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#01 人生、山あり、谷あり

〜星野源『よみがえる変態』を読んで〜

  「受験お疲れ」「春休み遊び行こうよ」解放感に満ち満ちた会話が花を咲かせる卒業式前日の教室の片隅で、不合格を確信し暗鬱の沼に嵌っていた僕は文庫本に顔を埋 (うず)めた。
  「おっぱい」第一章のタイトルが目に飛び込む。「落ち込んだときは『おっぱい揉みたい』と声に出すといい」くだらないなあと苦笑しつつもやってみたくなり、しかしその場で実践する訳にもいかないので、触れたこともない女性のおっぱいに顔を埋める妄想をする。するとさっきまで煩わしくて仕方なかった級友らの声は遠のき、かわりに経験したことのない温もりが顔まわりをつつみこんだ。すごい。これがおっぱいノイズキャンセリング、略して「ぱいキャン」か。こうして暗鬱の沼から這い出た僕は、翌日の卒業式でちゃんと級友らとの最後の時間を楽しむことができた。
  これから一年弱の浪人生活、本書の源さんのように、エロ・文化・絶望全てと向き合い、心をおっぱいの如く揺らしながら生きてゆきたい。

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