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2017年J2第40節 ファジアーノ岡山対名古屋グランパス レビュー「らしくない勝利」

2017年J2第40節、ファジアーノ岡山対名古屋グランパスは1-0で名古屋グランパスが勝ちました。

前半15分までは、名古屋グランパスはファジアーノ岡山陣内になかなかボールを運べませんでした。原因は、ファジアーノ岡山のロングパスを活用した攻撃です。

名古屋グランパスは、ロングパスを上手く使って攻撃してくるチームを苦手にしています。相手チームのロングパスでDFの背後を狙われ、自陣深くに下がり、パスをつなごうとして、相手にボールを奪われ、失点してしまう。何度もこのような失点を喫して、試合に敗れてきました。ファジアーノ岡山も名古屋グランパスを分析した上で、ロングパスを使った攻撃を仕掛けようと考えたのだと思います。

ただ、名古屋グランパスも相手の攻撃に対して、準備が出来ていました。ロングパスには、ワシントンと櫛引がミスなく対応して、ファジアーノ岡山の狙い通りに攻撃させません。高いパスはヘディングで競り負けず、低いパスは素早く相手との距離を詰め、バスカットし、1対1の争いにも負けません。

そして、これまでの試合だと、ボールを奪った後、再びボールを奪われてしまう事がありましたが、この試合では、右DFの宮原と、左DFの和泉がドリブルで相手に奪われずにボールを運んでくれるので、ファジアーノ岡山にボールを奪い返されませんでした。

ファジアーノ岡山の守備にも問題がありました。

ファジアーノ岡山の守備の問題点

ファジアーノ岡山は、5-2-3というフォーメーションで守っているように見えたのですが、MFは2人しかいないので、どうしても2人が守っている両脇が空いてしまいます。この両脇か空いている事に気がついたのは、青木です。素早く空いている場所に移動してボールを受け、相手陣内にボールを運んでいました。

また、ファジアーノ岡山の守備で問題だったのは、相手のボールを奪おうという意識が強すぎるのか、複数の人が同じタイミングでボールを奪いにいく場面が何度もあったことです。複数の人数が一斉にボールを奪いにいく守備は、ボールを奪えれば良いのですが、ボールを奪えないと、守備者がボールを持っている選手に集中してしまうため、名古屋グランパスの他の選手が空いてしまうというリスクがあります。

ファジアーノ岡山の選手たちは、名古屋グランパスのボールを持っている選手に対して、人数をかけて奪いにいくのですが、名古屋グランパスの素早いパス交換によってボールを奪えませんでした。時間が経つにつれて、名古屋グランパスがファジアーノ岡山の守備を外す機会が増え、ファジアーノ岡山が守備の仕方を変えなかったこともあり、名古屋グランパスがボールを保持する時間が増えていき、ファジアーノ岡山は名古屋グランパスのプレーを止められず、ファウルが増えてしまいました。

篠原と玉田の争いからコンタクトを嫌がるようになる

後半に入ると、ファジアーノ岡山はロングパスを使った攻撃は変えませんが、選手のポジションを変えることで、状況を打開しようと試みます。石毛を中央のMFに移し、中央でバスを受けられる人を増やします。そして、ファウルになっても良いと考えているかのように、名古屋グランパスの選手に、より強く、よい激しくボールを奪いにいきます。

ファジアーノ岡山が優位に試合を運ぶきっかけになったのは、後半14分のファジアーノ岡山の篠原のプレーです。

ボールを持っていた玉田に対して、手を使って倒した篠原のプレーはファウルを取られます。後半に一度篠原に背後から倒されていた玉田は、篠原に対して激しく言い寄ります。篠原も負けずに応戦し、仲介に入った佐藤に対しても激しく詰め寄ります。ただ、このプレーで篠原にイエローカードは出ませんでした。二回連続で後ろから激しくコンタクトされて、相手のコンタクトを頭に入れない選手はいません。玉田はこのプレーの後、普段のようにボールを奪われずにプレー出来なくなってしまいました。激しいコンタクトをいとわず、場合によってはファウルで止めるというファジアーノ岡山の守備に、名古屋グランパスのパス交換のテンポが悪くなりました。

