デジタル系技術は怖い…あんなにすごかった着メロは?
タイトル画像:捨てられた自転車に蔦が絡まってる写真
寒い季節なのに、またまたデジタル怪談です。
怖いなー怖いなー、ええ、デジタル技術の話なんですがね。
ふっと見ると、さっきまであんなに賑やかだったのに、もうどこにも居ないんだ。
おかしーなー、自分が見失ったのかなー、と見回しても影も形もない。いったいどこへ行って行ってしまったんでしょう……
着メロ、という一過性のビッグコンテンツ
恐らくそんな領域は山ほどあるかもしれません。
その中で強烈に立ち上げから衰退の体験もできたのが着メロ。
この栄枯盛衰を見ると、デジタルコンテンツの隆盛は本当に早いな、と思います。
着メロの立ち上がり=短音、選択
詳しくはwiki先生にご確認いただくとして簡単に。
下のリンク:ウィキペディアの着信メロディの項目
1996年あたりから、まずはプリセット、サイトからダウンロードできる形で始まりました。
この頃は、シンセサイザーもまだシンプルで単音のもの。メロディだけでしたが、色々と着信相手によって使い分けたり、などと、便利+楽しみも認知されたようです。
着メロのコンテンツ化=自作、配信サービス
数年もたたず、自作の曲の打ち込みができる機種の普及、打ち込みができない人はサイトで人気のデータを購入、と言ったサービスが立ち上がり。
自分もよく人の端末で曲を打ち込んであげました。フリマで暇な人たちから、お金をいただき、鼻歌を歌ってもらってそれを打ち込むこんだこともあります。
着メロのデータ構造は、MIDIの超シンプルなものだったので、音楽屋さんならすぐに対応できてました。
人気曲のデータを紹介する本が350万部売れたり、とかなりのヒットコンテンツを予感させます。
着メロ業界の立ち上がり
96年にはすでにカラオケ業界と、AMEI(社団法人音楽電子事業協会)とキャリアが手を組み、バラバラだったフォーマットの統一や、著作権の管理の仕組みなども整えられます。
そこから、本格的にコンテンツが業界として立ち上がりました。
着メロの高度化=シンセの進化
単音で始まった着メロも、シンセサイザーチップの発展で、まずは3和音が使えるようになりました。ファミコンと同じ。
当然、そこからすぐに16和音、64和音、最終的には128和音。普通にシンセサイザー。
DTMで作曲活動に使えるシンセサイザーとの違いは、波形データのメモリ量。長い波形データは価格を圧迫するわけで、鳴る音はやっぱり少しチープな感じにはなります。
こうなると、編曲、データ作成、といったカラオケ業界がやっていた手法がそのまま使えるため、確かにカラオケ業界が期待するのも分かる。
当然、これを活かしたカラオケコンテンツも立ち上がっていくわけです。
着メロの利点=通信機器に有利なデータ商売
これらのビジネスは、通信業界にとっても、非常に相性の良いものです。
動画データなどは、多くの通信量を必要とします。そのため、当時の通信フォーマットではなかなか事業にするバランスが取れません。時間、コスト、帯域、輻輳問題。
着メロは、MIDIデータと同じ、1音あたりが簡単なデータなので、少ないデータサイズで多くの時間を作り出せる特徴があります。
そんなわけで、キャリアも後押しするわけです。
しかし新たな着○○の出現
音楽表現が豊かに進化していくと、次に考えるのはみんな同じ。ボーカルです。
ここにボーカロイドがあれば、歌データも小さいデータサイズで実現できますが、登場はまだ。
そうすると、普通にCDと同じ、デジタルの音楽データが使われる。
上で、データサイズ問題を解説しましたが、実は通信機器は世代ごとの発展で、通信帯域をどんどん拡大していきました。つまり、音楽データも扱えるようになる。
そうなると、チープなシンセの音より、ボーカル入り音楽を選ぶ人も増えるわけです。しかも、特別に作る必要もなく、そのまま出版される曲を使えば良いわけです。
このあたりから衰退
そこに、スマホの登場。自分で勝手に自分の端末の音楽を設定するなどもできるようになると、もはや着信専用にコンテンツを購入するモチベーションは低下。
いつの間にか、着メロは事業としては独立したものとしては存在できなくなりました。
怖いなー怖いなー。
画像:右肩下がりの棒グラフのイラスト
怖いのはビジネス的な面から見たとき。
ビジネスから見た怖さ
まずは、業界の共通フォーマットを作ったりしたコスト。もちろん、これはビジネス立ち上がりとその後の運営でリクープはできます。
その後、制作体制、販売スキーム等の構築と運用。もちろんこれもそれぞれの領域でリクープはできてます。
でも、コンテンツそのものが受け入れられなくなる時、これらの体制は不要になるわけです。
もし、専業でそこに全振りしていたら、ビジネスが0になる。
こういったことは、アナログレコード、カセットテープ、MD、レーザーディスク、ビデオテープ、など、音関連でもたくさんの事例があります。
