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隔世。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第232回】


今週はザ・ビートルズが最後の楽曲と評する“Now And Then”が11月2日にリリースされることを発表しました。この音源の存在についてはポール・マッカートニーが今年6月にBBCラジオに話をした段階で明らかになっており、その時点で楽曲の制作にAIが使われていることも明らかにされ、ポール・マッカートニーが改めて声明を発表することになるほど憶測を呼ぶ事態ともなりました。そのことについては、この稿でもAIの使い方について広く誤解があるという観点で触れたりもしました。

“Now And Then”はジョン・レノンが1978年に録音した歌とピアノのデモ音源を基にしたもので、この音源は『アンソロジー』でリリースされた“Free As A Bird”や“Real Love”のデモと共に1994年にオノ・ヨーコから残されたザ・ビートルズの3人に渡されることになりました。当時も曲を完成させようと取り組んだものの、テクノロジー面で限界があったのですが、そこから30年近くが経ち、AIを使うことでピアノとヴォーカルを分離させることができるようになり、今回完成に至ってリリースされることになったというのがリリースまでの大まかな経緯になります。

解散から50年以上を経てオリジナル・メンバーが昔のデモ音源に取り組んで新曲として完成させたという事実の時点で破格のスケールですが、今回の発表で自分がそれ以上に画期的に感じたのは1週遅れの11月10日にリリースされる赤盤と青盤のほうでした。“Now And Then”のリリースについてはAIに関する話が一人歩きするところがありましたが、それもそのはずというか、モノの音源からパートを分離できるというのは、これまでの概念が覆るほどのことです。そして、そのテクノロジーは昨年の『リボルバー』の再発でも使われましたが、ついに聖典とも言える赤盤・青盤の楽曲にそれが使われることになります。具体的には赤盤は全曲がAI技術以降のミックスになり、青盤でも6曲が新たにミックスされるようです。これは今後リイシュー業界全体に大きな流れをもたらすかもしれません。

今週はグリーン・デイが通算14作目となるニュー・アルバム『セイヴァーズ』を2024年1月19日にリリースすることも発表しました。先行シングルとしてリリースされた“The American Dream Is Killing Me”を聴くと、グリーン・デイがバンドとしてギアを入れ替えた兆候を感じます。ロブ・カヴァロがプロデューサーとして参加していることも含めて期待を抱いている自分がいます。

Pic by TheBeatles.com

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