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Fishmansを歌った-CROSSING CARNIVAL'19-

かれこれ17年になる歌唱生活の中で一つ節目になるイベントへの出演が終わった。そしてEmeraldはバンド結成7年目にして、記憶に残る大きなステージを経験しました。

僕はと言えば、嬉しい、楽しい、最高という気持ちの向こう側に、なんとも言えない寂しいような凪いだような不思議な気持ちが穏やかに腰を下ろしています。

しかしながら僕はレーベル代表です。
レポートしますよ!

1.経緯

話があったのは年明け。CINRAの柏井編集長及び編集者の山元さんから、「今年のCROSSING CARNIVALは佐藤伸治さんへのリスペクトを裏テーマにしてやってみたい。Fishmansのトリビュートバンドやらないか??」

との話がありました。

2017年 NEWTOWNに中野出演時の写真(帽子がやばい)

万作さんとは前バンドからの付き合いで、彼のバンドと一緒にツアーしていたりもした仲。有名な特集「音楽をやめた人、続けた人」という長期にわたるドキュメンタリー記事を執筆してくれた仲でもあります。

色々あった前バンド(PaperBagLunchbox)から、日本一のじわじわバンドの名をほしいままにし、堅実にゆっくり活動している現在のEmeraldに至るまで、僕の音楽キャリアの全てを知る人で、確実に温かく、強い愛の深い眼差しで僕と、僕の新しい仲間を見ていてくれた恩人です。

当時やっていたバンドがお互いFishmansフォロワーと言われてたりもしたこともあって結構前から、「何かしたいよね」という話をしていました。

CINRAの万作さんという人は、口約束や発言を反故にしたことが僕の知る中で一度もない人なので、「Fishmansの何かしたい」は多分本気だろうと思っていました。なので僕は個人的に「何かありそうだからそこに向かって少しずつ進んでみよう」という感じでした。

そんな中、僕らはALOHA Fishmansというイベントに出る中で、Polarisのオオヤユウスケさんや木暮さん、HAKASE-SUNと出会います。そして確実にカバー曲を増やして行く中で、少しずつ隠し持っていたFishmansへの愛情を募らせていきました。

そのALOHA FISHMANSの最終回において、Emeraldはアンコール以外全てFishmansの曲を演奏したわけですが、その時披露した「ゆらめき IN THE AIR」を僕と智之が異常なまでに気に入ってしまい。

その後On Your Mindのレコーディング時に、強行スケジュールをおして、屋台骨となるベーシックを録ってみたりもしていたわけです。

そんなこんなのながーい背景があって、今回のオファーをいただいた僕らは、真っ先にカバー配信に向け再びレコーディングに入り、さらに木暮さんとHAKASE-SUNに声をかけました。二人とも二つ返事でOKをくれました。

僕はPaperBagLunchboxの解散後、ベースの藤井智之と話す中で、「Fishmansみんな好きだから、コピーでもカバーでもして遊ぼうよ」って言葉を聞いて、「バンドしいたいなー」と思ってのこのこ会いに行ったのが始まりでした。無邪気なメンバーの音楽愛や憧れが、居心地が良くて救われたのを覚えていて、またゼロから始めてみようかと、気づけばいきなりオリジナル曲でバンドが始まってしまったのです。

不思議な運命に導かれた当日がスタートしました。
9時からしっかり朝練もしてね。

2.会場がでかい - 舞台裏レポート -

よくお客さんで見ていたO-EASTのステージ。裏には大きな搬出用のエレベーター。たくさんの楽屋。久しぶりにOGRE YOU ASSHOLEの出戸くんと話したり、いろんなアーティストと会いました。僕は自分たちの曲は2曲しかやらない状態での出演なので、「今日はFishmansを歌いに来た」という感じで、不思議な感じで、お祭りの舞台裏を楽しみました。浮かれてない感じです。

アナログフィッシュを見にエイジアへ移動すると万作さんが「落ち着いてやるんだよ」と僕以上にそわそわ心配してて、申し訳なくなりました。もうあの頃とは違いますよ。大丈夫です。と言った後、アナログフィッシュを見て泣いてしまいました。

