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2020年6月福島取材➅/全ては五輪の為に

「有料」とありますが、基本的に全て無料で読めます。今後の取材、制作活動のために、カンパできる方はよろしくお願いします。

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<続き>

せんだん通りに入り、双葉駅を目指す。そんなに距離はないのだが、15:30までに積算線量計を返さねばならないとなると、途端に焦りが出る。その辺り、僕はとてもチキンだ(笑 急かされるのは本当に嫌だ。

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(せんだん通り)

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東電の双葉独身寮が見えてきた。ここも本当は隅から隅まで見たい。もちろん、東電の施設なので厳重に施錠してあるだろうし、中も綺麗に掃除してあると思われるので、何か発見があるとは思えないのだが。

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駐輪場にはバイクが2台、チャリが1台放置されている。元々この独身寮で生活していた職員のものだろうが…9年3ヶ月を経ても放置されてるのはどういうことだろうか。既に退職した職員のものだろうか。

過去にも書いたが、震災時、社宅に住んでいた東電社員の家族が、他の町民には原発が危機的状況であることを隠して真っ先に逃げたというのは有名な話。放射性物質が自分の車につかないよう、しっかりカバーをかけて逃げていった。僕自身はその社宅に行ったことはまだないが、今では証拠隠滅のように、それらの車は撤去されているという。しかしここではバイクが2台、チャリが1台放置…

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何軒かの廃屋を通り過ぎ、新山城本城跡の入り口前へ。ここは3月に登った小山の反対側だ。なるほど、ここに抜けるのか…いつかこの小山を改めてよく見てみたいと思った。猿や猪と遭遇する恐怖はあるが…ここであんな写真やこんな写真、いくつか絵のために撮りたいイメージがある。

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この新山城の眼の前にも、植物が侵食し荒れ果てた廃屋が晒されている。いずれは解体されるのだろうが…ここに住んでいた人たちの思いは如何ばかりだろうか。

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さらに歩いていくと、道路工事が行われていた。この日は土曜日。もちろん、この手の工事関係者は日曜しか休みがないのはごく普通にあることだが、しかしお疲れ様だ。交通整理をしていた警備員は女性だった。ヘルメットとマスクでよくわからないが、比較的若い女性だったと思う。

6/30〜7/11まで東京新聞で連載された中で、DASH村入り口付近のゲートで出会った男女2人の警備員の話が出てきたが、SNSで、まるでそれが嘘であるかのように書いていたアカウントがある。曰く、線量の高い場所での女性の勤務は電離則がどうだとかこうだとか…しかし実際は、線量の高めなかつての強制避難区域で働く女性は昨年から増えている。そもそも、電離則がどうだのこうだの言われるような場所の避難指示を解除し、女性はおろか赤子まで帰って住めますよというのが、どれだけ異常なことかわかっててあのアカウントはそれを書いてるのだろうか。完全に破綻している。

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常磐線の線路を跨ぐ歩道橋の手前には「双葉中学」の看板があった。ここを歩いていくと行けるらしい。ちょっと今は時間がないが、いつか行ってみよう。

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(ちなみに17年11月に入域した際に役場から渡された積算線量計は小数点以下は表示されないいい加減なものだった。)

ステーションプラザふたばが近づいてきた。手元の積算線量計を見ると、3.5μSv。5時間足らずで3.5なので、1時間あたり0.7μSv以上は被曝していることになる。つまりこれは、放射線管理区域(1時間あたり約0.6μSv)以上ということだ。しかし、僕個人が持つガイガーフクシマでは、この時点で4.1μSv以上だったと記憶している。おそらく行政が貸し出していた積算線量計はβ線が測れていない。行政側は「β線は自然放射線」として測定していないが、ストロンチウムからもβ線は放出されており、これを除外するのは実態に則さない。

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ステーションプラザふたばで対応してくれた役場職員はいい人たちばかりだった。冷たい水を出してもらい、「自動販売機もなくてごめんなさい」と声をかけられながら返却手続きをした。モップで床を拭いていた爺さんだけが、ただひたすら僕の足にモップをガシガシぶつけていた。不自然にさえ見える笑顔の高齢の職員3人と、仏頂面でひたすらモップをぶつける爺さん。カオスだった。

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積算線量計返却ついでに駅前のベンチで少し休憩し、その後は駅前を再び散策。3月に歩いた場所の定点観測のような感じだ。

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カンニング竹山も訪れて「復興してないわけじゃない、線量が高くて入れなかっただけ」と見事なご飯論法付きでツイートした100円ショップは解体工事が始まっていた。17年11月、20年3月。2回しか見てない建物だが、解体されるのがなんとも虚しい。あちこちで解体ラッシュとなっており、たくさんの人の思い出が次々に消されていく。浪江駅前も五輪前の昨年から急ピッチで解体が進み、かつての住民にとって知らない町になってしまったが、双葉もこうやって「歴史修正」されていくのだ。

