子どもの体育やスポーツに関わる大人に知っておいてほしい話
※この話は、基本的なことなので、専門の方にとっては、必要のない内容かもしれません。
運動が得意な人のことをほめるとき、何といいますか?
小さい頃からよく、使われていたあれ。
そうですね。
運動神経がいい!
ですね!
運動神経って脳と筋肉を結ぶ神経系。
それがいいとか悪いとかってどういことだろう?
目次
1 「運動の構造」を知る
2 「動き」を知る
3 「発達」を知る
1 「運動の構造を知る」
「運動神経がいい」が、思ったように体を動かせるという解釈でいくなら、例えば、前転ができない子とできる子って何が違うのだろう。
前転は小学3年生から出てきます。
でんぐり返しから進化したいわゆる技ですね。
やらせてみると、意外と正しくできないんです。
背中からバタンと落ちるとか。
まっすぐ回れないとか。
立ち上がれないとか。
どうやったらできるようになるか。
何が問題なのか。
「運動」と「動き」という言葉をまず、知っておいてほしいと思います。
ここでは、前転などの技のように「動き」を一連の流れで連続してつなげることを「運動」と呼ぶことにします。
この前転という運動の中には、いくつかの動きが存在します。
①腕で体を支える動き。
②回る動き。
③立ち上がる動き。
この3つの動きを連続で行えば、前転になります。
このように、「運動」には、その部分となる「動き」が存在します。
つまり、この「運動の構造」を知ることが、体育の指導の第一歩になります。
うまくできない子は、①~③の「動き」の中に何らかの問題があります。
例えば、①が原因で、まっすぐ回れなかったり、②が原因で背中からバタンと落ちたりします。
どの「動き」でつまずいていて、どうすれば改善するかを考え練習の場を作ることが大切です。
2 「動き」を知る
でも、一番簡単そうな前転が3年生からなら、小学校では1、2年生からマットがあるのに、何をしたらいいの?
小学校1、2年生は、マットを使った遊びです。
1年生では、主に動きの量を増やします。
支える、回る、立つの他にもたくさんの動きがあります。また、回るを一つとってみても、前、後ろ、右に、左に、ななめになどたくさんあります。
2年生では、主に1年生で増やした動きの質を上げます。
その時の、視点が、時間、空間、力感などです。
「回る」だけでも、速く、ゆっくり、高く、低く、強く、弱くだけで動きが全く違います。
こうして、質の高い動きの引き出しをたくさん作っておくのです。
さぁ、そして、3年生。
「前転をしよう!」
と、なった時に、脳が働いて、
「これとこれとこれの引き出しをつなげればいいんだな」ってなります。
すると、前転がしっかりとできるわけです。
つまり、引き出しがないとできないわけです。
でも、引き出しがなければ、作ってやればいいんです。ちょっと戻って。そのために、練習の場を工夫します。それぞれの「動き」の不足を補える場を設定します。
そして、
「さぁ、次に開脚前転だ!」
と、なれば足を開いて立つ。床を押して立つという「動き」を加えるだけです。
何でもすぐにできちゃう(運動神経のいい)人は、質の高い動きの引き出しをたくさんもってるんですね。
(あとは、それをつなげる能力も必要ですが)
ただし、大事なことがあります。
3 「発達」を知る
こうした動きを身に付けるためには、神経がつながらないといけないんですが、なんとこうした神経は10才までに9割以上が完成してしまいます。
残念ながら、この時期までの運動経験が後々に影響するということです。
だから、小学校ではいろんな運動をさせた方がいいです。
中学生は、持久力と柔軟性がポイントです。肺機能や骨格が成長するからです。
高校生は、筋力も大事です。ここにきてようやく筋肉が発達します。
上の能力はこの時期に一番伸びますよ!という能力です。それ以外はするな!ということではありません。ただし、骨格や筋力が未発達な小学生に同じ動きばかりさせると、けがの原因になります。
小学生や中学生では、筋力不足でできないこともあるかと思いますが、「例えば、野球で球速がのびない」など…でも、まずは動きづくりです。
その時の結果を求めるがあまり、選手生命を台無しにすることもあります。長い目で見て、正しい知識をもった指導者に教えてもらえることが何より大切です。
ぼくは、小学生の時は、そこそこ名の知れたピッチャーでした。でも、中学生時代に、両足オスグッド、腰椎分離、野球肩、野球肘…けがだらけでした。
これから将来があって、真剣に競技スポーツをめざす人は、健康で夢を叶えられるように応援しています。
参考
「文部科学省 幼児期運動指針」
「スキャモンの発育曲線」