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矜持。【NME Japan編集長がちょっと思っていること 第242回】

今週はグリーン・デイの通算14作目となるニュー・アルバム『セーヴィアーズ』がリリースされました。『ドゥーキー』から30年、『アメリカン・イディオット』から20年という節目の年にリリースされることになりましたが、そこに向けたバンド側への思いというのは昨年10月にアルバムのリリースが発表された時から感じていました。その時はファースト・シングル“The American Dream Is Killing Me”とアルバム・ジャケットが公開されたのですが、アルバム・ジャケットでは北アイルランド紛争でストリートが燃える1976年の写真が使われていて、ファースト・シングルのタイトルも含めて一つギアが違うことがうかがえたのです。

今回のアルバムを政治的な内容にした理由についてビリー・ジョー・アームストロングは次のように説明しています。「前作『ファザー・オブ・オール…』は政治的にしたくなかったんだ。あまりにもあからさまだったからね。安易すぎるだろ。アメリカにはひどい政治とひどい分断があったからね。でも、今回出すことにしたのは完璧なタイミングだと思ったんだ。しばらく政治から離れていたのは、非難しているだけのCNNの評論家みたいにはなりたくなかったんだよ」

実際、グリーン・デイのこの方向性は物議を醸すことになりました。大晦日に出演した『ディック・クラークス・ニュー・イヤーズ・ロッキン・イヴ』で“American Idiot”の歌詞を変えて、「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」を批判したところ、イーロン・マスクが噛み付いたことは世界的に報じられることになりました。新作には“Living in the '20s”というタイトルの曲もありますが、こうした状況自体が今の時代を象徴していて、それこそまさにグリーン・デイがやりたかったこととも言えるかもしれません。

何度かアルバムを通して聴けましたが、グリーン・デイのらしさと技が光っているアルバムだと思います。イギリスの『NME』も「このバンドの最高のパレットが使われている」と評していました。今年はアメリカ大統領選もありますが、後々になっても2024年の一つの側面を思い出させてくれるそんな作品になるんじゃないかと思っています。

Pic by Emmie America

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