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海の未来のためにできること

 この景色が、いつまでも続きますように。海を眺めながらそんなことを願った。高校生の時から何かに悩んだり、落ち込むことがあると、僕はこの場所に来る。友人と喧嘩をしたとか、仕事がうまくいかないとか、話の内容は様々だが、海は静かに僕の言葉を聞いてくれる。別にアドバイスはいらない。今、思っていることをボソボソと口に出したいだけなのだ。家でもできそうなものだが、海を前にして、小さな声で弱音を吐くことができるのは何にも変え難い。
 海は、いつも変わらずそこにいてくれる。ずっとそう思っていた。でも、海だって疲れるし傷つく。当たり前だが、海は僕だけのものではない。みんなのものだ。僕なんて一人の話を聞くことだって大変なのに、海は一日何人の話を聞いているのだろうか。しかも、日本語だけじゃない。さぞ、多くの言語で話しかけられていることだろう。人間のメンタル的な部分はもちろだが、物理的なところでは、ゴミや油、化学物質を長い間受け止めてきて、僕が見えない部分、いや見える部分でもダメージを受けている。
 受け止めてばかりの海は、いったい誰に相談をしているのかを考えてしまう。僕が想像するのは月だ。月の重力を受けて海は波を打つと聞いたことがある。本当かどうかは知らないが、あんなに大きな海でも、何かに影響を受けているということに安心する。何かしらの方法をとって、月とコミュニケーションをとってくれていたら嬉しいとも思う。重力と波の交流で地球全体を使ってダンスをする海の姿を想像しようとしたが、規模が大きすぎてうまく想像できなかった。海は繋がっているらしいが、僕はそれを実感できないから。
 そう、この実感のなさこそが、気づかない間に海を傷つけてしまう。一人対海。これは比較が難しい。つまり想像するのが難しい。人に注目されるのが当たり前の人、芸能人などの苦労を理解しようとするのが難しいのと同じように。でも、僕らは応援する。一つひとつは小さいが、それが力になると信じているから。
 海の未来のためにできること。個人では小さなことかもしれない。家のゴミを少なくしたり、プラスチックの使用を控えたり、節水したり。一人ひとりができることをしないと、辛い未来になってしまうような気がする。
 僕より後に生まれてきた人たちにも、海で泳いだり、海で恋したり、海に話を聞いてもらったり、一人ひとりの思い出を作ってほしいと願っている。

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