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くじらの瞳

波打ち際に閉じたままの貝殻が

もの言いたげに落ちていた

そっと拾ってみつめていたら

くじらの瞳に見えてくる

くじらの瞳を見てみたい

何処かで欠けて

打ち上げられたシーグラス

そっと拾ってみつめていたら

くじらの瞳に見えてくる

くじらの瞳を見てみたい

無下な風にさらされて

ひび割れそうな鉄橋下の壁

海深く沈もうとする輝く欠片達

深海より 

体全体でくじらが泳いでくる

海上まで姿をあらわすと

大きく潮を吹き上げた

私の欠けた心の乾きが

大きく満ちていく

彼方から  魚の大群が

キラギラと泳いでくる

彼方から  人波が

潮騒を奏でて打ち寄せてくる

生きる為に 流れていく

心の乾きが薄れていきます

私のわがままな願いは

この大海を

くじらの瞳を宿して

ゆっくりと泳ぎたい

時には潮を吹き

子くじらを連れてゆっくりと

 青い空 

それよりもはるか深い

 紺青の海

あなたのように


ある日暮れ

自分のバランス感覚が失われ

足元に穴が開く

上手く歩けない

くじらの瞳を見てみたい

くじらの瞳を宿らせて

ゆっくりと 身をまかせ

海深く 泳いでいく


ある朝焼け

地上の北風にさ迷い

罪ばかりが鎖の様

くじらの瞳を見てみたい

くじらの瞳を宿したら

ぎゅっと上着を深く被って

ため息交じりの息を

フゥーと吐く

閉じた瞼を開いたら

ゆっくりと

自分の為の一歩を

踏み出してみる

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