西村 公典

東京都港区にある「にしむら治療院」を営んでいます。正しく身体を読み取ることができれば、…

西村 公典

東京都港区にある「にしむら治療院」を営んでいます。正しく身体を読み取ることができれば、必ず改善へと繋がるをテーマに触診の勉強をずっと続けています。このページでは機能解剖学の小ネタを載せていきます。

記事一覧

腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

腰椎椎間板ヘルニアの治療は、経過とともに症状の改善が得られるために保存療法が第一選択となっています。(2023年時点) その保存療法期間の目安は、脱出したヘルニア塊が…

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仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

仙腸関節の機能解剖これは、立位での体幹屈曲、伸展時における仙腸関節の動きを予測したクラシカルなモデルであるが、裏付けとなる化学的な基礎データはない。 歩行時の仙…

骨盤帯疼痛とは

骨盤帯疼痛は腰痛の特殊な形態であり、腰痛を伴う場合と伴わない場合で分けられます。 疼痛の部位は後腸骨稜と臀部の間、特に仙腸関節近傍に生じる痛みがあり、大腿後面に…

西村 公典
12日前

骨盤底機能とその障害

「女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版」においても紹介されているように骨盤底筋トレーニング(pelvic floor training:PMFT)は女性の尿失禁治療の第1選択として普及…

西村 公典
2週間前
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骨盤底筋トレーニングpelvic floor muscle training:PFMT

2016年の診療報酬改定で排尿自立指導料が新設されました。 これは、尿道カテーテル抜去後に下部尿路症状を有する入院患者に対して理学療法士または作業療法士を含めた多職…

西村 公典
2週間前
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中殿皮神経(middle cluneal nerve)とその障害

中殿皮神経障害は殿部内側の臀部痛を引き起こすが、個人的には、仙腸関節障害を併発して起こしていると言って良いと思います。 神経の走行を理解するとわかりやすいと思い…

西村 公典
2週間前

上殿皮神経障害superior cluneal nerve disorder

上殿皮神経障害についてもう少し詳しく書いてみます。 2019年の腰痛診療ガイドラインには記載されていない症例ですが、非特異的腰痛の1つとして中殿筋障害や仙腸関節障害…

西村 公典
2週間前
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陰部神経の走行と症状

陰部神経 pudendal nerve 陰部神経叢のもっとも下位にある神経で、S2~4仙骨神経前枝から形成され、梨状筋下孔を通過後、仙棘靱帯・仙結節靱帯の間を走行し、小坐骨孔を介…

西村 公典
2週間前

上殿神経superior gluteal nerveとその症状

上殿神経の走行 仙骨前面より起始し、大坐骨切痕を通過し大転子先端にある梨状窩に停止する梨状筋。 PSIS下端とこの梨状筋の上の隙間(梨状筋上孔)から上臀神経が、梨状…

西村 公典
2週間前

上臀皮神経(SCN:superior cluneal nerve)

SCNは下部胸椎及び腰椎後神経根に起始し、その経路は上内側から下外側へ斜めに走行し、腸骨稜の頭側で胸腰筋膜を貫通したのち正中線から7~8cmを5mm感覚で3本(内側枝、中…

西村 公典
2週間前

仙腸関節の関節面の個体差

仙腸関節は、加齢とともに関節包が次第に線維化して、柔軟性と可動性を失っていきます。 仙腸関節は歩行や成長時の体重増加などに伴う負荷の増大に対して、変性変化に富む…

西村 公典
2週間前
腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

腰椎椎間板ヘルニアの治療は、経過とともに症状の改善が得られるために保存療法が第一選択となっています。(2023年時点)
その保存療法期間の目安は、脱出したヘルニア塊が自然に退縮する可能性がある3ヶ月前後とされています。

比較的、私の方でも来院頻度の高い腰椎椎間板ヘルニアについて、保存療法を推してはいるものの、外科的な処置が優れている点を参考にしていく必要があるため勉強してみる。

長期的なエビデ

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仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

仙腸関節の機能解剖これは、立位での体幹屈曲、伸展時における仙腸関節の動きを予測したクラシカルなモデルであるが、裏付けとなる化学的な基礎データはない。

歩行時の仙腸関節の動き

骨盤帯疼痛とは

骨盤帯疼痛とは

骨盤帯疼痛は腰痛の特殊な形態であり、腰痛を伴う場合と伴わない場合で分けられます。
疼痛の部位は後腸骨稜と臀部の間、特に仙腸関節近傍に生じる痛みがあり、大腿後面に放散することや恥骨結合の痛みが伴う場合もあるとされています。
参考論文;European guidelines for the diagnosis and treatment of pelvic girdle pain