これらを考え、ビジネス的に重要な動き方が見えてきます。
画像:カセットテープ、LP、ビデオテープなどのアナログメディアのイラスト
複合化
着メロ、が立ち行かなくなっても、着うた、楽曲販売、と進化していく方向を全部取り込んでいくこと。着メロサイトがそのまま発展したのがSpotifyです、みたいなストーリーだと最高です。
実際には、体制維持をしながら新しい領域に変化していくことはなかなか大変な作業。
横展開
音関連で始まったビジネスを、映像関連、コミュニティ関連に展開していき、そこに常に最新コンテンツを持ってくる。この形であれば、ユーザーグループを囲い込んだまま、扱う内容が変化していくだけですみます。
こちらも、ユーザーの志向をうまくキープしながら変化するのは大変。選ぶ権利はユーザー側にありますので、キラーコンテンツを中心に据えることができなければ、徐々にすたれていく未来も見えます。
バイアウト
一つの事に固執せず、最高値で売れるときに事業を売ってしまう。これは安全度は一番。その後どうなろうと知ったこっちゃない状態になってしまうのです。
もちろん、天井を掴むのはうんとセンスと読みと準備が必要。
詳しくは書けませんが、これをうまくやった事例はかなり近くで見ることができました。
他のデジタルビジネスも同じ構造=技術の向上
着メロのビジネスはかなり急激な立ち上がりと衰退を短期間で見せてくれましたが、他のデジタル系ビジネスも同様です。
注意するポイントは、技術の向上。これが、急激な変化をもたらします。
例えば、デジカメ。フィルムカメラから一気に市場を奪ったデジタルカメラですが、超高級路線を除き、スマホの普及と共にあっというまに市場が壊れていきました。
同様にPCの世界、テレビの世界もスマホの登場前と後では大きく違います。
技術のうちどの要素が支配的か
なにか予想もできない画期的な技術による変化を正しく想像するのは難しいです。
でも、普遍的な技術の変化はこれまでの歴史を見れば分かります。
着メロ、他に上げた例も、実は結構当たり前の技術発展が影響しており、これはある意味読むことも可能。
(1)処理スピードの向上
機器の心臓部のCPUは年々高度に発展していきます。そうなると、扱えるデータサイズが拡大したり、高速な処理ができたり、などが複合してより高度な表現が可能になります。ファミコンから始まったゲームの歴史を見れば明らか。
また、特別なハード無しに実現できる要素も増えます。
(2)通信帯域、スピードの向上
iモードが立ち上がった時の通信速度と5G。もはや桁がいくつも違います。
こうなると、データサイズによる表現への制限がどんどんなくなり、より高度な表現や、モバイルではない世界向けに作られたコンテンツが取り込めるなど、大きくコンテンツも様変わりできてしまいます。
紙芝居で面白かった世界に、ハリウッドのアベンジャーズが出てきたら、恐らく多くの人はそっちに流れるでしょう。
(3)メモリサイズの拡大
シリコンデバイスの発展はドッグイヤー。ものすごいスピードで、扱えるデータをさばくワークメモリのサイズも拡大していきます。これは、(1)(2)の発展を受け止める受け皿の拡大。すべてがセットで動いているので、ここで解説している動きはこれからも止まらないでしょう。
他にも、ビッグデータ、ディープラーニング、AI、クラウド、XR、NFT、など、データ処理系、表現型、運用系、権利系に様々な要素が足されていくのが今のデジタルサービス業界。
ではどうする?
これらの領域は、自分がコントロールできるものでもありません。そうすると、答えは案外簡単。
・専門的でなくてもいいが、最新技術のウォッチ
・常にある程度枯れるまで待ってアイディア勝負
・最先端を自分で作る
などがロジカルに考えられる対応。最先端を自分で作るのは、才能も資金も体制も必要な場合もありますが、上の2つは誰でもできます。
自分の立ち上げ中のビジネスは、この2つめの要素で勝負したもの。
通常のビジネスと同じとはいえ、スピードが速い
これらの考え方。他のビジネスでも類似のベクトルで変化はします。
しかし、デジタル領域はそれが超高速。
そのため、じっくり作り込むビジネスもありますが、クラウドや汎用ライブラリを使い、より短期間で世の中に出して、運用しながらブラッシュアップするような対応も出てきました。
開発手法も、最終系に至る前にどんどん変更しながら運用するアジャイルという考え方が増えています。
とは言え、予想を超える…
一応業界にいて、この辺りの動きは常に見てますが、正確に予測できるのは、「変化するぞ」というところだけ。
ここを押さえつつ、日々変化を想像する必要はありそうです。
結局、「頑張って着いていく」的な雑な結論ですが、真実に近いかも!
まだまだ色々と書きたい記事もあります。金銭的なサポートをいただけたら、全額自分の活動に使います!そしたら、もっと面白い記事を書く時間が増えます!全額自分のため!