人が幸せって思ったら幸せなんだろ?」 「例えば?」 「そうだな、、、例えばここに、リンゴが1個あるだろ? これをこうして2つに割って、と。 で、割った1つをキミにあげる。 はいどうぞ、どちらでもお好きな方を」 「ありがと、じゃこっちを頂くわ」 「キミはリンゴが好き