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時短料理とシンプルな暮らし

近ごろ、時短料理が人気です。テレビを見ても、ネットを見ても、思わず目を引かれてしまうのが時短料理。それだけ忙しい人が多くて、料理に時間をかけられないということなのかもしれません。

実際、レシピ開発をご依頼くださるクライアント様方からも、「なるべく時短で」「できるだけ簡単な料理を」とご要望をいただくことが少なくありません。オンライン料理教室などでも、今はやはり時短料理が一番人気のようです。

私自身、子育て中の身で日々時間に追われていて、また仕事の勉強にもなるので、望むと望まざるとにかかわらず時短調理や時短料理について考える機会が増えました。実は最近も、時短調理とタイムパフォーマンスに関するコラムを書き上げたばかり。

ひと口に「時短」といっても、人によってやり方はいろいろあります。

献立そのものをラクにする方法。便利な調理器具を使って、手際よく調理できるようにする方法。調理の工程を大幅に省けるような裏ワザ的な知恵を駆使したり、味つけに工夫する方法。そして、食事の支度そのものをラクにできる、ミールキットや市販品、お総菜や宅食を利用する、などなど。

いずれにしても、その人その人に合ったやり方を見つけるのが一番。でも、そのどれもに共通するのは、結局自分にとっての「ノルマ」を少なくするということだと思います。

「夕飯なんだから、品数をもう少し多くしなくちゃ」
「子どものために、もう一品野菜のとれるおかずを作ろう」

毎日黙々と食事作りを続けていると、知らず知らずのうちに、自分で自分にそんな「ノルマ」を課してしまっていることに気づきます。

よくよく考えてみれば、なにもその日の一食だけをそんなに頑張らなきゃいけないわけでもないのです。

みんなが疲れて帰ってくる夕飯は、とりあえずお腹がいっぱいになるものがあればいい。野菜が少ないと思ったら、また明日以降、ちょっとでも余裕のある時に野菜多めの料理を出したらいい。一食買ってきたもので済ませて、まずは休んだらいい。

けれど、時間に追われていっぱいいっぱいになっている時は、もうすでに心も体も、そして頭も疲れ切っているので、そういうことを忘れがち。

たぶん、料理の腕などにかかわらず、普段自分と家族のために、懸命に食事作りに向き合おうとしている人ほどそんな「ノルマ」と戦い続けているような気がします。

そこで再び、時短料理の話。

家庭と仕事、その両方で時短料理に取り組んでいて、ふと腑に落ちたことがあります。それは、時短料理を突き詰めていくと、ものごとがどんどんシンプルになっていくかもしれないということ。

たとえば、材料。基本的に、少ない時間で一品作るためには食材はできるだけ少ない方がいいし、調味料だってシンプルなほうがいい。手順も、できれば少しでも無駄なく動けるようにしたい。

必要のない材料やアクションは、とにかくできるだけ削ってしまいたい。そう考えていくと、なんだか徐々に頭の中がすっきりしてきて、レシピを書くにも、レシピを作るにも、そのつど落ち着いて迷いなく動けるような気がしてきました。

もともとレシピを書く仕事をしているので、無駄な材料や手順は極力入れないように気をつけてはいたけれど、まだまだできることはたくさんある気がする。少なくとも、仕事でも料理をしている私は、少しじっくりとそれを考えることができる。

少なくとも、時短料理は手抜きではない。むしろ、いま一度目の前のものを見つめ直して、必要のないものを断捨離するための良い機会にだってなる。

この間noteでつぶやいた、生ズッキーニのしょうがナムル

ちなみに私の場合の時短の秘訣は、食材ひとつ、食材ふたつ、そんなシンプルなレシピをたくさん持つということ。特に野菜を使ったものが多いけれど、いずれも隙間時間にちょこっと作れるものばかり。

自分がそういうおかずが好きというのもあるけれど、副菜が冷蔵庫にちょこちょこあるってちょっとした安心感につながります。とりあえず副菜さえあれば、あとはメインを考えればいいから。

メインおかずに使うのは、だいたいたんぱく質。凝った料理でなくても、納豆や豆腐、簡単な炒めものなど添えるのでもOK。そこに野菜の副菜が少しでもあれば、全体として栄養バランスも整うし、何よりごはんを食べるときの幸せ感がすごい。



自称「怠け者」なわが家の家人は、ラクをするためにこそ頭を使うという人です。

時には自分で自分を縛り付けていた「ノルマ」を解放し、抱えていた荷物をひとつひとつ下ろしてみる。効率を考えて無駄をなくす、丁寧な作業。

だから(個人的には)
せっかくならば、「時短」という工夫のために、時間をかけたい。

無理のないシンプルさは、究極の洗練されたかたち。本当の時短料理というのは、そうして作られたものだと思うのです。

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