腰痛、骨盤帯疼痛の

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骨盤底機能とその障害

骨盤底機能とその障害

「女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版」においても紹介されているように骨盤底筋トレーニング(pelvic floor training:PMFT)は女性の尿失禁治療の第1選択として普及してきている。
鍼治療もこのガイドラインに効能の記載があります。

PMFTは1948年にKegelによって考案されました。
参考論文:Progressive resistance exercise in the

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骨盤底筋トレーニングpelvic floor muscle training:PFMT

骨盤底筋トレーニングpelvic floor muscle training:PFMT

2016年の診療報酬改定で排尿自立指導料が新設されました。
これは、尿道カテーテル抜去後に下部尿路症状を有する入院患者に対して理学療法士または作業療法士を含めた多職種チームで排尿ケアを行うものです。

包括的な排尿ケアの計画の中で、排尿に関する動作練習と骨盤底筋トレーニングpelviec floor muscle training:PMFTが挙げられている。
参考図書:排尿自立支援加算、外来排尿自

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中殿皮神経(middle cluneal nerve)とその障害

中殿皮神経(middle cluneal nerve)とその障害

中殿皮神経障害は殿部内側の臀部痛を引き起こすが、個人的には、仙腸関節障害を併発して起こしていると言って良いと思います。
神経の走行を理解するとわかりやすいと思いますのでそこから話し始めようかと思います。

中殿皮神経の解剖学

中殿皮神経はS1~S4の後根神経由来の純粋な感覚神経(筋肉は支配していない)です。
仙腸関節の下部を乗り越え、上後腸骨棘PSISと下後腸骨棘PIISの間にある長後仙腸靭帯を

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上殿皮神経障害superior cluneal nerve disorder

上殿皮神経障害superior cluneal nerve disorder

上殿皮神経障害についてもう少し詳しく書いてみます。

2019年の腰痛診療ガイドラインには記載されていない症例ですが、非特異的腰痛の1つとして中殿筋障害や仙腸関節障害などと合わせて腰椎周辺疾患paralumbar spine diseasと称されています。

一般的なマッサージや理学療法で改善することが多く、正確な診断に至らずとも支障がないとも言われているが、画像所見に器質的な疾患(例えば腰部脊柱

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陰部神経の走行と症状

陰部神経の走行と症状

陰部神経 pudendal nerve

陰部神経叢のもっとも下位にある神経で、S2~4仙骨神経前枝から形成され、梨状筋下孔を通過後、仙棘靱帯・仙結節靱帯の間を走行し、小坐骨孔を介して、内閉鎖筋のfaciaと仙結節靱帯からなるAlcock管に入る手前で終枝である下直腸神経、会陰神経と陰茎背神経の3枝に分岐し、会陰部の皮下や骨盤底筋・膀胱、尿道括約筋に分布する。

陰部神経の症状

症状は座位中の臀

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上殿神経superior gluteal nerveとその症状

上殿神経superior gluteal nerveとその症状

上殿神経の走行

仙骨前面より起始し、大坐骨切痕を通過し大転子先端にある梨状窩に停止する梨状筋。
PSIS下端とこの梨状筋の上の隙間(梨状筋上孔)から上臀神経が、梨状筋下孔からは内側より陰部神経、下殿神経、後大腿皮神経、坐骨神経が伴走血管とともに走行しています。

上殿神経(L4~S1)は、中臀筋と小臀筋の間を走行しながら中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋に運動枝を出す。
※感覚神経の上殿皮神経とは異な

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上臀皮神経(SCN:superior cluneal nerve)

上臀皮神経(SCN:superior cluneal nerve)

SCNは下部胸椎及び腰椎後神経根に起始し、その経路は上内側から下外側へ斜めに走行し、腸骨稜の頭側で胸腰筋膜を貫通したのち正中線から7~8cmを5mm感覚で3本(内側枝、中間枝、外側枝)が並んで皮下脂肪層の中を通過している。

従来SCNは腸骨稜からの移植骨採取時の神経損傷を避けることで着目されていたが、近年では慢性腰痛の一因としても注目されている。

MaigneらとLuらはSCNは骨線維トンネル

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仙腸関節の関節面の個体差

仙腸関節の関節面の個体差

仙腸関節は、加齢とともに関節包が次第に線維化して、柔軟性と可動性を失っていきます。
仙腸関節は歩行や成長時の体重増加などに伴う負荷の増大に対して、変性変化に富む関節です。
したがって仙腸関節の形態には個体差が大きい。関節面の凹凸が多く適合性が高い場合もあれば(図の右側)、関節面の凹凸が少なく平面的な形状によって動きの遊びが大きい場合もある。(図の左側)

平面的な関節面を持った仙腸関節の方は、骨性

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