これはもう随分前から僕の歌なのです。
毎回泣いてしまう。

僕は選ばれないまま今も毎日可能性を道端の排水溝に垂れ流しながらいきている。無駄にしないようにと、チャンスを逃さないようにと、キョロキョロ周りを見ながらちょろちょろこぼれ落ちている。悲しいかな気づいた頃には、残り少ない武器を握りしめて立ち向かっている。悪魔のようなものならまだよかったのにって、、、。もうその歌詞だけで涙腺が汚れた涙で渋滞を起こす。

でも諦めることはないし、何が起こるかもわからない。そもそも可能性があってもなくても、やる。可能性は自分で作る。農業だ。

音楽は僕にとってはそういうもの。多くのものを失いながら、なんどもタイミングを逸しながら、与えられたチャンスを台無しにしながら生きてきた自分を心から背中を押してくれる日本の曲は後にも先にも今のところこの曲だけ。いい歳こいて方法論や人間関係の機微を理解した頃には、若い頃のビギナーズラックなどはもう消え失せて、残るのは自力だ。そんな背中を押してくれる音楽。Ryo Hamamotoさんが客席にいる僕に気づいてくれてキュートな笑顔を見せてくれた。佐々木さんも、あとでTwitterで振り返ってくれた。

佐々木さんの曲はノスタルジックで元気、ロックの初期衝動をなんどもなぞりながら、バラードは「過去」を思い出す。みっともない過去を少し美しくしてくれる。限りなくメロウでシンガーとしては唯一無二の歌唱力と浸透力。滑らかでピュアなソングライティング。スティング。

あきらさんはいつだって「今」今この瞬間を歌ってる。鋭く切り取って、残酷なまでに見せながら、それでも生きていこうとする底力を撹拌する言葉をくれる。吟遊詩人。友部正人さんのような。ボブディランのような。甲本ヒロトのような。

バンドとしてはREMのような。

僕は個人的な思い入れもあるので、1バンド目にしてベストアクト。エイジアを出るとき、懐かしい声が??と思ったら、PaperBagLunchboxの曲が、、。いや空耳だろと思ったら、いくつかそんな証言があった。会場のBGMに入っていた様子。CINRAチームの深い優しさを感じてジワリ。Spotifyにも上がっていないような化石のような音源を大事にしてくれていたんだ。素直に嬉しかった。

メンバー各々様々を見て回った様子。

楽屋に帰るとあふれんばかりの人。
曽我部さんも到着して和やかな雰囲気。コーラスのNozomi Nobodyと和やかな談笑をしつつ、パートの確認なんかをしてる。カメラマンのMashikesoもおみそさんも、どこをどう撮るかなんて話をしてる。

自分の周りの人たちが楽しそうなのが、一番嬉しい。

サーキットフェスは色々見て回っちゃうんですが、今回はこの雰囲気を味わおうと、本番まで楽屋にいました。

本番でメンバーがステージセッティングに向かう中、楽屋で所在無さげに一生懸命曲を確認してる崎山くんと言葉を交わして、パシャり。

いや、可愛い。
応援してる。
経験積んで。
すごいアーティストになる姿をイメージした。

3.本番

リハーサルの音だしから湧く客席。
スタートを楽しみにしてる雰囲気が温かかった。
バタバタと転換を済ませていざ出陣。
皆が自分の仕事を全うする本番だったように思う。
ただ夢中に。

Photo by 松尾守(@mashikeso)

崎山くんにバトンを渡して袖から眺めてみた。
客席からも見てみた(お客さんは驚いてた笑)。
僕がいないEmeraldに僕じゃないボーカルが歌っている。なんだか死後の世界を彷徨っているような感覚だった。

実に不思議な体験。
いい演奏していたよ。Emerald!

