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2020年6月福島取材⑯/高線量地帯

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福島第一原発を臨む海岸から、建設中の減容化施設へと向かった。

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いや、正確にはわからない。ゼネコンが立てた掲示板には「土壌貯蔵施設」と書いてあるだけだ。

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浪江にも「減容化施設」として紹介された建物はあるが、実際に施設の前にそのように書かれているのは見たことがない。浪江の「減容化施設」は既に稼働していて、海沿いで大量のフレコンバッグに囲まれながら、不気味な煙を吐き出している。そのすぐ近くには中間貯蔵施設があり、その目の前で稲作が行われている。最低のロケーションで稲作を再開させた浪江町だが、管轄が環境省や農水省など、違っているからこそこんなトンデモなロケーションが生まれるのだろう。

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富岡にも大熊にも双葉にも浪江にも、原子力関係の施設や廃棄物処分場は次々と建てられているが、そのどれもが首都圏の大手ゼネコンによるものだ。大手ゼネコンが被災地を食い物にして金儲けをする。首都圏の大手ゼネコンが被災地の工事を請け負うから、五輪の仕事も入って人手不足になる。なんという皮肉だろうか。五輪にしても何にしても、全てのシステムは中央集権で中央が儲けられるように出来ていて、だからこそ被災地の復興は遅れることになる。その間に庶民は疲弊し老いていくか別の場所での生活を築き、その土地の文化やコミュニティは消えていく。これで果たして100年後、震災の教訓は伝承出来るのだろうか。

ここだけではないが、双葉郡を歩いている中で「工事関係者以外立入禁止」の看板を見ると、無性に腹が立つことがある。元々はここは地元の誰かの土地だったし、もしかしたら家が建っていた場所かもしれない。そこを原発事故で汚した上に解体し、にも関わらず自分の土地であるかのように「関係者以外立入禁止」とは何様なのか。「安藤ハザマ」「前田建設」こんな名前を見るたびに、「厚顔無恥」という言葉が頭に浮かぶ。

周囲を放射性廃棄物の仮置場に囲まれた減容化施設建設地を後にし、次は中間貯蔵施設エリア内の墓地へと向かった。

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墓地の後ろには放射性廃棄物の詰まったフレコンバッグの仮置場がある。ここは以前は黒いフレコンバッグがむき出しで、神聖な場所を汚すという表現がぴったりだったが、この時は白い鉄板の壁が出来ていた。白い鉄板で囲ったから何だというのか。浪江の谷津田でも、太陽光パネルに囲まれた墓地があるが、そこやここに墓参りをする家族の気持ちは如何ばかりだろう。

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汚染土や木材、金属など、解体した家屋の分別場も見た。2017年にも別の場所の分別場を見ているが、そこに書かれた「木くず」などといった表現はまさに容赦なく、かつては財産だったものを否応なく「廃棄物」にしてしまう原発事故の理不尽さ、放射能というものの非情を思わずにいられない。こんな現場を見たこともない人ばかりが、「放射能安全」といい、「前を向こう」「がんばろう」「絆」「元気です」といい、挙げ句の果てには「再稼働」と言い出す。現場を知らない人ばかりが、知った風な顔で「科学」と言い募る。

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その後、より内陸のバラ園の方へ向かう。

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しかしバラ園の中へ入ることはできなかった。

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おびただしい数のフレコンバッグの仮置場が、この時は内陸にまだまだあった。帰還困難区域なので、おそらく今もあると思う。目につきやすい場所をまずは優先的に片付け、綺麗にするのはいつものことだ。

再び進路を東へと変え、前田団地を目指すことにする。R288を走りながら、そういえば双葉では山田地区の線量が最も高いとか…車内の線量が毎時4μSvを超えたところで、Oさんに車を停めてもらった。

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車を降りると手元の線量計の数値はみるみる上昇し、放射線を感知した時になる警告音は鳴り止まなくなった。

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はじめ毎時6μSv程度だった数値はあっという間に2桁を超え、最終的には15.28μSv/hまで上がった。

2020年3月に常磐線が全通した際、大熊町で6.41μSv/hを体験しているが、それがこの時まで体験した最大の空間線量だった。それをあっという間に飛び越え、15.28という数字を目にした時は背中に嫌な汗が流れた。防護服を着てマスクもしていたものの、思わず呼吸さえも控えめにしてしまったのをよく憶えている。尤も、東京新聞の記者さんの話では、山田地区には毎時26μSv以上の場所もあるといい、この程度で驚いている僕は甘いのかもしれない。

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このR288は、この当時は許可を取らなければ通行できなかったが、今は車であれば誰でも通行できるようになっている。世界中のどこを見ても、こんな高線量地帯を普通に走れる国は日本だけだろう。

…防護服を身につけてるとはいえ、そんな場所で車から降りて測定をする僕はもっとおかしいのかもしれない。

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<続く>

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