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好きな曲を書いてられない職業作曲家は引き出しが大事。その引き出しは「スタイル」で区切る。

タイトル画像:色々なものが整理整頓されて入ってる引き出しの写真

サラリーマンの作曲家をやっていました。自分の好きな曲を作るのではなく、必要な曲を作る。

それまで好き勝手やってた学生時代とはかなり違う環境です。

クライアントはバラバラ

ゲーム会社だったので、発注者はゲームごとに変わります。

ディレクターごとに、どんな曲を想定しているか、本人の音楽的素養は、などが毎度バラバラ。

そこでは、中間にツールを使ったりして意思疎通をシンプルかつ間違えないようにする工夫などもしました。

下のリンク:ディレクターとどうやって曲を決めたか?の自分記事

タイトルもバラバラ

ゲームも多彩。なので、背景も多彩。

中世ヨーロッパ風の街が舞台になることもあります。未来の地球の場合も。江戸時代、大正時代、中国が舞台になることも。

さらに、本来そこで流れてる音、という民族音楽的なものもありますが、架空の舞台ならみんな想像の中。

さらに、本格的な民族音楽は我々とイメージが合わない場合も。学者がお客さんじゃ無いので。

つまり、ものすごい広い世界があるのです。

ビデオゲーム

画像:テレビゲームをやっているところの写真

職業作曲家は誰に合わせる?

自分はこう思う、というのも大事です。

でも、職業的には、遊ぶ人も含め、「みんながそう思う」という音を作らないといけません。

それが実在であれ、架空であれ、共有幻想的な統一性。

どう対応する?

一番いいのは、世界中の音楽のデータベースを頭に入れておくこと。

とは言え、日本人の誰も知らない世界は、創作と同じように聞こえるはずなので、大多数の人が一度は聞いたことがある、という幅で十分。

その点、吹奏楽、オケ、ビッグバンド、様々なジャンルのポップスのバンドをやってきた経験は自分では役立ちました。

特に吹奏楽。クラシックのアレンジもあるし、ブラス系ポップス、ラテン、邦楽アレンジ、など幅広いジャンルをカバーしてます。

さらに、その過程で様々な楽器をやってきた経験は、ストレートに役立ちます。「らしい」フレーズをたくさん体験できているので。

そのあたりの記事。

下のリンク3つ:自分がやってきた音楽経験を記事にしました。

経験数が少なくても

今は様々な曲が簡単に聴けます。

好きな曲を作るところから一歩出ていくのなら、間違いなく「興味ない曲」も聴いておくことが大事です。誰かの好み、何かにぴったりな曲が山ほどあります。

とは言え、どうやって選ぶか?というのも難しい。

そこは、「スタイル」「ジャンル」が役に立ちます。ここから順番に聴いていければ、引き出しは増えていきます。

大きいレコード屋さんの棚のジャンル分け程度は抑えておくと便利。

下のリンク:カワイ楽器のキーボードのスタイル一覧

1 デフォルトスタイル 140 4/4
2 ナイスアンドイージー 82 4/4
3 ジャンプスウィング 210 4/4
4 ミディアムビッグバンド 128 4/4
5 ナイトクラブ 167 4/4
6 シングイット 170 4/4
7 ジルバ 170 4/4
8 ヒップジャズ 154 4/4
9 トーチライト 130 4/4
10 ファストビッグバンド 140 4/4
11 ファストビッグバンド2 154 4/4
12 ファストビッグバンド3 152 4/4
13 ファストスウィング 180 4/4
14 ミディアムスウィング 128 4/4
15 ミディアムスウィング2 135 4/4
16 ミディアムスウィング3 135 4/4
17 ミディアムスウィング4 107 4/4
18 ミディアムスウィング5 135 4/4
19 シャッフル 150 4/4
20 シャッフル2 120 4/4
21 シャッフル3 132 4/4
22 スウィングビート1 115 4/4
23 スウィングビート2 86 4/4
24 ギタースウィング 170 4/4
25 ラグタイム 98 4/4
26 テーブルフォートゥー 60 4/4
27 ジャミンオルガン 125 4/4
28 ジャズボサ 130 4/4
29 ジャズR&B 106 4/4
30 ジャズスウィング 147 4/4
31 ジャズポップ 79 4/4
32 ラテンジャズ 120 4/4
33 ラテンジャズ2 114 4/4
34 スムースジャズ 93 4/4
35 スムースジャズ2 170 4/4
36 スムースジャズ3 94 4/4
37 スロービッグバンド 84 4/4
38 スロースウィング 70 4/4
39 スロースウィング2 70 4/4
40 ジャズボーカル 130 4/4
41 アカペラジャズ 120 4/4
42 スウィングバラード 68 4/4
43 スウィングバラード2 80 4/4
44 5/4ジャズ 145 5/4
45 8ビート 140 4/4
46 8ビート2 110 4/4
47 8ビート3 89 4/4
48 8ビート4 97 4/4
49 コンテンポラリー8ビート 120 4/4
50 コンテンポラリー8ビート2 120 4/4

1~50まで、リストを引っ張ってきました。これだけでも多そうですが、この楽器は400以上あります。最後の数字2つは、1つめが標準的なテンポ。1分間で何拍あるか、というもの。その後ろの分数は代表的な1小節の拍数。ほとんど4/4ですが、ワルツは3/4、マーチは2/4や6/8など。

つまり、この「スタイル」で引き出しを区切っておけば、音楽関係者同士の会話でも共通性のある単語になり、さらに、音楽の知識の無い方にはこのスタイルの音を聴いていただく。これでかなり意思疎通は楽になります。

ちなみに、この区分けは一例です。ロック系、メタル系などは評論家ごとに異なる表現や区分けをして、しばしばそれが論争になったりします。あくまでも代表的な、ということで出させていただきました。

おまけ:通用する界隈で気持ちのいい体験

このスタイル、音楽好きなら全員知ってるか、と言えばそんなことはありません。

でも、オタク系が多く揃っていた学校に行ってた時は、だいたい通じたので、夢のような体験が。

「次のライブこれやるから」とリーダーシート※1をもらう
「テーマは普通に4ビート※2、そのあとソロ回し※3」
「あとは適当に合図を出したら※4、16ビート※5、サンバ※6、もう一回4ビートに戻って終わり」
「一回やっておこうか※7」
「じゃ、明日よろしく」

こんな感じで数十分のステージの打ち合わせがあっという間に終わり、一度通してやってみて、解散。

※1 コードだけが書かれた楽譜。メロディが書いてあることもある。
※2 ジャズの比較的スタンダードなスタイル。割とシンプルな音。
※3 コードは保ったまま、それぞれの演奏者が順番にアドリブを行う。誰がどの順番でどんな感じ、などはその場の雰囲気とアイコンタクトで進めるので、何コーラス分か、順番は、などはこの時は決めていない。
※4 スタイルをガラッと変えるタイミングは、リーダーが合図をする、ということ。なので、1コーラスが終わりそうになるとリーダーに注目をしておく。
※5 ジャズ系で少しリズミカルな速めのスタイル。
※6 ラテン系の代表的なリズム。ブラジルで踊るヤツです。様々なジャンルでこのスタイルは使われている。
※7 この打ち合わせだけしておけば、だいたい迷わず全員が演奏できる。練習などは特にせず、一度通して雰囲気を確認すれば本番に出られる力量がある人同士のバンドなので、これでリハーサルは終了。

練習嫌いなので、こんな感じになりたくて、死ぬほど練習しました・・・

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