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”情報革命企業”ソフトバンク株式会社について詳しくなる(歴史編)

高配当銘柄として有名なソフトバンク株式会社(ビジョンファンドなどで世間を賑わせている方ではなく、日本の通信キャリアの方)について分析していきたいと思います。
※この記事は投資推奨を行うものではありません。あくまで私が自分の思考を整理する過程の生成物を共有するものです。

1.どれくらい”高配当”か

配当についてですが2022年度は、100株あたり年間86円(予定)、利回り5.89%となっています。また”減配しない”方針であることが記されています。
また、配当だけでなく自己株式の消却も含めた株主還元性向は”85%程度を目標”とすることが発表されています。(※注1)

※Yahoo Financeより。2023年1月13日時点
※ソフトバンク H Pより

※注1:総還元性向:2021年3月期から2023年3月期の3年間の配当金支払総額と自己株式の消却額の合計÷同3年間の親会社の所有者に帰属する純利益の合計

2.会社概要

ここでは、ソフトバンク株式会社の概要と、沿革について書いていきます。(孫氏の経歴や、ソフトバンクの波乱万丈の歴史は非常に面白いのですが、書いていると長くなってしまうので、いつかかければいいですね。。)

(1)概要

ソフトバンク株式会社の事業は携帯電話やインターネットといった通信サービスのイメージが強いと思います。コンシューマー向けの他、法人向けの通信サービスや、DXなどのソリューションも提供しています。また、Yahoo!やLine、Paypayなどのサービスを行う子会社を傘下に抱えています。
そのようなサービスを展開しているのは、もともと「デジタル情報革命で人々を幸せにする」という志を持って、孫氏が会社を立ち上げたことに由来します。その時から変わらず、情報革命の主要プレイヤーであり続けています。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より

ソフトバンクの事業は売上の51%がコンシューマ向け、12%が法人向け、27%がYahoo・LINE、10%が流通・その他となっています。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より

それぞれの事業で、確固たる事業基盤を築いています。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より

成長戦略「Beyond Carrier」について。通信事業を基盤にしながら、多様なデジタルサービスを提供することで成長しようとしています。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より

ソフトバンクの強みとしては会社のスライドを参照すると「圧倒的な顧客接点」「高い技術力」「強力な営業力」の3つとのこと。個人的には、「デジタル情報革命」という明確なビジョン、そしてその孫氏のビジョンに集まってきた「志の高い人が多くいる」、というのは大きいのではないか、と思う。例えば、最後発からの”Paypay”の躍進や、LINEなどを”買収できた”というのも明確なビジョンと実行力の賜物ではないかと思う。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より

ソフトバンクの業績の見通しは以下の通り。きれいな右肩上がりが形成されているが、実は注意が必要。(ソフトバンクは、右肩上がりのグラフを好む。)
2022年度の営業利益(予想)にPaypay子会社化に伴う一過性の再測定益の計上が2,948億円含まれている。また、純利益には1,892億円含まれている。つまりそれを除くと減益である。これは大きくは携帯通信事業の低価格化や、端末販売の減少の影響を受けたものだ。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より
2022年度の利益(予想)にPaypay子会社化に伴う再測定益2,948億円の影響があることに注意。

株主還元については、総還元性向85%程度を目標としておいている。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクの概要 -事業概要・成長戦略-」より

(2)沿革

1981年 日本ソフトバンク 設立
2001年 Yahoo! BB(※1)提供開始
2004年 日本テレコム(※2)買収
2006年 ボーダフォン日本法人(※3)買収
2008年 iPhone(※4)独占販売開始
2013年 イーアクセス(※5)買収
2015年 通信4社合併
2018年 Paypay(※5)開始
2019年 Zホールディングス子会社化
2021年 Line子会社化

(※1)Yahoo! BBについて

2001年(平成13年)9月 - ビー・ビー・テクノロジー(株)が「Yahoo! BB」の提供を開始。当時ADSL事業の多くが1.5Mbps接続で月額4,000円から6,000円だったのに対し8Mbps接続で月額3,017円という圧倒的な低価格での業界参入だったため、競合他社は価格の改定や料金体系の見直しを迫られた。

