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パキスタンの食肉市場

イスラム教徒が多数を占めるパキスタンでは、ハラール(イスラム教徒が食べることが許されている食材)である羊肉、鶏肉、牛肉が多く生産されているため、パキスタンは世界有数の食肉生産国の一つです。パキスタン料理では、他の南アジア料理とは少し異なり、肉入りカレー、肉入りビリヤニ、ケバブ、串焼きなど、比較的多くの肉料理を楽しむことができます。

パキスタンの肉料理

国際的なハラールの食肉需要により、パキスタンは潜在的な主要畜産国として位置づけられています。パキスタンの食肉用の動物は、ハラーム(イスラム教徒が食べることが許されていない食材)を含む動物飼料を避けて飼育され、イスラム法に則って生産・処理され、イスラム圏での流通に必要な「ハラール認証」を取得しています。これらの食肉はイスラム教徒にとってとても安心できる食材です。

色々なハラール認証のマーク

パキスタンは世界有数の食肉(特に牛肉)の生産・輸出国の一つです。パキスタンからの輸出用食肉は主に生鮮または冷蔵市場に集中しており、そのほとんどは中東諸国に輸出されています。同様の消費パターンが見られるマレーシア、インドネシア、ベトナムなどのアジアの主要市場に輸出を拡大させるためには、冷凍市場をさらに強化していく必要性があります。

パキスタン国内での年間食肉総消費量は 410万トンで、そのうち最も頻繁に消費される食肉は、マトン(ヤギまたは子羊)と牛肉です。パキスタン人一人当たりの年間食肉総消費量は平均 18.59kg で、そのうちマトンと牛肉が半分を占めています。次に占めるのが鶏肉ですが、イスラム教徒が多数を占めるパキスタンでは、豚肉の消費量はほとんどありません。

一人当たり年間食肉消費量

2023年度の経済調査によれば、パキスタンで屠殺された動物の数は、牛、水牛、ヤギはそれぞれ、2550万頭、4500万頭、8470万頭でした。 牛肉と羊肉の生産量についてはそれぞれ、254万4000トンと 79万9000トンでした。周辺国や他国と比較しても、パキスタンはウシ属(牛・水牛)の消費量が多い傾向があります。

パキスタンはウシ属(牛・水牛)の消費量が多い

パキスタンが世界の食肉市場で大きなシェアを獲得するためには、生産や加工における衛生基準の遵守、国際品質基準を満たすこと、冷蔵施設や輸送などの適切なインフラストラクチャーの構築が不可欠です。また、伝染病の発生を防ぐため、予防接種など家畜の健康・疾病管理の確保も重要な要素です。

世界のハラール肉市場は、2024 年までに 3 兆 2,000 億ドルの価値に達すると予測されています。それにもかかわらず、この市場の最大の輸出国はブラジル、オーストラリア、インドであり、ハラール肉の世界輸出トップ5のリストにはイスラム教の国は一つも入っていません。

パキスタン政府は畜産部門の生産性と品質を向上させるためのさまざまな取り組みに励んでいます。パキスタンは、冷凍肉の品質と鮮度を維持するために、効率的なサプライチェーンを確立し、最新の加工施設と技術に投資する必要があるでしょう。

冷凍施設



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