「草のみどり」

緑一色の原っぱを踏む。そこにいるアルマジロを探す。
草を掻き分けて、掻き分けても一向に見つからない。
気晴らしに近くの川へ行く。
激しくも緩やかでもない水の流れを四つん這いになりながらまじまじと見つめる。
こうすると、自分が自然の摂理の一部に吸収されているようでなぜか落ち着く。
飽きてきたところで身体をおきあげ、再びアルマジロを探す。
白い綿毛のようなものが宙にゆらゆらと揺れている。それをぼーっと眺めているときにふと思う。
アルマジロってどのくらいの大きさだっけ。
ダンゴムシのような姿形はなんとなくわかるのだが、それがダンゴムシくらいの大きさなのか、それとも、隣の家のドーベル犬のようにものすごく大きいのか。
それをわかってきなくては、探しようがないのではないか。
母に確認するため、家に戻ろうとすると、坂の上から、何かがものすごい勢いで転がってきた。
何かを察知する前に、反射的にのけぞると、奇跡的に避けることができた。
背後の岩に激しくぶつかった音がしたので、恐る恐る振り返ってみると、それは正真正銘の特大アルマジロだった。
いや、アルマジロは本来この大きさで、これが特大なのかはわからない。
けど、特大をつけなくては割に合わないくらい、特大アルマジロだった。
僕はそれを、持参した大きな袋にそーっと入れて、家に戻ることにした。
今夜はカレーかな。

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