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日本一売り上げている小説家をご存知ですか。

 結論から言うと、東野圭吾先生です。
 もう、かれこれ10年以上前から言われていますね。
 代表作は「百夜行」や、福山雅治さん主演のドラマでも有名な「ガリレオシリーズ」などが挙げられるかと思います。他にもいっぱいありますけどね。

 実際にデータとして見つけたもので、2009年の売上ランキングがこちらの「日経エンタテインメント!」の記事に。さらに、去年ですね、2018年11月25日~2019年11月23日の売り上げデータをまとめてくださった「ほんのひきだし」の記事でも既刊本を含めると堂々の1位になっています。

 1冊本を世に出すだけでも尊敬に値するのに、それがこれほど長く、多数の作品が売れ続けていると言うのは、相当にすごいことだと思います。

 さて、そんな中、今回ご紹介する本はこちら。

『人魚の眠る家』

 こちらも映画化しているので、名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。私は失礼ながら、最近まで知らなかったのですが、このアカウントの最初の記事である人魚姫を読んだ時に、人魚の作品って他にどんなのがあるんだろうかと探してたどり着きました。ただ、人魚は出てきませんでした。

ー作品内容ー
 娘の小学校受験が終わったら離婚する。そう約束した仮面夫婦の二人。彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前だった。娘がプールで溺れた―。病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか―。

ミステリーじゃない!

 そう!ミステリーじゃないです。半分ぐらい読んで気づきました。びっくり。東野圭吾先生なので、完全にミステリーだと思って読み始めたのですが、そういった事件は出てきません。
 ただ、お話の展開の中にミステリー的な技法は用いられており、それによる劇的な効果は描かれていますが、もし、謎解きなどを求めている方は違った!となるでしょう。

 ミステリーが読みたいから、これは読まなくていいやと思われてしまうと困るので、アピールポイントを書きますと、この本は現実世界においても、少なくとも日本ではほぼ全ての人が解決できていない社会の謎を提示してきます。

 それは、脳死です。

どれかを選びましたか?

 少なくとも健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードのどれか1つでも持っている方は全員、自分の臓器が移植に適したまま自分が死んだ際に、提供するかどうかの確認が裏面などに記載されています。
 選択肢は3つ。大体こんな感じです。
1.脳死および心停止の場合提供する。
2.心停止の場合提供する。
3.提供しない。

 去年ぐらいに友人達と飲み会でマイナンバーカードの話になった時、1人の女性が1に丸をつけているという話になりました。
 私はすごいと思ったのですが、彼女は「え、別に凄くないでしょ」という反応だったのが強く記憶に残っています。

この本の中で描かれる大きなテーマの1つが、この選択肢すべてについてです。

日本一売れている小説家だからこそ

 この物語の登場人物たちは、各に自分なりの答えを出していきます。もちろん保留だって答えです。

 ここで面白いと思ったのは、作者である東野圭吾先生は、その問題に関わる様々な人物を描くことで、あえて一つの答えに収束させずに書き切っているように思いました。
 偏見かもしれませんし、例外ももちろんありますが、小説というのは作家の思想や思考がとてもつよく表現される媒体だと思っています。
 だからこそ、作者の答えが見えづらいという部分が、私の中で色濃く見えたのだと思います。

 「あとはあなたの答えを出してみてね」という作品は、好き嫌いがわかれます。どちらが多いかはわかりませんが、映画であれ演劇であれ小説であれ、その媒体の規模が大きければ大きいほど、作中で答えが明示されないことに対する批判というのは必ず出てきます
 もちろん、東野圭吾先生は日本一売れている小説家なのですから、当然です。
 しかし、先生のメインの活躍の場はミステリーであり、ミステリーの読者には幸か不幸か、読みながら謎を解こうとする習性が多く備わっています。そして、売れているので、それが他の小説家よりも遠くまで波及する。そんな作家だからこそ、「あとはあなたの答えを出してみてね」という問いかけを出すことに、より強い意味があるのではないかと考えました。

さいごに

 作品として、心揺さぶるセリフもあり、途中胸の奥が熱くなったり、久しぶりに自分自身もこのテーマについて考えたという点でよい作品だったなという思いはもちろんあります。
 ただ!・・・ただ、東野圭吾先生ってもっと面白かったような気がしてなりません。キャラクターの魅力という部分で、もう少し、好きか嫌いになれる人が欲しかったなあ・・・。
 というわけで、いつもとちょっと違う書き方をしてみました。

 もちろん、私の感じ方なので、100点満点の人もいるでしょうし、脳死やドナーなどのテーマについて知りたい考えたいという方には、間違いなく面白い作品だと思いますので、ぜひ。




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