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子どもはヘルメットをかぶるべきか

ご自身やご家族が自転車に乗るときにヘルメットをかぶるかかぶらないかを決める際に、まず皆様ご自身で考えていただきたいのは「かぶっていた方が安全だ」と思うか、「そんなものは要らない」と思うかではないでしょうか。つまり、道交法や他の難解な法令や、他人の意見を引き合いに出す前に、まず本人的に「ヘルメットなしで転倒した場合に本当に大丈夫なのだろうか」と想像できることが大事です。

「それがわからないから専門家のあなたに聞いているんでしょ!」とツッコまれるかもしれませんが、専門知識や法律を知らなくても、安全なのか安全ではないかは感覚的に感じ取れるのではないでしょうか。 わたくしは単純に、かぶっていた方が安全だと思いますので、たとえ街中のチョイ乗りであってもヘルメットはいつもかぶります。ただ、別の方のご意見として「面倒」、「高価だから」、「髪が乱れるから嫌」、「外出先の持ち運びが不便」などの、かぶらない方にもそれなりの理由があることも理解できます。 

本書は、タイトルのとおり「ヘルメットをかぶるべきか」という判断の参考となる目的で書いていますが、判断の根拠になっている具体的な記述内容は「ご自身のお子様にヘルメットをかぶってもらうつもりでいる保護者の皆様が、お子様のヘルメットをどのように選ぶか」という内容を中心に書かれています。したがいまして、かぶることを正当化する理由や根拠が多く並べられていますが、これらを読んでも、かぶる必要性がないとご判断された場合は、それはそれで決断だと思います。

いずれにしても本書が、ご自身もしくはお子様が自転車乗車時にヘルメットを着用するべきか否かを迷わ れている皆様のお役に立てればと願います。



1.お子さんのヘルメットを選ぶときの基準は

 もし子供用のヘルメットをどう選べばよいか?」と聞かれた場合、わたくしの独断で選ぶのであれば以下の優先順位で選びます。
 
優先順位1:サイズが合っていて、かぶり心地が良い 
優先順位2:価格 
優先順位3:デザインや色 
優先順位4:安全性(「CE」「SG」「SNELL」等の安全基準の認証)

SGマーク=Safe Goods (安全な製品)の頭文字を合わせた日本の規格。 国外メーカーであれば、ヨーロッパのCETÜV、アメリカのULなどが代表的。 Amazonで「自転車ヘルメット 子供用」と検索すると以下のような製品が出てきますので、近年はこれぐらい安価なものでも、ほぼすべて「CE」や「SG」等の認証済みです。

2,000円ぐらいの安価なヘルメットであっても、ほぼすべて「CE」や「SG」等の認証済みです。

  「優先順位」とは書きましたが、「安全」が最後にあることでもご理解いただけると思いますが、基本、全てを満たしていることが前提です。 

 まず、本来は安全が最優先になるべきですが、現実には買えるか買えないかの「価格」が優先されてしまうと思います。それに後述しますが、昨今は市場に出回っているヘルメットのほとんどが、何らかの安全基準を満たしていると思って間違いないです。 
 そして価格以上に優先してほしいのが「サイズが合っている」と「かぶり心地が良い」です。よく小さなお子さんが、おそらく親が使っていた古いヘル メットだろうなと思われる大きすぎるヘルメットを、今にも脱げそうにナナメになりながら被っている様子を見かけます。あれは転倒時に間違いなく脱げるパターンです。転んだ際に脱げてしまっては、かぶっている意味がありません。そして被っているお子さん自身も快適ではないので、嫌なのだろうなと想像できます。
 あと、オトナでもそうですが、特に子供であれば、カッコいいと思わないものをかぶりたくはないですよね。
 最後にようやく「安全性」ですが、前述の通り、市販されているほとんどのヘルメットは、 Amazonで販売されてみる3,000円以下のものでさえ、何らかの安全認証を取得しているので、市場に流通しているヘルメットのほぼ全てが「安全」であると思って間違いないです。

最近のヘルメットは子供用でもデザインも色も豊富で、MIPS等の安全性や機能的にも
優れたものが多いので、きっとお子さんが気に入るものが見つかるはずです。

2.子どものヘルメット着用は義務なのか 

 まず、ヘルメット着用が法的な義務であるかについて、2022年4月の道路交通法の改正に伴い義務になったように言われていますが、実は「努力義務」ですので、着用しなかった場合でも罰せられることはありません。

■道路交通法 第六十三の十一  第1項
自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。

警視庁ウェブサイト

児童については、すでに2008年の時点で「幼児および児童(13歳未満)に
ヘルメット着用の努力義務」が施行されています。 

■道路交通法 第六十三の十一  第3項
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるとき は、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

警視庁ウェブサイト

警視庁の「自転車安全利用五原則」も「着用」としか書かれていません。

■警視庁 自転車安全利用五則 
1 自転車は、車道が原則、歩道は例外 
2 車道は左側を通行 
3 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行 
4 安全ルールを守る 
 ・飲酒運転/二人乗り/並進の禁止 
 ・夜間はライトを点灯 
 ・交差点での信号遵守と一時停止/安全確認 
5 子どもはヘルメットを着用

