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理想の教育~現役高校生の対話~⑤:『理工系少なくない?』

はじめに
学校って、なんだろう? 
好きだろうが嫌いだろうが、行かなきゃいけないし。
学ぶのは僕らなのに、学校の方針に関する決定権は無い。

僕がキャンプで会った井上くんは、最近学校を辞めたらしい。
同じくキャンプで出会ったけいちんは、14年間アメリカで過ごして引っ越してきた日本の学校にカルチャーショックを受けたという。
僕は公立高校に進学することに疑問を抱き、現在はN高に通っている。

そんな、ちょっと変わり者の僕らが「理想の教育」とは何か?について話合ってみた。その“議事録”を4回に分けて公開しようと思う。

(第1回「校則についてどう思う?」はこちら)
(第2回「教職員と生徒の関係性」はこちら)
(第3回「校舎についてどう思う?」はこちら)
(第4回「数学って面白い?」はこちら)

・登場人物

りん:

りん

りんたろう(16歳)音楽のプロを目指す高1。この企画の発案者。
公立高校に進学することに疑問を抱き今はN高に通っている。
安宅和人著「シン・ニホン」に感銘を受け、現役高校生の立場から
なにか発信できないかと思い立つ。

井上:

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井上(16歳)高2。
県内の進学校に進学するも、教育方針に疑問、学習レベルに物足りなさを 覚え、高校を中退。今は自分で、大学受験の勉強をしている。中でも数学 分野を重点的に学習中。好きな食べ物はすき焼き。

けい:

けいちん

けいちん(16歳)。高2。0歳から14歳まで14年間アメリカで育つ。
今頑張っていることはディベートやスピーチ。好きな食べ物はトマト。
現在はディベート部に所属している。

第5回: 『理工系少なくない?』
(第4回 数学って面白い?続き)

導入
文系理系ってよく言うけど、そんなに簡単に分けられるもの?
っていうか、分ける必要あるのかな。
数字は苦手だけどサイエンスには興味があるって言う人もいるはず。
このプロジェクトのきっかけになった安宅和人さんの本「シン:ニホン」によると、理工系の学生の全体に占める割合(医学:薬学を除く)は、日本が23%、韓国:ドイツでは63%なのだそうだ。日本は技術立国のイメージだったけど、こんなに理工系が少ないらしい。

りん:中学で勉強していた時は、二次関数をなんのためにやるのかわかんなかったけど、でもよく考えたら結構必要なはずなんだよね。特にAIとかデータとかそういうのが優位な時代ではかなり。僕は、高校一年だけど、例えば微分積分とかもできないと、プログラミングができるとかできないとか、よく言われるし。こういう風に大事なんだよっていうのがわかった方がモチベーションが湧くというかさ。
例えば野球とかでも、試合をしてみる前に素振りばっかり練習させられると、なんのために棒を振ってるんだろうって、気持ちになるじゃん。本当は大事なんだろうけど。だったら先に実践やらせて、「あ、そうか、ここ全然自分だめだったな。ここ練習しなきゃな。このためにやんないとな。」っていう意識を持ってやった方が上達も早いし、効率的じゃない?

井上:でもそれってさ、野球やったら試合っていうのがあるやんか。でも人生において、野球における試合のようなものって、何を指すかによってさ、全く別の話になってくるからさ。

りん:確かに。

井上:難しいところだけど。でも、(基礎をやるっていうのは)人間としての能力を上げるとかそういうことなんじゃないん?

りん:そうなんだけど、やっぱなんかワクワクするじゃん。これができるようになったら、こういうのに活きてくるって、知ってた方がモチベーションが高くならない?だから、なんのために数学やってるのかわかんないし、好きじゃないっていう人が多いからこんなに理工系が少なくなっちゃうんじゃないかなっていう気がしなくもないけどね。

井上:なんか逆に、数学嫌いな人が、なんのために役に立つかわからんからやらんみたいな、逆の理由付けのために使ってる気がする。そんなことはないか?

けいちん:でも真の理由はそこじゃないと思う、数学を嫌いになる理由って。

井上:でも、数学嫌いの人たちは、例えば、微分積分は、建築のあれにも使われていてね、物理のこの万有引力の法則が、とかいう話をしても、多分へーってなって終わると思う。計算だるいー、って言うだけやと思うねん。多分、目的を知ってもモチベーションにはならないと思う。

りん:実用的な面白さがあったらモチベーションになるって。

井上:ほんまに?

けいちん:うーん、なる人はなるかもしれないけど、うちの周りの人たちは多分ならないと思う。(笑)

りん:ならないかなー。

けいちん:結局、うちらにとって今勉強って作業になってるわけじゃん。
1時間の授業を効率的に進めるように作業化してって、チェック、チェック、チェックみたいな感じになってるからあんまり好きじゃないのかも。
うちは数学はもうちょっと時間かけてやりたかったな〜って思う。なんか授業がパッパと進みすぎて、結局80%わかるけど20%わかんないまま次に行く、みたいなことが多かったからもうちょっと時間かけてやりたかったな。応用に手を出す前に授業終わってた。

りん:僕は、本来は理系と文系の比率って同じぐらいだと思うの。だいたい両方とも二割ずつぐらいいて、その中間のどっち寄りかはあっても真にどちらでもない人たちが、後の六割だと思うの。多分僕もそうだし。僕も数学そんな得意じゃなくて、英語は割と得意。じゃあ文系かっていうと、お前国語の点数は?っていう話になるし。かといって理系かって言われると理系ではないけど、でも理科はそれなりに好き、みたいな。そういう中間の人の中で、若干数学が得意な人をもうちょっと理系にうまく入れられたらなって思う。その比率を、本来在るべき形に戻すというか。

けいちん:というか、理系文系に分けるシステムってどうなの?世の中の勉強を理系文系に分けるとすると、それこそ5:5にならないと思っていて、ほとんど文系になると思ってるの。

りん:たしかに。でもその最後のところは、人によって意見が分かれるかもしれない。最初の文系と理系が分かれちゃうのは実際どうなのかっていうのは、実際「シン・ニホン」にも書いてあったけど、これからの時代、色々な応用が大事になってくると。新しい技術として生み出されたAIなどのデジタル革新を今度は応用して、その技術を実社会に結びつけるかとか、そういう場面では、文理がはっきり分かれるんじゃなくて、両方を総合的にそれなりにできる人の割合が増えた方がいいなと思う。

井上:総合的に色々できる人が増えたらどうなるの?

りん:例えば、バリバリの数学者がビジネスで成功するかって言われたら、そうとも限らないじゃん。そうじゃなくて、実社会で価値を生み出すために、(文理)どっちにも振りきってなくて、理数的なデータを活かす力だったりとか、問題定義力だったりとか、そういう力を総合して、価値を生み出して行く人たちが増えるんじゃない?

井上:バリバリの理数系の知識を実社会に持ってくるときに、(文理どちらでもない)中間層を媒介にして実用化する、みたいなイメージ?

りん:というよりかは、いわゆる文系って言われている学生にも、もうちょっと理数系の素養がこれからの時代必要らしいのよ。やっぱり両方の能力が必要だと思うから、そういう境界線をもっと曖昧にしていくのがいいと思う。


第6回:「外国語の授業について」に続く。