Wikipediaより

孫正義は2011年のスピーチでこのように語っています。

先進国の中で一番インターネットが遅かった。そして世界一高かった。インターネットの業界に携わる会社として恥ずかしいと思った。”デジタル情報革命”のために人生を捧げている訳だから、日本のインターネットを世界一高速に、世界一安くしてやろうと思った。(中略)
当時のNTTの料金体系の5分の1、そして世界最高速、NTTの4倍の速度、アメリカ・ヨーロッパ・中国の10倍の速度、そんなブロードバンドを発表した。(中略)発表したその夜、一晩で百万件の申し込みがあった。そんなに申し込みがあるとは想定しておらず、機材を用意していなかった。お客さんを半年以上待たせて「詐欺師」だとか散々言われた。お客さんをそんなに待たせている状況の中で、NTTはつながせてくれなかった。色々と面倒な手続きを言うのであった。
そこで、総務省に怒鳴り込みに行った。
担当課長に「ワシはここで灯油被って自分で火を付ける。独占的に回線を有しているNTTが繋いでくれない。これは明らかに独禁法違反だ。総務省がきちんと彼らを正してくれないとお客さんに申し訳が立たない。迷惑をかけているお客さんに記者会見をして詫びて、その後責任をとってここで火をつけて死ぬ」と言った。
担当課長は「ちょっと待ってくれ、ここでするのだけはやめてくれ」というから、「ここじゃなければいいっていうことか。何を言っているんだ、あんたが責任を逃れてはならない。」と言って責めた。
すると、「どうすればいいんだ」というから「総務省が許認可の権利を持っている。金をくれとか、不当に優遇しろとは言わない。NTTの社長に電話して”フェアにしろ”、とだけ言ってくれ。」と言ってそこから物事は動き出した。

孫正義LIVE2011「【志】を語る」動画より著者が要約作成

孫正義氏は、色々叩かれていますし、実際ソフトバンクグループの経営には課題も多いと思うのですが、志のあるビジネスマンですよね。(火をつけて死ぬ、とは物騒ですが。。笑 ただ、そこまでの気迫を持てる方だからこそ、成し遂げることができるのだと思います。)

(※2)日本テレコム
JR系(旧国鉄系)の電話・通信会社。J-Phoneブランドで携帯電話などのサービスを展開した。のちに世界的な通信大手ボーダフォンの日本進出に伴いボーダフォンの傘下に入る。一時はJ-Phoneとボーダフォンのダブルブランドで展開していた。

(※3)ボーダフォン
1.75兆円という巨額の買収であった。
当時ボーダフォンは、”つながらない携帯電話”といわれた脆弱な通信網や、弱い販売体制などによって伸び悩んでいた。その会社を巨額の資金を投じ、大きなリスクをとることは理解を得られなかった。
今では代名詞になった「お父さん犬」などのCMのヒットや、爆発的なヒットとなった”iPhone”をスティーブ・ジョブスとの個人的なつながりをフルに活かし、日本で独占販売するなどによって、難局を乗り切った。
(しかし、またその後親会社のソフトバンクグループ株式会社(持株会社)は、アメリカの”つながらない会社”スプリントを1.8兆円で買収し、苦労することになる。)

(※4)iPhone
今では当たり前になったスマートフォンですが、当時は革命的でした。
当時、インターネットは「PCでするもの」、音楽は「iPodなどの専用端末で聴くもの」、電話は「携帯電話でするもの」でした。
また、携帯電話は小さい画面の下に入力キーが付いているインターフェイスが一般的でした。
携帯とiPodとインターネットが一台で完結し、ワイドスクリーンで、人の手を使って入力を行うという革新的なプロダクトに人々は熱狂しました。