警視庁ウェブサイト

3.耐用年数問題 「中古やお兄ちゃんからのおさがりは安全か?」議論 

 ヘルメットの耐用年数ですが、その前にまず、転倒して強打した場合など見た目が変わるほど派手に損傷しているヘルメットには、すでに100%の防御力はありませんので、できるだけ早急に買い替えが必要であるということはご理解願います。ここでの議論は、転倒して強打したことも無く、見た目も損傷が無い場合、いったい何年程度は安全に使用できるかについてです。
 
ほぼすべてのメーカーは「素材が経年劣化するので3年」と主張していますので、ショップの店員やインストラクターは「見た目に損傷が無くても3年を目途に買い替えてください」と杓子定規に回答せざるを得ません。

では現実世界ではどうでしょうか。わたしの周囲で自転車を趣味として乗っている人でも、感覚的にですが3年以上使っている方も多い気がします。ですので、本音と建前のハイブリッドな答えとしては「3年以上は経年劣化で安全性が落ちるリスクがあることを理解したうえで、本人の責任で決めればよい」だと思います。ちなみに貧乏性のわたくしは、損傷がなければ5年程度使用します。

中古はどうでしょう。よくあるケースとして、上の子が使っていたものがサイズアウトして下の子におさがりするなどです。前述の「経年劣化で3年」を適用すると、このケースはアウトなのでしょうが、現実的には当たり前に行われているのではないでしょうか。わたくし的には、たとえおさがりであってもヘルメットがないよりはずっと良いと思っています。あくまでも大きな損傷がなかったり、古すぎたりしていなければですが。


4.お子さんにヘルメットをかぶらせるべきか 

結論としましては、前述の内容をよく読んで いただいた上での各ご家庭での判断で決めていただければ良いと思っています。ただ、かぶるだけで転倒時の怪我のリスクが大きく下がるのであれば、たとえ日常のチョイ乗りであっても有効ですし、自動車が頻繁に通るような道で比較的長い距離を乗る場合であれば着用を強くお勧めいたします。そしてマウンテンバイク用のコースで乗る場合や、レースやイベントに参加する場合など、ルールや規則としてヘルメットの着用が義務の場所や場合においては必ず着用願います。
ちなみにニセコキッズマウンテンバイククラブの活動時は、ヘルメット着用は義務です。 

ニセコキッズマウンテンバイククラブでは、子供も大人も、
マウンテンバイクにのる人は全員ヘルメット着用です。
そして乗る前のバイクチェック(点検)も欠かせません。

5.お子さんがヘルメットを嫌がる場合

よく、親的にはお子さんにヘルメットをかぶってもらいたいけど、お子さんが「カッコ悪いから」「暑いから」 「めんどくさいから」と言ってかぶってくれない、という話をよく聞きます。
もし親的にはお子さんにかぶってもらいたいけど、お子さんがかぶってくれない場合、親として以下のような努力が必要かもしれません。 

 ・かぶりたくなるようなカッコいいヘルメットを探してあげる。 
 ・アタマを強打したらどれだけ酷いことになるか、
  お子さんでもわかるように説明する。 
 ・何より、お子さんが怪我をしたら、あなたがどれだけ悲しむかを、
  お子さんに伝える。

本書の最初の方でも書きましたが、最も効果的なのは、お子さんがかぶりたくなるようなカッコいいヘルメットを探してあげることです。

カッコ悪くて快適ではないものを「安全のためだからかぶれ!」というのは、正論であっても子供がかわいそうです。

公道では子供であっても、自転車も自動車と同じ道をシェアします。
自転車の車体もヘルメットも、大切なお子さんの身体を直接守る重要なモノです。
子供用だからと安易に考えず、むしろ大人よりもきちんとしたものを身に着けてもらいましょう。

おわりに 

最後に、わたくしが自分の子供達にどうしているかについてですが、
子供達が気に入った色と形で、
・サイズの合った、
・それなりにしっかりしたヘルメットを、
・近場でも常に
かぶってもらっています。 

「自転車のヘルメットごときに数千円もかけてられない」というご意見もあるかと思いますが、わたくしは全く逆に思っておりまして、その数千円である程度の怪我を予防できるの であれば安いものだと思っています。 自転車は公道でクルマと一緒に走る乗り物である以上、自転車の車体もヘルメットも、大切なお子さんの身体を直接守る重要なモノです。クルマのように頑丈な鉄のボディに囲まれたものに乗って移動するのであれば、そこまで身体の保護を意識した格好である必要はないとは思うのですが。 

繰り返しますが、ヘルメットをかぶる一番の理由は、転倒した際の頭部の保護です。転倒してアスファルトに叩きつけられた際に、頭部を強打しないような受け身ができる人は、ほとんどいないでしょう。

そしてここからが大事なのですが、ヘルメットは正しいサイズのヘルメットを正しくかぶらないと効果がありません。転倒時の衝撃でヘルメットが脱げてしまうこともありますので、ちゃんとサイズのあったヘルメットを選び、かぶり方の指導も慎重にお願いいたします。


以上、みなさまご自身やご家族の方が自転車に乗る際のヘルメットの着用について、参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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