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開陳。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第257回】

今週は本日5月17日にビリー・アイリッシュのサード・アルバム『ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト』がリリースされました。コーチェラ・フェスティバルのDJで新曲をかけてみたり、ゲーム『フォートナイト・フェスティバル』の関連動画で新曲の一部音源が公開されたりというのはあったのですが、昨今のシーンでは珍しく、基本的に事前に先行シングルを一切リリースすることなく、今回のタイミングで収録曲である全10曲が公開されています。ファースト・アルバムをリリースしたのが17歳、セカンド・アルバムをリリースしたのが19歳の時でしたから、本作は20代になってから初めてのアルバムということにもなります。

実際、アルバムの内容はそうした年齢的な要素がかなり反映されたものとなっていて、アルバムの様々な場面でこれまでの2作品では聴けなかったビリー・アイリッシュの声や歌い方を聴くことができます。そうした声の変化についてビリー・アイリッシュはデュア・リパのポッドキャストで事前に次のように語っています。「声が完全に変わることになった。声が変わるのは旅みたいなものよね。ショックでもあるんだけどね。『OK、変わってしまったけど、それが自分にも分かる』という感じだった。変化を受け入れたり、乗り越えたりするのは難しい。『ずっとこのやり方でやっていて、うまくいっていたのに』ってね。でも、それができなくなってしまう」

なので、これまでの作品に慣れ親しんできた人にとっては違和感を感じる部分もあるかもしれないのですが、『ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト』というアルバムはそうしたビリー・アイリッシュの人間としての変化を受け止める/受け入れるための作品なのだと思っています。収録曲では自身がクィアであることも示唆されていますが、ビリー・アイリッシュはそうした変化を、自分自身をこのタイミングで世に伝えないと、身動きが取れなくなってしまうということを重々分かっていたのでしょう。一躍、時代の寵児となって以降、常に正解を出し続けてきたビリー・アイリッシュですが、そういう観点で考えると、やっぱり今回の一手もさすがと言えるものとなっています。

今週はレッド・ツェッペリンのドキュメンタリー映画『ビカミング・レッド・ツェッペリン(原題)』が海外でソニー・クラシックス・ピクチャーズによって劇場公開されることが決定しています。日本での配給元は決まっていないようですが、本作についてジミー・ペイジは3年前に「音楽についてのすべて、何が音楽を動かしたのかについてなんだよ。語り手が出てくるよくあるものじゃないんだ。これはまったく違うジャンルのものなんだよ」と語っています。

『RADIO NME JAPAN~NEW MUSICAL EXPRESS JAPAN~』放送中
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