インベーダー・フロム・過去 【5/11】
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電車のなかであんなことをされたけど、ちゃんと会社には行った。
そして一日、まじめに仕事をした。
だて眼鏡とひっつめのヘアスタイルのことを何人かに聞かれたが、どう相槌を打ったのかは覚えていない。
お昼には、同僚の女の子2人と、近くの店でかきフライ定食を食べた。
ご飯も残さなかった。
午後もちゃんと仕事をした。
こんなに真剣に仕事したのは何年ぶりだろう。
確かに昨日休んだぶんの仕事がたまっていたこともあったけど……意識して真剣に仕事に集中していないと、頭が勝手に今朝の電車であったことと、渡されたあの写真のことを考えはじめる。
それで恥ずかしいけれども……
おなかの下あたりがぼんやりと熱くなった。
慌てて目の前の仕事をこなすことに打ち込み、いまわしい考えも、いかがわしい身体の感覚も、脇に追いやる。
……仕事を進める……また考える……仕事を進める……また考える……
その連続で、定時までにはほとんど明日の分の仕事まで片づいていた。
どうしよう。
明日は気を紛らわせる仕事がない。
そしてあの男はまた、明日の電車に現れるのだろうか?
無性に煙草が吸いたくなって仕方がなかった。
日常のすき間のほんのひととき、頭の中から余計な考えを追い出してひたすらぼんやりするためにも……煙草は必要だった。
煙草は有害無益といわれているけども……起きている間に何も考えない時間を一度も設けられないというのは……煙草を吸うよりも、もっと健康に悪い気がする。
帰り途、煙草の自販機やコンビニの煙草コーナーばかりが目に付いた。
わたしは禁煙を破るために都合のよい理由を探しているのだろうか?
カバンには、あの写真が入っている。
ところで……あの写真はなんなんだろう。
わたしは、あの写真を撮られたときのことをまったく覚えていない。
しかし写真に写っているのは、紛れもなく二十歳前後のわたしだった。
それに他人にあんな……手ブラ写真を撮らせるなんて……いかにもその頃のわたしがやりそうなことだ。
あの写真に関して、わたしはこんな仮説を立てた。
仮説その1…あの写真は合成写真かなにかだ。
仮説その2…あの写真はわたしが結婚前に始末し損ねたもので、それが外部に流出した。
仮説その3…あの写真はその撮影者が保存し、わたしはその撮影者のことを覚えていない。
仮説その4…あの写真はわたしの夢を撮影したものだ。
……仮説その2と3は仮説4と同じくらい現実性が高い。
一番その可能性の低いのは仮説その1だろう。
とにかく、当時のわたしはあのような恥知らずなことをよくやっていたし、そのほとんどを覚えていない。
そりゃ、あのような恥ずかしい写真の1枚や2枚、もしくは6枚か7枚は撮られていても不思議ではない。
いや、現実に撮られていた。
酔っぱらってべろべろになって、ホテルのベッドの上でピースしているような写真は実際に結構あって、わたしは結婚前にそれらをすべて焼却した……わたしの覚えている限りでは、一枚残らず。
しかし……だいたい、撮影されたこと自体ほとんど覚えていないのだから、それらをどこに保管しているかなんて、ますますはっきり覚えているはずがない。
燃やし忘れがあったことは大いにあり得る。
また、わたし自身が保管してはいなかったにしても、撮影者がそれを後生大事に保管していた、ということも大いにあり得る。
男というものは、そういうのを残しておきたがるものだ。
そして時折思い出しては、過去の戦利品であるそういった写真を引っ張り出し、それを眺めながら……ズボンのジッパーを降ろして……
だめだ。
いったい何を考えているんだ、わたしは。
気が付くと、自宅のドアの前に立っていた。
わたしはほとんど無意識のうちに電車に乗り、駅からの道のりを歩いて、家に帰ってきたらしい。
ドアのカギを開け、灯りのついていない、薄暗くなった部屋に入る。
夕飯の用意に何か買ってくることすらしなかった。
わたしは靴を脱ぎ散らかすと……そのままの格好で居間のソファに直行し、倒れ込んだ。
だて眼鏡を外して放り投げ、アップにしていた髪を解いた。
ぐしゃぐしゃとベートーベンみたいに髪を乱す。
身体が無性に熱くなり、汗がにじんでいた。
