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我が家のナウシカは前3巻だけ16年分古い

ナウシカが好きだ。

ジブリ作品の中でダントツに、
映画冒頭のユパ様とナウシカが抱き合うシーンから
泣いてしまうくらいには、ナウシカが好きだ。

実家には父が集めた
ナウシカの原作漫画が1〜3巻まであって、
読めない漢字もわからない言葉も多かったけれど
子どもの頃から何度も何度も読み返した。

この世界に自分たち人間は害かもしれないと
感じながらも生きることから
逃げ出さないナウシカがカッコ良くて、
彼女を慕う風の谷の人たちが愛おしくて、
好きだった。

高校生になって、
久しぶりに読み返したら、
ずいぶん中途半端に物語が終わっている。
というか、これ、お話の途中では?

我が家にはナウシカの漫画が1〜3巻まであって、
そう、お気づきの方もいらっしゃると思いますが
ナウシカの漫画版は全7巻。

私は10年以上、半分に満たない3巻までを
途中とも気づかず読み返していたらしい。

いやなんでやねん。
気づかんかった自分もなんでやねんやし、
途中で買うのやめた父もなんでやねん。

映画はだいたい2巻までやから
それで満足して買うのやめたのか、
当時父はもう家を出ていたので
理由はわからず終い。

そういう中途半端なところがまったく父らしく、
文句を言おうにももういないことに腹が立って、
それでも憎めないひとだなあと
こちらが戦意をなくしてしまう。
なんにもしなくても、なんにもできなくても
女性が絶えない、父はたぶん
そういうどうしようもなさを抱えた
人だった。
家にいたときや、離婚を聞かされたときは
幼くて分からなかったけど、
大人になってようやく、
もういない父の輪郭がはっきりしてきて
笑ってしまう。

ちなみにいま調べてみたら
漫画版は1994年に完結したらしいので、
もしかして3巻以降買ってないのは
4巻が出る前に家庭不和でゴタゴタして
家に寄り付かなくなったのかも。
それで途中で集めるのをやめたのかも。
ちょっとした探偵気分を味わってしまった。
あー、そうかも!知らんでもよかったかも!
書くことは考えを前に進めてくれる。
良くも悪くも。



なんにせよ揃っていないナウシカをどうしたものか。
いっそ箱入りを買い直そうかと考え、
それではぼろぼろの前3巻がお役御免になって
かわいそやなあ一応父の思い出かなにかも
詰まってるし、とか思い直して、
結局バイトをして小銭を稼ぎ、
私が1冊ずつ買い揃えた。
1冊900円くらいしたような気がする。
とにかく私の時給より高いやんけと
腹立たしかった。

一人暮らしをするとき、
荷物は少なめにと思って
いろいろ実家に置いてきたけれど、
ナウシカだけは手放せなかった。

我が家の本棚に並ぶナウシカは、
そういうわけで前3巻だけ
ずいぶん日焼けしてぼろぼろだ。

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