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(100円ショップ裏側)

GSやショップ、建設会社などは速攻で次々消されていくが、寺社仏閣や幼稚園などもいずれは消されてしまう。そうなる前に、あれもこれも、しっかり収めて作品に昇華していきたい。

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(正福寺山門)

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長命山正福寺の横を抜け、まどか保育園へ。ここへ来るのは3回目。敷地は狭いし建物の中もほぼ把握しているが、つい来てしまう。

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17年11月は4.06μSv/h、20年3月は3.80μSv/h。ここは非常に線量が高い。そして今回は、3.87μSv/h。数分ここにいるだけだと思いつつ、鳴り止まないガイガーフクシマのカウント音に、思わず脈は速くなり、背中を嫌な汗が伝う。

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まどか保育園を出て、正福寺の参道へ。ここは前回来た時も草ボーボーで、奥までは進めなかった。今回も草の量が半端なく、そこに付着した放射性物質のことを考慮すると、途中までしか進む勇気はなかった。

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そして途中まで進んだ結果が3.56μSv/h。このエリアはやはり線量が高すぎる。僕には、大切な故郷を奪われた子供達の怒りが溜まっているようにさえ思えた。

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その後いくつかの廃屋を経由しつつ双葉駅へ。駅前の駐輪場のモニタリングポストは0.311μSv/h。3月にきた時は0.27だったので、少し上がっている。普通に「0.311μSv/h」と書いているが、この数値は本来は福島県外では立入禁止だ。そんな場所に電車が止まり、老若男女、誰でも出入り出来てしまうのだ。

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双葉駅構内にはベンチができていた。3月には外にしかなく、とても寒い思いをしたが、6月は中にもベンチが出来た。聖火リレーには間に合わなかったが五輪には間に合わせたということか。その五輪は来年に延期、それどころかCOVID-19でもはや風前の灯火だが。なんとも皮肉なものだ。「復興五輪」の名の下、被災地のリソースを食いつぶしながら進められた安倍五輪は、多くの人々の憎しみと分断を生み出し失敗に終わるだろう。

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双葉駅西口では大規模な工事が行われている。ここに商業施設を作るというのが「復興計画」だが、果たしてそこで誰が働くだろう。六国沿いのコンビニの店員の多くは外国人ばかりだと飯舘の知人はいう。線量の高いエリアで働く若い人がいないのだ。

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西口駅前の工事現場を囲む鉄板には、「まちの1番のパートナーでありたい」とUR都市機構の宣伝コピーが書かれている。そのUR都市機構社員で、双葉の現場にも行くという匿名アカウントにツイッターで絡まれたことがあるが、果たして本当に「パートナーでありたい」と考えているのだろうか。

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(駅ホームから望遠レンズで臨む双葉北小学校。)

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夜まで粘って夜の風景を撮りたいとも思ったが、とにかく疲れが酷かったのと、全身真っ赤に日焼けしてしまったので、夕方5時近くの電車で帰ることにした。

帰りの電車はとても空いていた。3月の呆れた喧騒が嘘のようだ。節目節目でやたらと鉄ヲタやネトウヨは盛り上がるが、実際に電車に乗ってここを訪れる人などほんのわずかだ。

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例によって帰還困難区域では線量計を出して見ていたが、大野駅近くで車内の空間線量は2.24μSv/hまで上がった。電車なので一瞬ではあるが、正直、ここまで上がるとは思わなかった。3月は1.27μSv/hだったので、ちょっとこれには驚いた。

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(「TOKYO2020」の旗が寂しくはためく。)

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いわき駅ではCOVID-19の流行のせいか、「がんばっぺいわき!!」のポスターが目に入ってきた。2011年の震災以降、福島はどれだけ頑張ってきただろうか。天災に遭い人災に遭い分断され、さらに今も分断され、いつまで頑張ればいいのだろう。がんばっぺ!と言われても、ウイルスも放射能も頑張って防げるものではない。

…駅前のLATOVで酒とツマミを買い込みホテルへ。今日1日を振り返る。6/6の積算線量は、いわき以北に移動時間含めて約8時間滞在で5.65μSvだった。電車内での被曝量が往復2時間で0.3μSvとすると、6時間で5.35μSvは被曝したことになる。1時間あたり0.9μSv…どの程度除染するのか知らないが、本当に2年後にあの場所が避難指示解除出来るのだろうか。頭には「棄民政策」が浮かぶ…カップ酒を呷りながら、複雑な気分で眠りに就いた。

<続く>

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