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元老。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第208回】

今週はエリック・クラプトンの来日公演を観てきました。1960年代中盤にロンドンのイズリントンの壁に描かれた落書きの逸話を持ち出すまでもなく、エリック・クラプトンは神とも称される存在であり、ここ日本にもコアなファンがたくさんいるアーティストです。そうした方と較べると、自分はそこまで熱心なリスナーではなかったことは自覚していますが、同じく三大ギタリストの一人であるジェフ・ベックが亡くなった年に通算100回目となる日本武道館公演を行う今回の公演はどうしても観ておきたいと思い、来日公演初日に足を運びました。

だいぶ前からロック・ミュージシャンの高齢化については懐メロなんて言葉と共に揶揄する向きもありますが、エリック・クラプトンという人は若い頃から、当時から見ても何十年前の曲をやることに精魂を傾けてきたアーティストです。そして、今回の来日公演を観て痛感させられたのは、そんな時の試練を超える普遍性を探すクラプトンのアプローチというのは78歳の今が一番似合うということです。78歳とは思えないエレクトリックの“Layla”の演奏にクラクラさせられたのも事実ですが、全体としてはやはりクラプトンの佇まいには2023年の今でしか観られないであろう趣きがありました。それはやっぱりライヴという現場でしか味わえない類のものです。

また、今週はフー・ファイターズがニュー・アルバムからのファースト・シングル“Rescued”をリリースしています。言うまでもなくドラマーのテイラー・ホーキンスが昨年3月に亡くなってから初めてとなる新曲です。公開されてからというもの、何度もリピートしている自分がいます。歌詞は非常にシンプルな言葉で構成されているのですが、その端々からデイヴ・グロールがテイラー・ホーキンスの死をどのように受け止めたのかということを直接的に生々しく伝わってきます。レーベルからのプレス・リリースでも「この一年耐え抜いたすべての出来事対して、残酷なまでに正直で、生々しい感情が露わになっており、同時に音楽、友情、そして家族の癒しの力を示すもの」と評されています。

あと、今週はデビュー・シングル“Nothing Matters”をリリースした新人アーティストのザ・ラスト・ディナー・パーティーが素晴らしいと思いました。ロンドン出身の女性5人組で、デビュー前からニック・ケイヴやザ・ローリング・ストーンズのサポート・アクトを務めていた彼女たちですが、まだまだ未知数なものの、大器の予感を匂わせています。今後の動向を追っていきたいと思います。

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