「三振できるうちに」
この春、社会人になる後輩2人と会った。
出会った当時は彼女らは大学2年生。「もう社会人か」2歳差だから社会人になるのは当たり前のことだけど、ちょっとした驚きと感慨を隠せない。
出会いと別れの季節、春。あと1か月もすれば、うちの会社にも新卒が入ってくる。「もう僕らが社会人3年目なんて!」隣に座る同期と話したのも1か月前。きっと1か月後もすぐにやってくるのだろう。「22卒」という言葉すらも身内で使う以外にはほとんど聞かなくなり、死語になる日も近いのかもしれない。
とはいえ、僕らはまだ社会人2年目。仕事に少しずつ慣れてきたとはいえ、まだまだ知識も経験もベテランとは言い難い。ミスをすることも度々あるし、それ以上に学ぶことも多々ある。その度に上司からフィードバックを受けるのだが、「失敗を経験として積ませていただける」と自分を奮い立たせ、血肉にする毎日だ。
もちろん、ミスが続けばそれ相応に落ち込むし、直近、重大な見落としに気づいた際には「仕事、向いていない、迷惑かかる、辞めたい…」と自分を責め続ける負のループに入ってしまった。そんな気分どん底でも、オフィスに行けば同期や「ななめの関係」の先輩がおり、お互いに話す中で気分がほぐれていく。本当にありがたいことだ。
まだ転職もしていなければ、フリーランスや役員など「会社員以外」も経験していない、そんな「井の中の蛙」であり、「空の青さ」も知らない社会人2年目が「会社員でよかったこと」を語るなんて少々おこがましいことではある。しかし、1年11か月のこの会社での社会人経験の中であえて語るとするならば、僕の場合のそれは「打席に立てること」と「同期がいること」だ。
同期の話はまた別の機会にするとして、今回は前者について少し考えてみたいと思う。
「打席に立つ」とは、すなわち「挑戦の機会を得る」ということだ。素振りももちろん大事だが、打席に立たなければどう飛んでくるのかが分からない。反復学習も大事だが、模試を受けなければ自分の相対的な立ち位置が分からない。仕事もそれと同じで、この2年間を振り返ってみても「打席に立」たなければ学べないことだらけだった。
ただ、上司から見ても「打席に若手を立たせる」というのは、なかなかに判断が難しいものだと思う。ここぞという場面で三振するかもしれない。デッドボールで退場という結果となってしまうかもしれない。任せた自分にも責任が来るかもしれない…。「自分だったら後輩に任せられるか」と考えると、少し悩んでしまう部分もある。
そんな中、いまの会社では驚くほどどんどん打席に立つ機会がある。下手をすれば事業全体が止まるような、そんな法周りの重要な部分も実は一部、任せられているほどだ。実は社内に教えてくれる「同僚の先輩」はおらず(かろうじて前任者からのヒアリングはできたが、他の業務との兼務だったため片手間で行っていたとのこと)、行政省庁の指針を頼りとする自学自習+上司とのすり合わせによって改善するという実に「危ない橋」を渡ってきたのだが、「もし三振しても、上司がなんとか同点まで引き上げてくれる」くらいの安心感があり、「若いうちは三振しなくては得られない経験や感情がある」と考える社長や経営陣の意向があるからこそ。そして三振した場合には厳しい指摘が入ることもしばしばではあるが(もちろん、十分な準備をし、三振しない工夫をしていることは言うまでもないが)、「次に三振しないように」フィードバックという形で振り返りの時間を取っていただけている。自分自身の血肉になっている実感がある。
これが会社員以外であれば、例えばフリーランスであれば、状況にもよるだろうが最初から「プロ」としての見られ方。「プロ」にはミスはほぼほぼ許されないし、パフォーマンスが想定よりも低ければ発注を取り消されることもある。そのプレッシャーが心地よい人にはよいのだろうが、毎回それを求められると僕には正直少し厳しい部分もある。
その方法は違えど、「育てる」というプロセス、その中でも特にいまの会社では「打席に立つ」機会が多いこと、これが、社会人2年目の僕にとっての「会社員でよかったこと」だ。
とはいえ、「三振」できるフェーズはそう長くはない。野球でいう8回や9回まで三振が続けば試合に勝てるわけもなく、年次が若いうちだからこそ許されるのが「三振」だ。会社や任せられる業務内容にもよると思うが、広報の先輩と話していて思うのは、Maxでも「20代のうち」がひとつの解であるように思う。30代でミスばかりしている先輩…は近くにいないが、信頼できるか、任せられるかといえば確証を持てない。
この春、社会人になる後輩に「社会人1年目としてやっておくべきこと」を聞かれた際にも、まず出てきたのが「失敗」だった。1年目よりはできることが増えているけれど、やはりまだ「失敗」をすることもあり、数こそ減ったが「三振」してしまうこともある。しかしながら、「三振」によって気を引き締め、自分の癖に気づき、「次は絶対にしないようにしよう」と思うプロセス自体はかけがえのないものだ。社会人3年目も多くの壁にぶつかることは目に見えているのだが、果敢に挑戦し、その結果が仮に三振だったとしても「三振できるうちにできてよかった」と前向きに吸収していきたい。
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