孫正義がジョブズと最初に接触したのは、ジョブズが2007年1月9日に初代iPhoneを発表する約2年前のことだったらしい。当時の日本の携帯電話市場は「着うた」(※1)の爆発的な人気を受けて、音楽携帯が席巻していた。新規参入するソフトバンクも対抗機種を必要としており、孫正義は、アップル社のiPod(※2)を拡張した音楽携帯を想定したのだった。孫正義は自分の考える音楽携帯をジョブズに見せに行き、そこでジョブズ自身からiPhoneの計画を打ち明けられたのだ。
(※1)電話やメールがくると音楽が鳴るサービス。当時はおしゃれだった。
(※2)当時はMP3形式の音楽ファイルに対応した音楽プレーヤーが流行。
    iPhoneやSONYのデバイスなどが普及していた。

https://toyokeizai.net/articles/-/70225
東洋経済より、筆者要約

ジョブズが iPhone を発表する2年前のこと。もし自分がモバイル(キャリア)ビジネスに参入するのであれば、武器が必要だった。世界最強の武器を作れるのは誰か?世界でスティーブ・ジョブズだけだった。
彼に電話をかけ、会いにいった。携帯機能を加えた iPod の落書きを持って行って、ジョブズに渡したんだ。するとジョブズが「マサ、君の落書きなんかいらないよ。僕には自分のがあるから。」と(笑)。私は、「こんな落書きをあげる必要はないんだけど、君のそのプロダクトが完成したら日本の市場では、私にくれないか?」と言ったんだ。
すると彼は「マサ、君はクレージーだ。まだ誰にも話してないのに、君が最初に会いにきた。だから君にあげるよ」と。まだボーダフォンジャパンを買収する前でしたが。もし日本での独占的販売権がもらえるなら、こんな素晴らしいことはない。だから「紙に書いて、署名してくれ」と言ったんだ。だけど彼は「マサ、署名なんかできないよ。だって君はまだ携帯キャリアすら持っていないじゃないか」。
だからこう言ったんだ。「スティーブ。あなたが約束を守ってくれるなら、私も日本のキャリアを連れて来るから」と。そして、200 億ドルを投じてボーダフォンジャパンを買収して、約束を果たしたんですよ。

https://www.youtube.com/watch?v=Lee5u9rNOag
孫氏インタビューより筆者要約

(※5)Paypay
すっかり定着したQR決済の企業ですが、当時でもQR決済業社は乱立しており、最後発の企業でした。中国では当時アリババやテンセント傘下のQR決済サービスが普及していたため、日本でもQR決済のマーケットの拡大余地を認識し、一気に勝負をかけに行ったようです。確かに、スイカなどのFelicaに依存する決済方法やクレジットカードなどは、特別な端末が必要ですが、QRコードであれば紙に印刷すればすみ、導入は簡単ですよね。また、アリババやテンセントなどは金融サービスで莫大な利益を上げていましたので、モバイルとデジタルのプラットフォームとして事業を拡大するソフトバンクには絶対に必要なピースであったと言えます。
そんなわけで、2018年12月に「100億円あげちゃうキャンペーン」という度肝をぬくキャンペーンを開始し、一気に知名度とユーザーを獲得しました。
これは
PayPayで支払ったら必ず20%戻ってくる!
・さらに抽選で40回に1回の確率で全額(10万円相当まで)戻ってくる!
・また、Yahoo!プレミアム会員なら確率が20回に1回、ソフトバンク、ワイモバイルユーザーなら10回に1回に!
というものでした。
これを機に高額な家電やApple製品などの購入が増え(転売も増えたのですが)、余談ですが、私の家も少しですが恩恵に預かることができました。笑

現在では国内のNO1のQR決済サービスの座を獲得しています。

キャッシュレス決済サービス「 PayPay」は、サービス開始から約3年10カ月で登録者数5,000 万人超、コード決済国内市場シェア67%*1と、社会インフラとして急速な成長を遂げています。

https://www.softbank.jp/corp/set/data/ir/documents/integrated_reports/pdf/sbkk_integrated_report_2022_challenge.pdf
ソフトバンク株式会社「統合報告書2022」より


ソフトバンク株式会社「統合報告書2022」より

3.(おまけ)孫正義氏とソフトバンクの歩み

細かく記事化しませんが、2011年の孫氏のスピーチは圧巻です。
ビジネスマンとしては奮い立つ、そんな魂を揺さぶられるスピーチです。
(時間ができたら記事化します。)
リンクを貼っておきますので、よかったら見てください。


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