そのままわたしはソファの布地のつめたい感触を頬や首筋で味わいながら、ホワイトデニムの前ホックを外し、ジッパーを下げた。
そう、そのときは当然……
朝の電車のなかで男に同じようにされたときのことを思い出した。
左手は汗ばむセーターの中に忍び込んで……ブラジャーのホックを外す。
そして、右手を下着の中に突っ込む。
「……んっ!」
恥ずかしいくらい濡れていた。
もう大惨事だった。
デニムの布地にも染みだしそうだったので、そのまま脱皮するように脱ぐ。
ソファの上で這い蹲るような格好で、わたしは指を動かした。
一も二もなく、クリトリスを刺激する。
「……んあっ!」
自分でしているのに、情けないくらいの声が出た。
半日解放されなかったその部分は、いつもより腫れ上がっているように思えた。
指を乱暴なくらいに激しく動かす。
セーターに突っ込んだ手で、固くなっている乳頭をひねるようにつねる。
めちゃくちゃ乱暴な触り肩だった。
マウスのスクロールボタンを転がすように、激しくクリトリスのうえで指を滑らせる。
乳頭をさらにひねり上げて、乳房が千切れそうなほどそれを握りしめ、こね上げた。
「……あっ! ……うっ! ……んんっ! ……」
いつもは自分でするときは声なんか出さない。
でも、あたしは自分の身体が壊れそうなくらいに、激しく自分の手で自分を弄んでいた。
“今日はちょっと乱暴にしてあげる”
男はわたしにそう言った。
わたしはそう言われて、身体を熱くした。
“やらしいなあ、伊佐美ちゃんは。乱暴なのも好きなの?”
そんな言葉で、男にからかわれた。
事実、わたしは自分でも信じられないくらいやらしかった。
「んんんっ……!」
いつもひとりでするときはそんなことは絶対にしない……のだけど……
下着の中で人差し指を立てて、深く穴の中に突っ込んだ。
ぺちょっと、いやな音がした。
「……あっ……やあっ……やあっ……だ、だめっ……」
自分でしておいて、何を言ってるのだろう。
でもわたしは頭の中で、いや全身で、今朝の電車で受けた辱めを忠実に再現していた。
乳房を握りしめていたその手をべとべとに汗ばんだセーターから抜き出して……
目の前にあるテーブルのスチールの脚を握りしめた。
固かった。
今朝、握らされた男のものと同じくらい、固かった。
そりゃそうだろう……スチールなんだから。
でもあたり前だけど、テーブルの脚には、熱も脈もない。
“……ほら、おれもしてあげるから、伊佐美ちゃんもしてよ”
むかつくあの男に言われた。
わたしはそんな風に言われて、そして、信じられないけど……自分で手を動かした。
テーブルの脚を、上下にしごく。
人に見られたら、恥ずかしさで思わず舌を噛んでしまいそうな有様だ。
「……ああっ………あっ……やっ……」
わたしはそんな声を出しながら、何の反応もないテーブルの脚を上下にしごき続けた。
テーブルがぎしぎし揺れて、上に置いてあったペン立てが倒れた。
わたしは今、ソファに這い蹲って、下半身はパンツ一枚で、それに右手を突っ込んで指を出し入れしている。
もう片方の手は、テーブルの脚をしごいている。
なんて馬鹿そのものなことをしてるんだろうか。
あの男……男の話によると、わたしのすべてを知っている男には、今のわたしのこんな姿も見えるのだろうか。そう思うと、わたしのあそこがきゅうっと締まって、わたしの指を締め付けた。
「……ああ……んっ……やだっ……!」
“……でも、伊佐美ちゃんをこうしておもちゃにすることはできる。愛して無くても、それはできるんだ。……”
男に言われた言葉を頭の中で反芻する。
“あーあ、もう手がふやけそう”
しっかりと人差し指をくわえこんだそこは、涎を溢れさせ、わたしの掌を濡らしていた。
すごい濡れかただった。
パンツはあっという間にべちょべちょになったので、脱ぎ捨てた。
内股を伝った液が膝まで垂れて、ソファを濡らしそうだった。
掌はふやけていた。
わたしはおかしくなったのかも知れない。
“……ほら、ほら、溢れてる。溢れてるよ……”
ほんとうに溢れていた。
男にされたみたいに、指を小刻みに出し入れした。
湿った音が部屋中に響いている。
わたしはほとんど泣き声に近い声を出していた。
“イきそう? ……イきやすいもんね、伊佐美ちゃんは……”
「……やっ!……違うっ……そ、そんなのっ……ちが……っ……うんっ!!」
なにが違うの?
