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乗るべきか、乗らざるべきか、それが問題だ

フランス(プチ)留学2日目。
今日の最大のミッションは、学校から寮までバスで帰ってくること。

◇◇◇

わたしのいる街は、にぎやかなあたりは平地なのだけど、寮のある住宅街の方は丘みたいになっている。
昨日の帰り道、えげつない坂の連続でげんなりしてしまった。
たとえるなら、清水寺の前の、おみやげを売っているあたりの坂が3回くらい出てくる感じだ。
着いた頃には汗びっしょりで髪もぼさぼさ、ひどい有様だった。

いい運動になる…と思えなくもないけれど、毎日この坂を歩くのはちょっと嫌かもしれない。
でもバスに乗るのはなぁ…と抵抗感もあった。

前にトロントでホームステイした時、「乗り方がよくわからない」という理由で、バスやトラム(路面電車)をできるだけ避けて歩いて移動していた。
「歩くの大変じゃない?」と聞いてきたホームメイトに「歩くの好きなんだよね、ハハハ」とつまらない見栄を張ったのは恥ずかしい思い出だ。

でも、今回は歩いてばかりいられない。
トロントは大体が平地だったから歩けたけれど、この街の坂を毎日歩くなんてあまり想像したくない。
それに、いつまでも異国でバスに乗れないまんまの自分でいていいのか?よくないよ!!と思ったので、今日は試しにバスで帰ってくることにした。

◇◇◇

バスが出るはずの駅の中で、わたしは立ちつくしていた。
駅までは順調にトラムで来れた。
駅に着いてからバス停と書いてある方に来たはずなのに、わたしの目の前には、なぜかメトロ(地下鉄)。
階段を下りながら「なんで地下に行くんだろう?」と思っていたけど、メトロだったらそりゃあ地下に行くよな。

しかも、駅にWiFiが通っていなくて、学校か寮に聞いてみるのも難しそうだ。
ひりひりと焦りが強くなってくる。
ちょっと落ち着こう、と壁に貼られた地図を見ながらぼーっとしていたら、

お手伝いしましょうか?

仕事帰りと思しき女性が、声を掛けてくれた。
「ここに行きたいんです…」とバス停の名前を見せたら、「バスはこっちだよ」と連れていってくれた(結局、全然違う方向にバス停があった。なんで?)。

バス停からはたくさんのバスが出ていて、ひとつひとつの路線図を見ながら乗るべきバスを探してくれた。
ちょうど見つかった時には発車直前で、早口で「merci, merci beaucoup madame」と大声で言って別れた。

乗ってしまえばすることもなくて、あんなに苦労した坂道をすいすいと登っていくバスが頼もしい。
10分くらいで到着した。

今日も人の優しさに助けられた。
直接お返しすることはできないだろうから、わたしも誰かに親切にするよ…困ってそうな人がいたら声を掛けてみるよ…ほんとありがとう…。

さてさて、バスの値段は1回1.9ユーロ。
毎日乗るにはちょーっと高いような気もして、あとやっぱりいい運動になるような気もして、毎日バスで帰ってくるかどうかはまだ迷っている。

でもバスに乗れたのは、一般にはしょぼいけどわたしにとっては大きな一歩だから、乗って帰ろうかな。
それに、バスで帰っていたら、仕事帰りの彼女にまた会えるかもしれないし、ね。

最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。