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キャッシュレス決済が普及しない理由

ようやくキャッシュレス決済が公にPRされ始めた

9月からマイナンバーカード所有者限定で、キャッシュレス決済で25%分のポイントが還元される「マイナポイント制度」が始まる。「1人でも多くの人にうちの決済に申し込んでほしい」と言わんばかりに、各決済会社(以下「決済会社」)が独自のポイント上乗せキャンペーンを発表している。

その前、2019年10月から今年の6月まで、キャッシュレス決済を行うと最大5%ポイント還元されるという「キャッシュレス・ポイント還元事業」が実施された。おそらく国として初めてキャッシュレス決済のメリットをPRし始めたということもあって、決済会社もそれに乗じて、様々なPRを行ってきた。

キャッシュレス決済に移行するまでの経緯

筆者は日常生活の決済の9割近くはキャッシュレスで行っている。残りの1割は近所のスーパーが現金のみでの対応であることによる現金決済であり、キャッシュレス対応のスーパーで買い物をすれば実質100%となる。

キャッシュレスに移行し始めたのは、大学4年の時から。始めは大学への通学定期券を磁気カードからICカードに変えるという小さな移行だった。そこから、決済の手間が減るというメリットを感じて、クレジットカードを契約したりして、カードや電子マネーの決済回数を増やし、キャッシュレスの比率を上げてきた。(この時で30%くらい)

本格的に決済全体をキャッシュレスに移行するきっかけとなったのは、上記の「キャッシュレス・ポイント還元事業」がPRされ始めた去年の7月からだ。「PayPay」「d払い」「楽天Pay」などのQRコード決済を始めたことで、コンビニなどの少額でもキャッシュレスで払うようになり、現在のシェアになっていった。

それでも・・・

それでも、日本のキャッシュレス決済比率は世界的に比べて低い状態が続いている。2018年時点での日本でのキャッシュレス決済比率は24%であり、諸外国平均に比べて低くなっている。(詳細は下記記事を参照)

理由はいくつか挙げられる。

1つは消費者の現金に対する信用が高いことだ。その例として、飲み会の会費を徴収するのは基本現金で行っていることが多い。筆者はQR決済の送金機能で支払いたいが、相手がその決済を使っていないために、それができないのが現状である。さらには、このコロナ禍で一時期『(ウイルスがつくのが嫌だから)お札を新札に変えてほしい』と顧客が銀行に押し寄せるという、普段ではありえない現象もみられた。そのニュースを見たときに、『それだったら(お札を使わない)キャッシュレスに変えたらいいのに』と即座に思ったが、逆にそれだけ国民全体の現金への信用度が高いことが同時に伺えた。

もう1つは、キャッシュ決済に対応している事業者が限られているということだ。決済端末を導入するには、機器の維持費も加え、売り上げの一定割合を手数料として決済会社に徴収されることとなっている。さらに、各社の収益構造上、手数料の金額が諸外国に比べて高いことが事業者(特に中小)のキャッシュレス対応の普及を阻んでいる原因となっている。(下記記事参照)

確かに「ポイ活」として、キャッシュ決済でポイント貯金する人もいるし、筆者自身もその1人だ。だが、社会全体で見たときに事業者がすぐにキャッシュレスに対応でき、かつ消費者が不利益を被ることのないように、手数料だけでない、新たな収益手段・構造を決済会社は構築しなければならないと思う。

キャッシュ決済を普及させるためには

現在、決済全体の25%でしか行われないキャッシュ決済のシェアをさらに普及させるために、何ができるかを様々な観点から考察しようと思う。

まずは、事業者と決済会社側から。決済会社の事業者に求める手数料が高いことが普及を阻んでいることは上記でも述べた通りだが、このようなデメリットを払拭させるためにも決済会社は事業者に対して、端末を導入することのメリットを作り出す必要があるだろう。例えば、キャッシュ決済の比率を増やした事業者に対して、決済会社から自社の決済を多く利用してくれたお礼として、利益還元策を行ったり(消費者に行っている還元策の事業者版)、逆になかなか普及しない事業者に対して、コンサルティングの役割を担ったりといったことが考えられる。いずれにしろ、決済会社は事業者に端末を導入して終わりではなく、そこからアフターサービス・フォローを実施することで、事業者の端末導入に対する不安感を除くことが重要だと思う。

次に消費者側から。よくキャッシュレス決済を始めるまでの手続きが面倒に感じる人が多いが、まずは身近なものからキャッシュレスに移行して、そこからその他の決済も段階的に移行するといった手段を取ればよいかなと思う。私もそのような方法でキャッシュに移行したという経験上、ステップを踏んだ方が面倒くささを感じにくくなることから、その方法をお勧めする。また、キャッシュレス決済は購入履歴がウェブやスマホアプリからすぐに確認できるという特性があるため、それを活かした家計の管理法に移行することでメリットを感じることができるだろう。

最後に忘れてはならないのが、行政による社会全体への普及を促すことだ。行政の手続きなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)が諸外国に比べて大幅に遅れていることから、社会全体がデジタルに対するリテラシー不足やメリットを感じにくい状況となっている。市民に対して政策で働きかけを行う行政が率先してDX化を進め、その一環としてキャッシュ決済の普及を促す策を講じることでシェアの拡大につなげる必要があるだろう。

様々な立場があるため、すぐに普及率を上げることは難しいだろう。しかし、少しでもキャッシュ決済を普及させて、諸外国と同じくらいの水準を目指すことで、インバウンドやビジネスなどほかのジャンルに好影響がもたらされることを切に願う。

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