西村 公典

東京都港区にある「にしむら治療院」を営んでいます。「正しく身体を読み取ることができれば…

西村 公典

東京都港区にある「にしむら治療院」を営んでいます。「正しく身体を読み取ることができれば、必ず改善へと繋がる」をテーマに触診の勉強をずっと続けています。このページでは機能解剖学の小ネタを載せていきます。

最近の記事

内側半月板のhoop機能

内側半月板の骨への付着内側半月板は、脛骨の上部にある骨への付着部を通じて、膝関節の安定性を保っています。内側半月板の前角と後角は、関節包や靭帯と連続しつつ、骨へ強固に付着しています。この骨への付着部は、半月板が関節にかかる荷重を分散する際の固定点として機能し、適切な位置で半月板が荷重を受けることを可能にします。特に、内側半月板の後根部の付着は、関節の荷重負荷に対抗するための重要な要素です。半月板が脛骨にしっかりと付着していることにより、関節の動きに応じて荷重が分散され、軟骨や

    • 内側半月板の逸脱

      内側半月板と関節包の構造的関連研究によれば、内側半月板は関節包と密接に連続した構造を持ち、関節包は膝関節の安定化に寄与しています。関節包の付着部は場所によって幅が異なり、半膜様筋の付着部の前後で幅が広く、半膜様筋の直上では狭くなることが観察されています。このような関節包と半月板の連続性から、内側半月板の安定性は関節包の構造に大きく依存していると考えられます 。 半膜様筋の関与半膜様筋は関節包の一部を形成しており、その腱鞘は関節包と連続しています。半膜様筋の動きが関節包を介し

      • 脛骨の外方不安定について

        前十字靱帯ACLの機能と膝関節の安定性ACLは、脛骨が大腿骨に対して前方に滑り出すのを防ぎ、また過度の回旋(特に外方への回旋)を制御する役割を持ちます。正常な膝関節では、ACLが適切に機能することで、脛骨が外方に過度に動くことを抑制します。ACLは膝の内側から外側に向かって斜めに走行し、脛骨が外方にずれようとする力に対抗します。 下の画像は実際に来院されていた方のMRIです。 ACL損傷による外方不安定の発生ACLが損傷した場合、その制御機能が失われ、脛骨は外方および前方

        • 半月板逸脱の病態とバイオメカニクス

          半月板逸脱の病態とバイオメカニクス半月板は膝関節の荷重分散と安定性に重要な役割を果たしています。半月板の逸脱により「フープ機能」が低下し、変形性膝関節症(膝OA)の発症や進行の原因になります。半月板逸脱は膝OA患者でよく見られ、関節裂隙の狭小化と強く関連しています。また、症状を悪化させる独立した要因であることが明らかにされています。 逸脱の検出と評価法半月板逸脱は、従来MRIによって評価されていましたが、近年では超音波検査を用いた評価が注目されています。MRIでは膝関節を静

        内側半月板のhoop機能

          前十字靭帯(ACL)損傷と半月板損傷の関係

          前十字靭帯(ACL)損傷と半月板損傷の関係ACL損傷には半月板損傷がよく合併します。受傷時には外側半月板(LM)の損傷が多く、慢性例では内側半月板(MM)の損傷が生じやすいです。ACL損傷による関節の不安定性が続くと、半月板損傷が進行し、変形性膝関節症のリスクが高まります。そのため、ACL再建術を行う際には、半月板損傷も適切に処理することが重要です。 半月板損傷の種類と病態Ramp Lesion(ランプ病変): MMの後節部の関節包付近で発生する損傷で、ACL損傷に合併しや

          前十字靭帯(ACL)損傷と半月板損傷の関係

          半月板損傷についてのまとめ

          半月板の構造と機能半月板は膝関節内で、大腿骨と脛骨の間に存在し、クッションの役割を果たしています。半月板は前後の端である前角と後角が強固に骨に付着し、外縁部は関節包に付着しているため、ある程度の可動性が保たれています。半月板は主に円周方向のコラーゲン線維から構成され、外縁部に向かって薄くなる楔形をしています。この構造により、膝関節に加わる荷重を分散し、安定性を確保します。 半月板損傷の種類と影響半月板損傷には縦断裂や横断裂、後根断裂などの種類があります。 1. 縦断裂:

          半月板損傷についてのまとめ

          肋間筋の筋紡錘を介した反射

          肋間筋は胸郭の上部と下部で神経反射において逆に作用することが知られています。まず基本的な反射について簡単に説明します。 筋紡錘について 筋紡錘は骨格筋内に量と密度の違いはあれ、必ず存在しています。筋紡錘内には筋繊維が存在しており、錘内筋という。 その錘内筋には感覚神経終末が存在しており、筋紡錘が伸長された時に活動する。 この活動によって錘外筋の収縮力が変化したりと重要な役割があります。 詳細についてはまた別のページで記載しようと思います。 緊張性振動反射 tonic v

