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絵本『ずっとここにいた』32ページ改訂版

「有料」とありますが、基本的に全て無料で読めます。今後の取材、制作活動のために、カンパできる方はよろしくお願いします。

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はじめに

 2011年3月11日 大きな地震と津波が起き、東京電力福島第一原子力発電所が爆発しました。町には放射能が降りそそぎ、16万人以上が避難しました。

 それから時は過ぎ、少しずつ避難指示は解除されていきましたが、今も多くの人が帰れずにいます。

 人のいなくなった町には、13年が過ぎた今もあの日のまま、残されたものや命があります。

 牛や野生動物、虫や植物、自転車や車、学校やビル、家等々……彼、彼女らは、どんな思いで人間を見ていたのでしょうか。

ずっとここにいた

絵・文 鈴木邦弘

町はあるけど
人がいない
どうしたの

「わからない
 ずっと このままさ」

自然の声だけが聞こえる 少し怖い

「怒っているかもしれないよ」

うわあ
 緑に覆われている

「すごく気持ちいい
 でも すごく寂しいよ」

ずいぶん やられちゃったね

「しばらくいなかったのに 急にやってきたんだ
      木が切られて 土が掘られて
      みんな袋に詰めこまれて 苦しいよ」

立派な建物だね
よく覚えてる

「みんなが
 集まるところだったよ
   ここには
   知りたいことが
   たくさんあった」

ずっと
取り残されてたの

「ずっと待ってたけど
 帰ってこなかったよ
 もうすぐ
   棄てられるんだ」

ここには
たくさんのにぎやかな友だちがいたのに

      「みんな 楽しかったよ
       今 どうしているだろう」

ここで
肝だめしをしてたっけ

「1200年の思いがあるよ
  でも それも
  消えてしまいそう」

たくさんの声が聞こえる
たくさんの
暮らしと思いでと心が
  詰まっているんだね

   「ゴミじゃない!」

「私たちはずっとここにいたよ
 ずっと ここで過ごしてきたんだ」

ここで
みんなと遊んだのに

「今も
 みんなを待っているよ
 でも
 もうだめかもしれないね」

ずっとここにいたんだね

「ずっと待っていたよ
  ずっと待ち続けて
   待ちくたびれて

 人のいない
 別の世界が生まれた」

人のいない世界?

「あの日の前は
 それなりにうまくやっていた
   大変なときが過ぎて
   今のままがいいと
      思うことがある」

「もう そっとしておいて
 ずっと そっとしておいて」

みんな なくなったね
 空が青いよ

おじさん これからどうしようか

今回の絵本で描いた各場面の所在地。

ずっとここにいた
2024年6月22日 改訂版発行
絵・文・デザイン 鈴木邦弘

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 今回公開する改訂版は、昨年制作し先日noteでも公開した、『ずっとここにいた 24P暫定版』に絵を加筆し、文章にも手直しを加え36ページ(本文32ページ)としたものです。また、地図を制作し、各場面の所在地を明確にしてもいます。聖地巡礼のような形で現地を訪れて自分の目で見てみるのもありですし、何よりそれがあることでリアリティを感じて欲しいと思いました。

 より直接的でやや攻撃的でもあった前作の文章と違い、内容は同じでありつつ子どもにも読みやすいものにしてみました。やはり、できるだけ若い世代に見て知って考えて欲しいと思うので。上記リンク先の暫定版と見比べてみてください。

 絵は特に絵本的なものを狙うことなく、あえて全て引きの場面で構成しています。それによって感情移入しにくいものとなっていますが、より普遍性を持たせたいという僕自身のポリシーによるところもあります。

 正直に書けば、この状態で出版できる可能性はほぼありません。もっと絵本らしい形になるよう、場面に変化をつけ、もっと抑揚のある展開にすることが必要だと感じています。しかし、中には物好きな出版社が「このまま出したい」という可能性もあり、その場合は、このページは削除される可能性があります。

 ご意見、ご感想等あればよろしくお願いします。また、投げ銭も受け付けてますので、よろしくお願いします。

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