わたしは何をしているんだろう?
公一に悪いと思わないの?
朝、思ったことをまた思い出す。
それがまたわたしの身体を痺れさせた。
公一との生活、それが一体、わたしにとってどれくらい大切なものなんだろうか。
今、こうやってわたしを飲み込んでいく感覚と比較しても。
「……ああああっ……あ、あ、あ、あ……」
イきそうだった。
朝は、ここで手を止められたのだ。
そして今ようやく、わたしを半日間苛み続けた渇望を、解放しようとしている。
さらにわたしの肉が、指を締め付けた。
もう指を動かすことも出来なかった。
「………く、く…くううっ……!」
ソファの布地を噛んで、叫び声を堪えた。
全身で絶頂を受け止める……
信じられないほどよかった。
でも、わたしの亢まりは、1回の絶頂くらいでは沈めることができない。
公一が帰ってくるまで、4回もした。
部屋の中も暗くなっていたけど……灯りも点けないまま、いきまくった。
そして夜8時ごろ……公一が帰ってきた。
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わたしは、居間に入ってきたスーツ姿のままの公一の首に飛びついた
「ね、ねえっ……お願い……………ヤって……」
“抱いて”と言おうとしたのだが、口が勝手にそう喋っていた。
「……ど、どうしたんだよ?」
公一は目をぱちくりさせて驚いた。
わたしはサマーセーターと、ぐっしょり濡れたパンツだけの格好だった。
公一は驚いたことだろう。
でもわたしは、そんな公一の戸惑いを感じる余裕も失っていた
「……お願い……ほんと、お願いっ……ヤってっ……」
そのまま公一の唇に吸い付く。
自分から舌を挿れて公一の下唇を噛んだ。
「ちょっと待ってって……ね、ねえ……むぐ……」
公一の抗議をさらに吸い付くわたしの唇が封じた。
わたしは公一にぴょん、と飛びつき、両脚を公一の腰に巻き付けた。
その体重を支えきれずに、公一は後ろ向きに床へ倒れ込む。
どすん、という大きな音がしたが、気にしなかった。
「……ちょっと、待って。待てって……殺す気? ……ねえ、どうしたの……ち、ちょっと……むぐ」
わたしはまたかぶりつくように公一の唇に吸い付いて、舌を差し挿れた。
公一の舌を吸い込み、その唾液を飲み込む。
公一はじたばたと暴れたけど、だんだん大人しくなっていった。
そのまま口を放して、公一のズボンのベルトを緩める。
「……ねえ、なんなの? ……どうしたっての……一体」
「公一が悪いんだよ……」わたしは低い声で言った「きのう、わたしに……あんなことして。あんなことしたのに……あんなとこでやめて……だから」
「え……ちょ、ちょ、何……? あっ!」
公一のスラックスのジッパーを下げて、ボクサーブリーフごと一気に引き抜いた。
公一は上半身はジャケットにシャツとネクタイ、下半身は靴下だけの全裸、というとても情けない格好になった。
起きあがろうとする公一を制して、また床に押し倒す。
見ると、公一のあれはすでに固くなって上を向いていた。
「……ほら、……公一も……こんなになってんじゃん」
わたしは言って、それを握った。
「そんなこと言ったって……あっ!!」
わたしはそのまま下半身まで移動して、公一のペニスを口に含んだ。
一気に喉の奥まで飲み込む。
帰って来たばかりで洗ってないペニスは、少し据えた匂いといおしっこの味がした。
優しく舐めたりしなかった。
わたしはめちゃくちゃ乱暴に、唇と頭を使って公一の陰茎を扱きたてた。
チュバッチュバッと、わざと下品な音を立てて吸う。
その度に、公一の腰がびくん、びくんとうねった。
「……ちょっと……やめっ……ね、ねえって……ねえっ……って……ああっ……」
公一は抵抗を諦めて、そのまま上半身を床の上に投げ出した。
そんな公一の姿が、ますますわたしの加虐心を煽った。
っていうか……加虐心?