シモビッチがスターティングメンバーで起用されない理由

また、後半14分前後に行われた選手交代も、試合に影響しました。

ファジアーノ岡山はオルシーニを入れ、名古屋グランパスは、押谷に代わって、シモビッチを入れます。ファジアーノ岡山はこの選手交代をきっかけに、名古屋グランパス陣内にボールを運ぶ回数が増えました。一方、名古屋グランパスはこの選手交代以降、なかなかファジアーノ岡山陣内にボールが運べなくなりました。

この試合の押谷は、そこまで目立った活躍をしていないと感じていた人もいたかもしれませんが、僕はこの試合の押谷は、素晴らしいプレーを披露していたと感じました。

押谷は、止まることなく「出して、受ける」を繰り返し、相手の背後や、背後からMFに近づいてボールを受け、素早いパス交換に大いに貢献しました。

押谷の動きにあわせて、玉田、佐藤、青木といった選手が上手く動く事で、ファジアーノ岡山にボールを奪わせないパス交換が出来ていたのですが、シモビッチが入った事で、パス交換のテンポが遅くなり、次第にファジアーノ岡山の守備に捕まるようになりました。

シモビッチという選手は、199cmという身長にもかかわらず、ボールを扱う技術に優れ、正確にボールを止める事が出来る選手です。しかし、最近の試合を観ていると、名古屋グランパスの他の選手の「出して、受ける」プレーのテンポが上がってきたこともあり、次第にシモビッチがパス交換のテンポについていけない場面が増えてくるようになりました。

また、シモビッチは高いパスを止めて、奪われずにキープしてくれるのですが、キープして分だけ次のプレーを実行するのが遅くなり、パス交換のテンポも遅くなってしまいます。

風間監督はシモビッチが入る事でパス交換が遅くなる事は分かっているので、最近の試合ではシモビッチを試合途中から起用しています。

試合途中からなら、他の選手も動きのテンポが落ちているので、シモビッチの動きのテンポとピッタリあう。そう考えているのかもしれません。しかし、この試合は少しシモビッチを入れる時間が早かった気がします。シモビッチがボールを受ける頻度も少なく、次第にファジアーノ岡山が攻め込む頻度が増えていきました。

素晴らしいプレーを披露したワシントンと櫛引

次第にファジアーノ岡山の攻撃を受ける回数が増えたこの試合に勝利出来たのは、櫛引とワシントンが素晴らしいプレーを披露してくれたからです。

ワシントンは高いパスに競り負ける事はほとんどなくから赤嶺という競り合いが強いFWに対して、優位に立ち続けました。櫛引も足の速さを活かして、相手の攻撃に素早く対応し、何度もファジアーノ岡山の縦方向のパスを奪ってみせました。

櫛引とワシントンは、2017年シーズンでは何度も何度も痛い目にあってきました。高いパスに櫛引が競り負け続けたツェーゲン金沢戦、終了1分前に櫛引がポジションを受け渡した事で引き分けたV・ファーレン長崎戦など、最近の試合だけでも痛い目にあった試合が何試合もあります。ただ、この試合では、過去の試合と同じミスを繰り返さず、ミスのないプレーを披露してみせました。

この試合は、この二人のお陰で勝った試合だと思います。

自動昇格するには2連勝が最低条件

残り2試合。次節は5連勝中と好調なジェフユナイテッド千葉との対戦です。この試合は、J1昇格を左右する重要な試合になると思います。

もうJ1に自動昇格するには、2連勝が最低条件です。2連勝して、V・ファーレン長崎が2連勝したら、それは仕方がありません。負けられない試合が続きますが、選手たちは凄く落ち着いていて、やるべき事をきちんとやるだけだと、心がけているように見えます。

今の名古屋グランパスなら、良い試合をすると思います。楽しみです。

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