もちろんわかっていたけどね。

崎山君は見事に歌いあげて、あどけなさも全てありのまま美しくそこに立っていた。応援すべき蒼き才能。大手を振ってこれからの活躍が健やかであらんことを祈った。カチっとスイッチが入って歌に「成る」瞬間が何度もあった。会場全体がそれを受け止めていたし、Emeraldも優しさに満ちたプレイだった。

木暮さんの眼差し、HAKASE-SUNの懐深いサウンドスケープ。
すごい瞬間でしたね。

曽我部さんがやってくる。

気負いなくポンとステージにやってくる。
経験の積み重ねを否応なく感じますね。

コーラスのNozomi Nobodyに主線を歌わせて、自由に歌う曽我部さんのスタイルはソウルフルで温かかった。Emeraldはmotownバンドのようでした。

Photo by 松尾守(@mashikeso)

作品ごとに変容し続けるソウルシンガー曽我部恵一さん。メンバーの中でも僕と藤井智之はフィッシュマンズと同じかそれ以上によくサニーデイを聴いて育ってる。

僕はキャピキャピできない歳だから、穏やかに話していたけども、智之からはキッズ感がバリバリつたわって微笑ましかったし、羨ましかった。

曽我部さんは歌を歌って去って行った。それだけなんだけど、ステージで放つソウルがバンドの髄を引きずり出すような、やばい瞬間が沢山ありました。終演後に会場にいた茂木さんが触れたのは曽我部さんが歌うMAGIC LOVEのアレンジについてでしたね。アレンジはもちろん、演奏も素晴らしかった。

リスペクトに満ちた声色で曽我部さんや崎山君を呼び込み、送り出していたいそっちや智之の声が、急に砕けて近所の友達を呼びに来たクラスメイトのように中野を呼び込む。ノコノコとステージに戻る中野。

死後の世界から戻ったような感覚でした。死後の世界がどんなかは知らないけれど、、。佐藤さんの魂に目が付いているなら、もしかしたらあんな感覚なのかなとか考えていたら、ステージで変な感じになってしまった。集中して2曲歌った。演奏はアレンジがされたカバーだった。バンドとして、ボーカリストとして、魅せるターンだった。

正直自分の出来がどうだったかはわからないけど、大好きな曲を思い切り歌えた喜びを瞬間瞬間で感じることはできた。周りの音も聴けてた。

だけども、途中なんだか切なくなってしまって、少し変でした。
悲しくて仕方ない瞬間があった。SLOW DAYSがとにかく楽しくて、切なかったなあ。

自分の曲じゃないからかもしれないなって思います。

どこまでいっても叶いようのない願いを叫ぶような、なんとも言えない悲しみでした。自分がそこにいないような。存在していないというような悲しみでした。実はそれはこうして書いてる今も感じていたりします。

佐藤伸治さんは昔のインタビューで、ステージで1人になれると言っていたけど、フィッシュマンズの歌に座り込んでいる、寂しさ、動かない空気、孤独、それゆえのまばゆさ。僕はフィッシュマンズのその側面がたまらなく好きだった。それに触れたい気持ちがとても強くありました。あの日感じたものの正体がそれかどうかはわかりません。

最後は「いかれたBABY」サポートメンバーを紹介し、木暮さんとHAKASE-SUNを紹介してから曲が始まる。曽我部さんと崎山君を呼び込んで名曲を味わう。

お客さんの嬉しそうな顔が印象的でした。
優しい大団円。
いかれたBABYで盛り上がる。
ボブマーリーでいうところの
No Woman No Cryですね。

楽しかったし光栄だったし、色々な意味で学びが沢山あった。

でかいステージはふつうに演奏する以上に必要なことが沢山ありそうだ。もっと経験してモノにしたいなっていう気持ちになった。イヤモニだったらもう少し落ち着いて歌えたかなとか。

[セットリスト]

《Emeraldトリビュート楽曲》
1.Smilin'Days Summer Holiday
2.メロディ

《Emerald曲》
3.Heartbeat
4.ムーンライト

《崎山蒼志》
5.救われる気持ち(カバー)
6.チャンス(カバー)

《曽我部恵一》
7.BABY BLUE (カバー)
8.MAGIC LOVE (カバー)

《中野陽介》
9.SLOWDAYS (カバー)
10.ゆらめき IN THE AIR (カバー)

《みんなでトリビュート》
11.いかれたBABY


4.終演後の今思うこと

僕は今回、心ごと体ごとフィッシュマンズに投げ出してみようという試みでした。これには相当な副作用があるようです。自分らしさや築き上げたアーティストブランドという鎧がなければ、関われない音楽だったのがわかる気がします。今までリユニオンでの茂木さんの人選もそこにこだわっていた気もします。