……そんなもの、わたしのどこに眠ってたんだろうか。
「……ほらあ……すっごくなってるよ……公一の……ほんっと……やらしいんだから……ねえ、こういうの好き? ……こんなふうに……乱暴にされるの、好きだったりする……?」
わたしは唾でべちょべちょになった公一の陰茎をゆっくり手で扱きながら言った。
「……んんっ……」公一はしっかり目を閉じていた「……やめろって……」
「ねえ、ほんとにいや? ……こういう風にされたら……ほんとにいや?」
「ん……んん、んっ……」
公一は答えない。陰茎の先端から、先走りが溢れだしていた。
「……ねえ、答えてよ。あたし、ヤっちゃうよ? ……このまま、それでもいいの?」
「……ん」
またわたしは公一の陰茎を含んで、今度は舌を使って念入りに舐めまくった。
しょっぱい味が口中に広まる。
公一は抵抗を完全にあきらめて……わたしの髪に両手の指をからめてきた。
「……んっ……ふっ……あっ……ね、ねえ……も、もう、ダメだって……ねえ……あっ……ああっ」
散々ねぶりたおした。
公一の陰茎が、さらにものすごい固さで天井を向いているのを確認すると、わたしはその根元をしっかりと握って、片手で自分の下着を脱いだ。
「……えっ……ね、ねえ……って、マジ? ち、ちゃんとベッドに行こうよ……そうしよ……」
「……だめ、ここで、するのっ……」
わたしは公一の陰茎を2、3回激しく擦ると……
その切っ先を、さっきまで散々自分の指を出し入れして、柔らかく、熱くなったわたしの入り口に当てた。
「はっ……」
声を出したのはわたしの方だった。
公一は目を見開いて……呆然と、わたしを見上げている。
「……ね、ねえ……ゴム、せめてゴムつけよう……子ども、まだ要らないでしょ……せ、せめて……ゴムだけでも……」わたしは全く耳を持たなかった「……あ、あうっ!!」
「んんんんっ!!」
わたしはそのまま、一気に腰を沈めた。
浅ましいまでのすごい力で、濡れた肉が公一の陰茎を締め上げる。
「くうううううっっ……」
しばらくわたしは動かずに…肉が締まるに任せた。
「……あああっ……」
公一は喉仏を見せて、反り返った。
「あ、あ、あ、……あああっ……」
公一とわたし、どっちが先に動き始めたのかは判らない。
でも、わたしは動いていた。
公一も動いていた。
はげしく上下に躰を揺さぶり、揺さぶられる。
「……ああ……すっごく……いいっ……こ、こんな……の……好き?……ねえ……?」
「んっ……あっ、あっあっおっ……ああっ……」
公一は女の子みたいに声を出した。
わたしの肉は、とくに意識せずともさらに締まり…公一を圧迫する。
「……いい、すごく……いい……よっ……」
「ぼっ……ぼ、ぼく、もっ……」
「……わ、わたしも……いいよっ……あっ……おねが、い……もっと、突いて……突き上げて……」
「……ううっ」
激しくグラインドさせるように、公一が腰を突き上げてきた。
わたしたちは全身汗まみれになっていた。
エアコンもつけていない。
部屋の灯りさえつけていない。
わたしは上半身を覆っているセーターがうっとおしくなり、万歳をしてそれを脱いだ。
腰をレゲエダンサーみたいに激しく淫らに廻しながら。
肩にひっかかっていたブラジャーも自分でむしり取って、どこかにうっちゃった。
わたしの胸が、下からの公一による突き上げでぷるぷると揺れた。
間もなく公一の両手が下から伸びてきて、わたしの両方の乳房を強く掴む。
「……あんっっ!」
思わず、雄叫びのような声が出た。
公一の手付きは、昨日みたいに優しい愛撫ではない。
というか、結婚して以来の乱暴な揉みかただ。
でも、その手つきにわたしは亢ぶる……
乳房を刺激されているその直接の感覚ではなくて、公一が夢中になって、わたしの乳房を乱暴に鷲掴みにしているという事実に。
そしてそんな気分になった公一の感情に。
今日、あの男に電車の中でされたことを思い出す。
つねり上げられた、乳頭の感覚を思い出す。
激しく出し入れされた指のことを思い出す。
“乱暴なのも好きなの?”と、あの男は囁いた。
そうだよ、とわたしは思った。
そうなの。
乱暴なのが、好きなんだよ。
今も、わたしのこと見てるんでしょ……?
