ちゃ〜ぼ〜

尻を拭く紙にいいにおいをつけたがる、それが人間

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最近の記事

ビニール傘じゃ足りない

オフトゥンに潜ってスマホを眺める。赤い帽子の配管工が緑の亀に無様にやられる様を見て、乾いた笑いをこぼす。画面を下から上へスワイプ。配管工は消え去り、代わりに自由気ままな猫と飼い主との微笑ましいやり取りが流れる。かわいい。猫をスワイプ。今度は重厚な肉を豪快に炙り、パンで挟んで巨大なサンドウィッチの出来上がり。うまそう。デカ肉サンドをスワイプ。また配管工だ。今度は土管からにょきっと生え出た奇怪な植物に食われ、情けない声を上げている。バカバカしい。スワイプ。 男性の顔が映し出され

    • うきつあそびつ【第一回:エントリー】

      これは何?おはこんハロチャオ!これは第32回日本クラシック音楽コンクール、略してクラコンに伴奏者として挑戦した5ヶ月間の記録です。 たまに勘違いされるのですが、僕は特に音楽の才能とかないです。母親のお腹の中でモーツァルトを聞かされていた訳でもなければ、家族に音楽やっている人間もいないし、正月の格付けチェックの演奏も当てたためしがありません。褒められると嬉しいから、とかそれくらいの気持ちで細々と音楽を続けてきた普通の人です。 そんな僕にとって今回の伴奏は、自分の力量を明らか

      • #05 超気持ちいい

        《又吉直樹 著「火花」を読んで》  「自分らしく生きる」って何でしょうか?一つには「快感を求める」ことなのかもなとこの本を読んで思いました。  快感のツボは十人十色です。例えば僕は卵黄の膜を箸先で突き破り中身がとろりと溢れ出すあの瞬間にえも言われぬ高揚感を覚えるのですが共感を得たことがありません。そういう自分だけのツボが押されるときこそ、人は自分らしくなれるのではないでしょうか。  自分らしさは時に重い鎖となって人の言動を縛りつけます。自分らしさって何だろう。自分という一貫

        • #04 悲喜こもごも

          《ソポクレス作・藤沢令夫訳『オイディプス王』を読んで》 「努力は必ず報われる」力強い響きに心惹かれる人も多いだろう。 流行りのJPOP。前向きな歌詞と明るい曲調で、街中で耳にしただけで元気になれる。 でもこういった底抜けのプラス思考が、現実をどれほど的確に表現しているだろうか。混沌とした現実のごく一部の光だけを切り取った思考はたしかに活力を与えてはくれるが、そんな不自然な活力は長持ちしない。本当に人の心を動かす表現とは何なのだろう。その一つの答えが、本作品に秘められて

        ビニール傘じゃ足りない

          #03 読みたい、伝えたい

          《齋藤孝 著『難しい本をどう読むか』を読んで》 文章の難しさには、「意味のある難しさ」と「意味のない難しさ」がある。前者は、強いメッセージが込められた独特な表現が多い文章で、後者はただ難解であることが目的であるかのような文章。後者の書き手は読者を萎縮させ虚勢を張っているようなものだから、読者はそれを哀れめばよい、と筆者は述べる。 ぎくっ。思い当たる節があった。 高二の秋、所属していた吹奏楽部で、学生指揮者が今後の活動方針を文章で示すという集会があった。僕が示したい

          #03 読みたい、伝えたい

          #02 この広い大空に

          〜外山滋比古著『思考の整理学』を読んで〜 「勉強ができる」と「頭がいい」は違う、という持論を小学生の頃から主張してきた。周囲の人間から前者の意味で後者の形容を受けるたびに嫌な思いをしてきたものだ。 本書の言葉を借りれば、「受動的に知識を得るのが前者、自分でものごとを発明、発見するのが後者」だ。著者はこれらを「グライダー能力」と「飛行機能力」と名付けている。学校は教えに従順にひっぱられるグライダーを尊重し、肝心の自力飛翔能力は管理に不都合として抑圧する。そんな学校を出た僕

          #02 この広い大空に

          #01 人生、山あり、谷あり

          〜星野源『よみがえる変態』を読んで〜 「受験お疲れ」「春休み遊び行こうよ」解放感に満ち満ちた会話が花を咲かせる卒業式前日の教室の片隅で、不合格を確信し暗鬱の沼に嵌っていた僕は文庫本に顔を埋 (うず)めた。 「おっぱい」第一章のタイトルが目に飛び込む。「落ち込んだときは『おっぱい揉みたい』と声に出すといい」くだらないなあと苦笑しつつもやってみたくなり、しかしその場で実践する訳にもいかないので、触れたこともない女性のおっぱいに顔を埋める妄想をする。するとさっきまで煩わし

          #01 人生、山あり、谷あり