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舌鋒。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第256回】

今週は伝説的なプロデューサーであるスティーヴ・アルビニの訃報が届くことになりました。現地時間5月7日に地元シカゴにある彼のレコーディング・スタジオ、エレクトリック・オーディオで心臓発作のために亡くなったとスタッフによって発表されています。享年61歳でした。ニルヴァーナの『イン・ユーテロ』がそのキャリアの代名詞として語られることになりましたが、ピクシーズの『サーファー・ロザ』、ブリーダーズの『ポッド』、PJハーヴェイの『リッド・オブ・ミー』をはじめ、数々の名作が世に残されることになりました。

訃報を受けて、多くのミュージシャンから追悼の声が寄せられていますが、ニルヴァーナのツイッター・アカウントは『イン・ユーテロ』のレコーディング前にスティーヴ・アルビニから送られてきたFAXにして4枚の手紙を公開しています。手紙の内容は自身のこの仕事への認識、レコーディングの方法、ギャランティの考え方など、多岐にわたるものですが、その中には次のような一節もあります。「私は自分がレコーディングしたアルバムで印税を受け取りたくないですし、受け取るつもりもありません。プロデューサーやエンジニアに印税を支払うのは倫理的に擁護できないことだと思います。配管工のように報酬を支払ってもらいたいのです」

彼は次のようにも述べています。「私のポジションのような人にはあなたのバンドと関わったことで仕事が増えるのを期待する人もいます。しかし、私はすでに手掛けられる以上の仕事がありますし、率直に言ってそうした表面的なことに惹きつけられる人たちは自分の仕事がしたい人ではありません。そのことは心配しないでください」ノン・ヴァーヴァルで投機的な物の考え方が趨勢になりつつある昨今の社会で彼の言葉がどのように受け止められるのかは自分には分かりませんが、オルタナティヴという音楽はこうした背景から産声を上げたものであり、スティーヴ・アルビニは紛れもない思想の人でした。御冥福をお祈りいたします。

今週は1970年公開のドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』修復版の配信も開始されています。ピーター・ジャクソンによる修復技術は『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』で驚かされましたが、そうした現代のテクノロジーによってザ・ビートルズの黒歴史として扱われてきた作品がどんな変化を見せるのか、確認したいと思います。

『RADIO NME JAPAN~NEW MUSICAL EXPRESS JAPAN~』放送中
下記以外の27局 日曜日午前4時〜
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※放送局によって時間は変更になる可能性があります。

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