僕が今回行ったトライは、その鎧があることで感じれなかった感動に手を伸ばす禁断の方法であった気がします。その結果、ちょっと見てはいけないものを見てしまった気がしてます。関係者には評価しづらい姿だった気もします。

僕は僕でいる以外道はないし、誰も誰かの代わりにはなれないということや、人生は一回きりなんだなぁという、わかりきったことを強く思う時、その鎧はより強く柔らかく、身体をまとうんだろうなと思いました。

たぶんその事を、本当によくわかっていた作家だったんだろうな。佐藤伸治さんは。そして音楽をとても強く信じていた。

客席にいる自分が喜ぶようなトリビュートを目指すことで、お客さんは楽しんでもらえた気がします。

終演後、茂木さんや柏原さんといった面々、蓮沼執太フィルにゲスト参加していた高野寛さんと写真に収まった。

ボーカリストとしては地名度が低いとか、注目度は低いとか、いい歳だとか、気にしないようにして、胸を張っていたつもりですが、実際リスペクトしかない人達を前に、心はキャピっていましたね。

僕もまだまだ若く、青い。良くも悪くも。
もっともっと音楽がしたいです。
肩を並べていけたらな。
目上のミュージシャンにも僕らのリスペクトがストレートに伝わるといいなぁ。

無駄に尖っていたから、キッズになれる瞬間を味わえなかった青春時代。
若い頃もっとキャピッて無邪気に愛を伝えていればよかった。

僕はと言えば前バンドの終了から復帰まで思いの外時間がかかって、周りのアーティストが登って行く階段を踏み外したまま多くの時間が過ぎた。そして偉大なるベテランと、美しい若手のちょうど狭間のなんとも言えない場所でオールドルーキーのように佇んでる。メンバーの無邪気さが全てです。何度も救われているのです。この美しいバンドをどう広めていったら良いのでしょうか。音楽の神様よ!とは言え少しずつ広がっている。日本一のじわじわ系バンドです。だから願うのと同時に、今に感謝を忘れてはいけないのだ。

「届ける」

そのためならなんでもします。
音楽の神様。引き続き何卒よろしくお願いします。

5.終演後

みんなが和やかに興奮気味に楽屋に集まって写真を撮っていた。前述した「自分がいない感じ」を引きずっていた僕を現実に引き戻すのはレーベル代表としての自分です。細々と動き回り、一本締めをかまし、挨拶をして、急速に現実に帰ってきた。浸っている暇はないのです。しかしながら、大して役に立たない側面もあるので、そこは全てメンバーが分担して助けてくれた。ナイスチームワーク。

Photo by 松尾守(@mashikeso)

木暮さんとは沢山話ができたし、木暮さんとYogeeの素晴らしい演奏を楽しみ。ネハンべースを見て、会場に来てくれた能町さんとメンバーと一緒にアイスを食べた。懐かしの時代に戻ったような。同窓会みたいって能町さんも言ってた。僕は能町さんの新しい髪型が素敵で見とれていました。

力強いサポート面々への感謝と、駆けつけてくれたパートナーと娘。メンバーの嬉しそうな表情を肴に帰ってもう一杯なんて思ったけど電池切れで爆睡。

徹頭徹尾CINRAイズムに貫かれた素晴らしいイベントでした。
改めてCINRAチームへの感謝と敬意を胸に眠りについたのです。
翌朝もリハだったからね。ストイックEmerald。

僕らのフィッシュマンズは一区切り、自分達の曲で、またO-EASTで演奏したいと強く思っています。

Photo by 松尾守(@mashikeso)

7thで顔を合わすサックスの大ちゃんがよく言ってました。

「フェスはご褒美」

ですね。

次に繋げます。

繋がるといいな。
それもお前の仕事だ。頑張れレーベル代表。
自分で歌って、自分でエゴサして(笑)レポートする。
これなんともミュージシャンぽくないけど、
やるっきゃねえ。

長くなりました!
それでは次

5/29の渋谷wwwで会いましょう。

こんなのも決まってます。

見に来てね!!!

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