ほら、今日、あんたに指でめちゃくちゃにされたあそこに、公一のが入ってんの。
それで、あんたが好き放題にいじり回したおっぱいも、いまは公一がおもちゃにしてる、ってわけ。
それで、公一はわたしのことを愛してんの。
わたしも公一のことを愛してるんの。
わかる?
あんたが過去のどこからやってきたのか判らないけど、わたしの今の生活すべてをあんたのものにすることは、出来ないの。
ほら、あんたも……わたしとこんなことしたいんでしょ?
「あ、あ、あ、おっ……伊佐美ちゃん……もう、ぼく……」
公一がせっぱ詰まった声を出す。
「……あっ……あっ……あっ……わ……わたしも……」
わたしは上半身を折り曲げて、溢れてくる感覚を……5回目の絶頂を、またも全身で受け止める準備をした
「……わたしも……いっちゃうっ……」
「………だ、だからっ……その……は、はやく……はやく……抜かない……と……」
「……い……い、いい……のっ……そのまま……な、中で……出していいよ……」
“中でイッて”と言おうとしたのだけど、口は勝手に“出して”と言っていた。
そんなことを頼むのは、初めてだ。少なくとも公一には。
わたしたちは結婚以来、ゴムの薄皮越しにしかセックスしたことがない。
公一のグラインドが小刻みになって、わたしはお尻を公一の腰に叩きつけるように動く。
「……あっ……あっ………あっ………伊佐美ちゃんっ! ……い……くっ……ああっ!」
わたしの中で、熱くて濃厚な公一の飛沫が弾け飛んだ。
それと同時に、わたしは海老反りになり……後に回した右手を床について……イッた。
でも左手は、公一の陰嚢を激しく転がしていた。
転がしながら、陰茎も扱き上げる。
「あああ……えっ? うそっ? ………もう……む、ムリだよっ……」
そう言う公一だったが、陰嚢があっという間にわたしの手の中で収縮して……第2弾目もしっかりわたしの中で弾けた。
さっきより、激しい弾けかただった。
わたしは声もなく、天井を見上げていた。
ぽかんと空いたわたしの口の端から、涎が一滴垂れ、首筋を伝い、鎖骨のくぼみで止まった。
その後、わたしたちもう一回してから(今度はベッドでした)、出かけた。
夕食の用意を何もしていなかったし、もう時間も11時近かったので、近所の終夜営業の居酒屋に行った。
わたしたちは生ビールをそれぞれ、わたしはかいわれごぼうサラダと、ほっけの干物を注文、公一が大蒜の丸揚げと、サイコロステーキを注文して、しばらく無言で食べた。
公一はわたしがなぜあんなにおかしくなったのか、自分から尋ねなかった。
わたしも言わないつもりだったけど……生ビールを2杯おかわりしたところで、また口が勝手に喋りはじめた…久しぶりに酔ったような気がする。
わたしは今朝の電車であったことを話した。
小声だけど、出来る限り詳細を話した。
包み隠さず。
あの男に電車のなかでされたこと、言われたこと、そしてわたしがどうなったのかということ。
公一は無言で聞いていた。
怒りも、悔しがりもしなかった。
わたしも、そんな反応を求めていた訳じゃない。
「そうか……」わたしの受難話を全て聞き終えてから、公一が言った「明日の朝、一緒に家を出て、電車に乗ろう。それで、そいつを捕まえよう」
言いながらも公一の鼻息は少し荒くなって、目が潤んでいた。
居酒屋からうちに帰って………寝る前にあと2回、あたしたちはヤった。
公一は、出かける前より興奮していて、もっと激しかった。
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