          肋間筋の筋紡錘を介した反射

          肋間筋の構造

          肋間筋は、肋間隙を充して上下に隣接する肋間同士をつなぎ、また浅層から外肋間筋、内肋間筋、最内肋間筋の三層構造を持つ。 外肋間筋 外肋間筋の後端は肋骨結節付近から始まり、前端は肋軟骨近くに達するが、それより前方は外肋間膜となって胸骨縁に終わる。その筋束は後部では内側頭方から外側尾方に、中部では後頭方から前尾方に、前側部では外側頭方から内側尾方にそれぞれ走る。 内肋間筋 前端は胸骨縁に始まり、後端は肋骨角近くに達するが、それより後方では内肋間膜となって肋骨結節付近に終わる

          肋間筋の構造

          トップアスリートと仙腸関節障害

          我が国における国立スポーツ科学センターにおいて診療が行われた仙腸関節障害を有する選手に対してMRIを撮像し、STIR高輝度変化の有無と症状、有症状期間、種目との関係を検討した報告を紹介します。 下のCT画像は最近来院されたゴルファーの仙腸関節障害です。 参考論文:Magnetic resonance imaging findings related to sacroiliac joint pain in high-performance athletes 高輝度変化を認

          トップアスリートと仙腸関節障害

          仙腸関節の不安定性と靭帯損傷

          仙腸関節痛・骨盤帯痛において靭帯損傷が起こっているという論文をご紹介します。 確かに臨床上でも仙腸関節を取り巻く靭帯の圧痛を評価することで正しく仙腸関節の状態を読み取れているかを確認する行為をよく行います。 参考論文:Sacroiliac Joint Ligaments and Sacroiliac Pain: A Case–Control Study on Micro- and Ultrastructural Findings on Morphologic Alterat

          仙腸関節の不安定性と靭帯損傷

          左右の仙腸関節の動きの連動

          骨盤に対し、左右非対称に荷重する場合、左右の仙腸関節は連動した動きをする。 荷重側の仙骨は尾側に回転する。これによって荷重側のS1の上縁から反対のS3までの斜めの軸を作ります。 この斜めの軸で、荷重側のS3セグメントで後方に、遊脚側のS1セグメントで前方に回転をする。 この斜め軸上の回転は、体幹の逆回転を促し、荷重側の荷重ストレスを減少させる。 荷重側の寛骨は前傾し、遊脚側の寛骨は後傾する。 <iframe width="480" height="853" src="htt

          左右の仙腸関節の動きの連動

          歩行と仙腸関節

          荷重と仙腸関節 参考文献:Function and patomechanics of the sacroiliac joint; A review                   Richard Louis Dontigny 仙骨は荷重側が下方に、非荷重側の仙骨が上方に回転する。 そして仙骨の下方移動に対して脊柱は反対側に回転する。 つまりこの右足荷重による仙骨の右下方回転の場合、腰椎は左側屈する。 Dontigny氏の論文をもとに仙骨の側屈に対する仙腸関節の動きを3

          歩行と仙腸関節

          腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

          腰椎椎間板ヘルニアの治療は、経過とともに症状の改善が得られるために保存療法が第一選択となっています。(2023年時点) その保存療法期間の目安は、脱出したヘルニア塊が自然に退縮する可能性がある3ヶ月前後とされています。 比較的、私の方でも来院頻度の高い腰椎椎間板ヘルニアについて、保存療法を推してはいるものの、外科的な処置が優れている点を参考にしていく必要があるため勉強してみる。 長期的なエビデンスは未だないので両者の比較論文を参考にしたい 保存療法の有効性 手術療法の

          腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

          仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

          仙腸関節の機能解剖これは、立位での体幹屈曲、伸展時における仙腸関節の動きを予測したクラシカルなモデルであるが、裏付けとなる化学的な基礎データはない。 歩行時の仙腸関節の動き

          仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

          骨盤帯疼痛とは

          骨盤帯疼痛は腰痛の特殊な形態であり、腰痛を伴う場合と伴わない場合で分けられます。 疼痛の部位は後腸骨稜と臀部の間、特に仙腸関節近傍に生じる痛みがあり、大腿後面に放散することや恥骨結合の痛みが伴う場合もあるとされています。 参考論文;European guidelines for the diagnosis and treatment of pelvic girdle pain 腰痛、骨盤帯疼痛の有無が骨盤底筋機能の関連性については未だ議論が続いているところのようです。 多

          骨盤帯疼痛とは

          骨盤底機能とその障害

          「女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版」においても紹介されているように骨盤底筋トレーニング(pelvic floor training:PMFT)は女性の尿失禁治療の第1選択として普及してきている。 鍼治療もこのガイドラインに効能の記載があります。 PMFTは1948年にKegelによって考案されました。 参考論文:Progressive resistance exercise in the functional restoration of the perineal

          骨盤底機能とその障害