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【第4回】保健所職員の本音から探る一般社団法人による診療所開設~税務上の営利型での診療所開設許可申請の是非~

最近当事務所も一般社団法人による診療所開設の相談が増えています。
これは令和4年に日本法令から「非営利型一般社団法人による診療所開設ハンドブック」(以下、本記事において「非営利型による診療所開設ハンドブック」と書きます)を出版したことも関係していると思います。

非営利型による診療所開設ハンドブックはおかげで大変好評で、最近では非営利型による診療所開設ハンドブックを参考にしている保健所職員も多いと聞いております。
実際に私が保健所に一般社団法人による診療所開設の相談に行ったときも非営利型による診療所開設ハンドブックを参考にしているところがありました。
しかも驚くことに保健所職員向けの専門研修の講師として依頼があり、普段は許可申請を出す立場の私が、許可申請の審査をする側の保健所職員に対して一般社団法人による診療所開設許可について講演を行いました。

この講演をさせて頂いて私が最も良かったと思ったのは保健所職員の本音を少しは知ることが出来たことです。

そこで今回は保健所職員の本音から一般社団法人による診療所開設の今後の展望について考察したいと思います
本記事で取り上げるポイントの1つは税務上の非営利型以外の一般社団法人(以下、本記事において「営利型一般社団法人」と書きます)での診療所開設許可申請の是非です。
保健所職員からも非営利型一般社団法人での開設をお願いしたが断られたとか、営利型一般社団法人では非営利性の担保が不十分では?という意見が多くありました。

まず簡単に非営利型と営利型の違いについて解説しておきます。
以前は一般社団法人・一般財団法人を設立するには主務官庁の許可が必要でしたが、公益法人制度改革により登記のみで一般社団法人を設立できる制度が創設され、2008年12月から施行されています。
これにより現在の一般社団法人は法人税の取扱いの違いで次の3つの区分に分かれます。
なお、本記事において一般財団法人の説明は省略いたします。

・公益社団法人
・非営利型一般社団法人
・非営利型以外の一般社団法人(営利型一般社団法人)

公益認定を受けていない一般社団法人のうち、国税庁が定めた非営利型法人の要件を満たすものを非営利型一般社団法人と呼び、非営利型法人の要件を満たさないものを営利型一般社団法人と呼びます。
なお、国税庁は営利型ではなく、普通法人と呼んでおり、営利型というのはあくまで俗称ですが、本記事においては俗称の営利型を使います。

さらに非営利型法人の要件は「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2つがあります。
一般的に診療所開設許可申請をする一般社団法人は「非営利性が徹底された法人」に該当するはずなので、下記の要件をすべて満たす必要があります。

・剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
・解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。
・上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
・各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。

「非営利性が徹底された法人」の要件

しかし、これはあくまで国税庁が定めた税務上の制度であり、一般社団法人はそもそも非営利法人なので、税務上の非営利型法人の要件を満たす必要はないとして、営利型一般社団法人で診療所開設許可申請をする者が増えているのが今の現状です。

「非営利性が徹底された法人」と営利型一般社団法人の主な違いは下記の通りです。
・解散したときの残余財産の帰属
・理事の定数及び理事の親族要件

なお、本記事はボリュームや内容を考慮して3,000円とさせて頂いております。
また、営利型一般社団法人が非営利性の担保された法人だと信じて疑わない方は本記事を読む必要はございません。


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